第五章その3
トリアージとは、野戦病院や災害医療など、医療設備のキャパシティを超えかねない多数の傷病者が発生する医療現場において、患者の重症度によって治療の優先度を判定、選別し、医療効率の最適化を図る事である。
アリスが元いた世界では、フランス革命後の戦乱の時代に始まり、世界中に広まったが、この世界では未知の概念である。
アリスはそれを現状に合わせてアレンジした上で実施しようというのである。
まず自身の情報収集能力によって、医療従事者の能力と医薬品の備蓄を把握。
運び込まれてきた傷病者を、助かる見込みのない死者、緊急の治療を要する重傷者、治療を要する軽傷者、治療を後回しにできる軽傷者、の四段階に分類し、それぞれを担当する者に振り分けていく。
重傷者は専門知識を持つ医者に、軽傷者は専門知識はないが一定の技量を持つ、ナユタのような素人に、といった具合に、である。
なお、助かる見込みのない死者に必要なのは治療ではなく、聖職者による祈りである。
アリスの介入によって、これまでしばしば停滞していた治療がスムーズに進むようになっていく。




