第三章その6
「結局、連れ出されちゃった……」
ナユタは情けない気持ちで項垂れる。
ダルトンに引っ張られるままに城を抜け出し、目抜き通りを歩いている自分が情けない。
「ところでナユタ、どうしてメイド服なんか着ているんだ?」
「メイドとして! 働いている! ところを! ダルトン様が! 着替える! 暇もなく! 強引に! 連れ出したから! でしょうが!」
「ああ、そうだったか。わははははは」
「はあ……」
脳天気に笑い声を上げるダルトンは、薄汚れた軽装の鎧に剣を提げ、付け髭も忘れていない。
ぱっと見には領主には見えないスタイルだ。
「今日はお見合いじゃなかったんですか?」
「時間はまだある」
「ドロシーさん達は今頃、ダルトン様のお見合い相手を迎える準備に大忙しなのにお忍びで散歩ですか? いいご身分ですね」
「そりゃまあ、領主だしな」
「………」
嫌味もまるで通じない。
「せっかくだからこの街を案内してやろうと思うんだが、どこか行きたい所とかないか?」
「そんないきなり言われても急には……あっ! そうだ! ありました!」
「おお、そうか。どこだ? どこに行きたい?」
ナユタは思い付いた場所を告げる事で、ダルトンをげんなりさせる事に成功した。




