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妄執世界のアリス  作者: 千里万里
第三部 産業革命の予兆
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終章

 ナユタは一人、足早に道を行く。

 頼んでもいないのに、止めどなく涙が流れ落ちる。

 足を動かしていないと心がばらばらに砕けてしまいそうだった。

 思えばアリスと旅に出る前もその後も、一人になる事などほとんどなかった。

 不安と寂しさが胸を締め付ける。

 自分がどこに向かうべきなのか、自分が向かっている方向が正しいのかさえ解らない。

 自分が何の力も持たないただの村娘に過ぎない事は、嫌という程に痛感している。

 それでも……。

 ナユタは足を止め、振り返る。

 ついさっきまで側にいたアリスとルイスが、振り返る事なく歩くその背中が、今はものすごく遠い。

 ああ、きっと長い間、ナユタには及びも付かない程の長い時間をそうしてきたのだろう。

 人類の滅亡を避けるため、目の前で苦しむ人間を振り切って、後ろを振り返る事なく、ただ一心に歩み続けてきたのだろう。

 そしてこれからもそうしていくのだろう。

 自分にとってアリスと過ごした時間はすごく長く感じられるけど、アリスにとっては瞬きほどの一瞬なのだろう。

 ほんの一時、一緒に過ごしただけの相手など顧みる価値もなければ、足を止めて振り返る時間さえ惜しいに違いない。

 今はアリスの背中を、ただ遠くに感じる。

 強くなりたい。

 ナユタは思う。

 強くなりたい。

 自分の足で、アリスと同じ場所に立てるくらいに強くなりたい。

 今はまだ、アリスの隣に並びたいのか、その前に立ちはだかりたいのか、それさえ解らない自分だけど。

 強くなりたい。

 ナユタはそれだけを強く願う。

 そのためにどうすればいいのかさえ解らない。

 それでもこの広い世界でただ一人、アリスと向き合うと決めたのだから。

 どうしてもアリスに釘付けになってしまう視線を引きはがして、ナユタは歩き出す。

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