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第三章その2
ナユタが目を覚ますと、見知らぬ男が枕元に座ってこちらを見下ろしていた。
「やれやれ。ようやく目を覚ましたか……よく眠れたか?」
「………」
寝起きでまだはっきりしない頭で、ナユタは記憶を探る。
「ええと……誰?」
「俺だ! 俺!」
男は声を荒げて、両手の人差し指を口の両脇に添える。
「これで解ったか?」
「ああ! ダルトンさん! 昨日助けてもらった!」
「やっと気付いたか」
「髭がないから、解りませんでした」
「あれは付け髭だからな」
ダルトンは苦笑する。
「ぷっ、あはははは……!」
「な、何がおかしい?」
「いえ、指で付け髭をするダルトンさんが可愛くて……思い出したら笑っちゃいました」
「………」
ダルトンは憮然とした表情で押し黙る。
それも何だかおかしくて、ナユタは苦労して声を抑えて笑った。
また新しい朝が始まる。




