表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/42

   どうして、此処に?

「えっ、ちょ、なっ!!!!」



「怪我は無いか?」

そう言って、微笑んでいるプルート様。



蔓の攻撃を受けそうになった私の前に降り立ち、私の代わりにバシンッという大きな音が立つ、鞭のようにしなった蔓の攻撃を、プルート様が背中に受けてしまいました。

私の目の前は、黒いプルート様の纏う服によって覆われ、周囲の様子は一切分かりません。ですが、確かに鞭打つ音は聞こえました。

その音は、想像するだけで痛みを覚えるような音です。

『闇の御方』!と叫ぶ、スコーピオ様の声も聞こえたので、確かにプルート様の背中が打たれたのでしょう。


「怪我はって!それは、こちらの言葉です。」

私なら、ご自身が庇ってくださったじゃないですか。人のことを抱きしめて、何処から蔓が襲ってきても大丈夫なように覆いかぶさってくれているのに、そんな事を聞く意味は無いでしょう。

「プルート様。背中!!怪我は!!?」

精霊だろうと、私に今触れているということは実体化しているってことで・・・

鞭に打たれれば、痛くない筈がありません。


背中に怪我をしていないか見ようと、私のことを抱え込んでいる腕を叩き、放すようプルート様に言いましたが、プルート様は動こうとはしません。

「プルート様!」

それどころか、ますます腕に力を入れられ、プルート様の腕の中で胸に顔を押し付ける形になってしまいました。名前を呼んで放すよう言いますが、プルート様の腕はピクリッとも動こうとしません。

「僕は別に、大丈夫だよ。この程度、どうということはないから。」

なんで、そんなに嬉しそうに言っているんですか!

こんな所で、ドMを発症しないで下さい。

「そういう問題じゃありません。」

そうです。大丈夫とかこの程度とか、怪我をしたら痛いのですよ。程度の問題じゃありません。

「やっぱり、君は優しいんだね。」

だぁぁ。埒があきません!

プルート様の胸を力一杯押して、出来た隙間からスコーピオ様に視線を送って助けを求めます。っていか、私はプルート様の怪我の様子が心配なだけなんです。なんで、心配している相手から離れる為に、助けを求めなきゃいけないんですか!


ちょっ、なんで目を逸らすんですか!スコーピオ様!


「叔父様。そんな事をなさっている場合ではありませんでしょ?リリーナさんをお放しになってください。」


フェーリ様の声で、プルート様が腕の力を弱めて下さいました。

・・・・フェーリ様の一声で動くって・・・何かしたんですか、フェーリ様?


フェーリ様は、私に突き飛ばされたまま地面に座り込み、その前にスコーピオ様が立ち蔓の攻撃から守られています。

「・・・・この蔓をどうにかすればいいのかな?」


プルート様から離れることが出来た私が見たものは、フェーリ様をスコーピオ様、アズラート様とレームス様の二箇所に攻撃を加えている蔓の姿。

なのに、私と、私の前に立つプルート様に対しては攻撃してきません。それどころか、こちらに向かおうとする蔓はフルフルと震えて、まるで怯えているみたいです。


「出来るんですか?」

「僕は、闇だよ?」


ただ、そう言っただけでした。


森全体を暗闇が覆いました。

そして、蠢いていた蔓がピタリッと動きを止めたのです。


「眠らせてしまえば、動きは止まるよ。」


そうでした。眠りや夢は『闇』の領域でしたね。

植物にも魂はあるのだと主張していた本とか前世にありましたけど、あの世界の普通の植物でもそう言われたのです。この自我を持って動いている植物は確かに魂を持っていますよね。


「リリーナを構っていないで、お早くして頂きたかったものですが。」

「たまたま通りかかったらリリーナが危険な目に合っていた。いきなりの事で現状を理解しきれていなかったんだ。しょうがないだろう。」


疲れた顔をされたスコーピオ様にレームス様。

お二人とも、フェーリ様とアズラート様を守りながら、蔓の攻撃を凌いでいらっしゃったんです。そりゃあ、お疲れにもなりますよね。


それにしても、たまたま?本当に?

いや、でもタイチさんたちが教える訳ありませんし。だって、協力するって言ってくださいましたから。タイチさんの感じから約束とか仁義は守る系の人だと思います。だから、プルート様に私が何処に行ったのかは教えないで下さる筈で。


「スコーピオ。早く蔓を燃やすといい。動かぬものを燃やすことは容易だろ?」

「分かりました。」


動かなくなった蔓になら集中して力を使えますから、これでバンムレットも駆除できますね。駆除する薬を買ってこなくては。

「私、薬を・・・」

「リリーナ。薬が無くても、根を燃やし尽くせばいいと思うのだけど、どうかな?」

先程、買いに行ってくるといったアズラート様は、まだレームス様に支えられて立っているのがやっとのようなので、ここは私が、と言いながら走りだそうとしたのですが、プルート様に腕を取られて止められました。

それにしても、根を燃やす?

確かに、根を残さなければいいのですが、そんなことは・・・・。出来ますね。スコーピオ様が頑張ってくだされば。

どうして、そんな簡単な事を考えつかなかったのでしょうか。

精霊である彼等の協力を得られるのなら、人間の常識に捕らわれなくても解決策があったのに。フェーリ様の御宅に向かう時はまだ、バンムレットは動いていなかったのだから思いついてさえいれば。

「大丈夫。君は上手くやっているよ。」


落ち込んでいるのが顔に出ていたのでしょうか。

プルート様が頭を撫で、慰めてくださいました・・・。


う、うっかりトキメいちゃったじゃないですか。

きっと、誰かに入れ知恵されてるプルート様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ