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   逃亡させて貰います。

「逃がしてやろうか?」

タイチさんの言葉は、本当に「蜘蛛の糸」のように感じました。


「あいつも、まだ完全にお前の事狙ってるわけじゃないだろうしな。

 辛うじて、お友達になりたいなって事も言えなくもない。

 今なら、まだ間に合うかも知れないぜ?」


思わず、コクコクと頷いてタイチさんに頭を下げていました。

ヤンデレ、まじ勘弁!!です。

っていうか、何故私なんですか?平々凡々、何処にでもいる人間ですよ?

「あいつはなぁ、本当にボッチだったんだよ。

だからな。チョロッて叫びたくなるくらいに最初の沸点が低い。ヒク程低い!

本当に、チョロイ!

俺が通った高校にいたら、確実にパシリさせてるくらいのチョロさだ。

そんでもって、低いハードル飛び越えて好意持たれたら、後は坂道状態だ。

少しでも、あいつに好意的なことを言ったらポイント加算。

少しでも、あいつの興味を引いたらポイント加算。

ついでに言うと、『風の精霊王』との思い出聞いてる限り、マゾッ気がちょっと処じゃないくらいにあるみたいだからな。罵っても、蹴っても、殴っても、ポイント加算になる。」

口には出していないはずですが、どうやら顔に出ていたようです。

タイチさんがプルート様について説明してくださいますが、それって対策方法無くないですか?プルート様に出会う前に説明して頂かないと如何しようも無くないですか?


「だから、逃げればいいんだよ。」

私って、そんなに顔に出やすいんでしょうか?

なんだか、表情で会話しているようになってます。


「関わったら全てがポイント加算。

だったら、関わんなきゃいいんだよ。

あいつの前に姿を見せないようにすりゃあ、あいつも忘れちまうし、興味を無くすさ。」

あ、相手は闇を支配していらっしゃる方なのですが。隠れるとか逃げるとか、上手くいきますでしょか?というか、何だかプルート様が可哀想に思えてきてしまいます。

いえ、いえいえ。

同情するだなんて、ただの人間の身でおこがましい!

それに、たかが人間の私が好かれたとしても、長生きしたとしても別れはずぐですよ。そうなって悲しむのは残されるプルート様ですし。同じ精霊であるタイチさんたちを大事になさるべきです。

私は、それを美味しく見学させて頂きます。それで十分なのです。


「それでいいよな、クロノス。」

説教が終わったのか、こちらを見ていたクロノスさんとユージェニーさんにタイチさんが顔を向けました。

「えぇっと・・・まぁいいけど、な。でも、なぁ・・・」

タイチさんに言われて、クロノスさんは渋々といった様子で頷いています。ですが、彼らしくもなく濁した言い方で、煮えきりません。

「あぁん?」

「馬鹿なこと考えてんじゃないよ、馬鹿息子。

人様んとこのお嬢さんに迷惑かけてんじゃないよ!」

タイチさんのどすの効いた声と、ユージェニーさんの拳一発。

クロノスさんが両手を天に掲げて降参の姿勢を示します。

「分かった。分かったから殴んなよ、お袋。」

協力してくれると言ってくださったクロノスさんは、すでに考えていたのかといいたくなるくらいに素早く、話をまとめて行きました。

「リリーナの仕事場には根回しして休暇ってことにしてもらおう。そうすりゃあ、あいつが仕事中に見に行くなんてこと出来ないしな。

ただの休暇っていうのもあれだし、こっちの仕事進めてもらうか。

ちょっと遠出してもらおうかな?」

「遠出ですか?」

「場所を離れられない精霊とかの話も見聞きして物語にしてもらいたいからな。

その内にプルートと一緒に行ってもらおうとも思ってたんだが、まぁ別に何時でもいい話だしな。」

それって、デートって認識されませんか?プルート様から。

「やっぱり、こいつとあいつをくっつけようとしてたな、お前。」

「全ては友人の幸せを願ってこそだろ?」

いやいや、真剣に考えてますって顔してますけど、口元がニヤついてますよ?

「まぁ、それも両思いって奴じゃなけりゃあ意味ないしな。

リリーナなら、あいつのこと任せれると思ったんだけどなぁ~」

チラチラ見られても困るんですが・・・

「遠出するのはタイチやタグと一緒に行ってもらうとして、

 行く前に、フェーリの所に潜伏してプルートが追跡出来ないようにするか。」

「そうだな。念には念を入れとけよ。

 姫さんのとこなら、あいつも無茶できねぇし、あいつの力も届かないしな。」

「あっ、フェーリってのは俺の妹の事な。

 あいつ、怖ぇから誰も逆らえねぇんだよ。」

ユージェニーさんの娘さんでクロノスさんの妹さん。

思わず、レディース的な方を思い浮かべてしまいました。

一体、精霊王さえも恐ろしがる女性って、どんな方なんでしょうか?

「お、恐ろしい方なんですか?」

「あぁ怖えぇんだよ。

 でもまぁ、女子供には優しいし、外面はいいから安心してもいいぜ?」

ますます、姐さん的な人しか想像出来ないのですが・・・

「あっ、このことは内緒だぞ?殺されちまう。」

礼儀だけは気をつけて、行く事を誓いました。

手土産は、城下で有名で人気のお菓子でいいでしょうか?


「そういえば・・・

 ここでそんな話していたら、プルート様に筒抜けなんじゃありませんか?」

空間さえも勝手に変えてしまえるのです。城の中の出来事、会話なんて手に取るように分かってしまうものですよね。ここで計画していたらバレバレなのでは?

「俺、情報司る精霊なんだぜ?

 ここでの会話は伝わらないようにしてあるんだよ。」

「そんなことが出来るのですか?」

タイチさんの小さな姿を見ると、精霊王でさえ阻む力があるようにはどう頑張っても見えません。ついつい素直にそう言ってしまいました。

「格はあっちの方が上だがな。司る場においては、司っている奴の方が強いんだよ。この部屋だけの狭い範囲だけだしな。」


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