表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/42

   それが全ての始まり

前半は「侍女ですが、やれば革命を齎すことも出来るのです。」と重なります。

後に、『書の精霊』と呼ばれる存在によって世界は救われることになる。

彼女が紡いだ、精霊たちの在り方を綴る物語-救世の精霊譚と呼ばれるそれは、人々の心に刻まれ信仰の糧となり、その信仰は精霊たちに力を与え、世界の崩壊の危機を救ったといわれている。




これは、『書の精霊』となる少女が『救世の精霊譚』が紡ぐ、その過程の物語。





始めはただ、彼女を助けたいと思っただけでした。

それとちょっと、趣味を楽しもうとしただけだったのです。


それがどうして・・・こうなった・・・・。



乙女ゲーム『貴方はだれ?』

精霊王が人々の信仰を集め、治める世界で、人外の攻略対象たちとの恋愛を繰り広げながら邪精霊や魔物、魔王を倒していく。そんな有り触れたストーリーながら、人外のキャラたちの個性と姿で、耽美スキーからモフモフ愛まで幅広い萌女子の心を掴み、オタクと有名な総監督の奥さんが口出ししまくってこだわり抜いた故のばっちりな豪華な声優陣で声フェチどもを射抜いたそれは抜群な人気を誇っていた。

大学時代からの親友の勧めで始めた私も、ばっちりはまりました。

そりゃあ、もう。夏と冬のお祭りにがっつり参加するくらいに。

もともと、メインストーリーとかよりも脇キャラとか、まぁそのぉ・・・キャラ同士の絡み(妄想の産物)が大好物だった私は、がっつりと攻略対象以外にホーリンラブ!!

久々に筆が動きましたとも。

サイトをめぐる為だけにパソコンを新調しました。

そんな私だからこそ、第三王女の部屋へと案内してくれている侍女長の姿に「ん?」と思い、

道すがら擦れ違う騎士様や侍従に「・・・何処かで・・・あれ?」と感じ、

そして案内された薄暗い部屋の中、寝台にもぐりこんだままの姿でこちらに目を向けてきた第三王女の姿に声にも顔にも出さないようプロ根性を発揮した内心で「ほわぁぁぁぇあ」と叫んだのでした。


「お初にお目にかかります。

 本日より殿下にお仕えさせて頂きます、リリーナと申します。

 よろしくお願い申し上げます。」


そう鉄壁の笑顔を作って挨拶をかました私に帰ってきたのは

「そう」

たった一言、ささやくように小さな声で返して寝台に全身を潜らせた王女殿下でした。とさ?


あぁ、そうだった。


攻略キャラの一人、ヒロインの祖国ヴァルト王国の第三王子(騎士)の婚約者として登場するこの方は、根暗、陰気、不気味、ついたあだ名は「一人ホラゲー」だったわ。


光の精霊王の加護を得るトゥルネソル皇国は皇家のみならず平民に到るまで生命力に溢れていることで有名。にも関わらず、その筆頭たる皇家の第三王女でありながら、他国より嫁いだ母・第一側妃の黒髪を受け継ぎ、長く垂らされた前髪から除く目元には常に隈が浮かび、着ているのは真っ黒なドレスが常。声優は海の向こうのホラー映画の吹き替えで一躍有名になった人が懇親の演技で挑み、ライバルキャラとしてヒロインに仕掛けることも、通常のライバルキャラみたいな苛烈な嫌がらせとか耳たこな嫌味なパターンじゃなくて、ジワジワ、ネチネチ、チマチマ、しかも執拗、諦めない、な感じでまんまホラーゲーム。

公式攻略本によると、金髪がデフォルトの皇家で唯一の黒髪(生母とは生まれてすぐに死別)で気が弱かった王女は周囲の使用人や貴族たち、他国の人から心無い言葉とかを投げかけられながら育った。そのせいで暗い性格になって外にも出たがらなくなった。忙しい皇王や兄姉たちは滅多に会えない。ただ、婚約者であるヴァルトの第三王子アズラートは頻繁に会いにきてくれた上に彼女に優しく接してくれた。アズラートはエルフを母に持つハーフエルフ。実力はあるが、人間からもエルフからも遠巻きにされて育った彼には王女の気持ちがよく分かったらしい。ゲームの後半で、親友である王女の兄、皇国皇太子との会話で言っていた。

引きこもりの彼女が城はおろか国を出て、王子を追って天空の島の学園に入ってしまう程に、アズラートに執着をもつようになった。

そんな彼女からアズラート様を奪おうとするヒロインを、彼女と、彼女の傍にいる光の精霊たちは許さなかった。

最初はチマチマとした嫌がらせだった。

筆箱隠すとか、靴を隠すとか、大事な実習中に光を目にいれるとか・・・

可愛い妹のように思っている親友の妹と思っていたアズラートが気づき、極秘に対処していた。

中盤に差し掛かると、彼女が母親から受け継いでいた魔術で操った魔物や光の中位精霊・上位精霊が襲ってくる程度で成長しているヒロインには難なく対処できるもの。ただし、回数と出現する場所やタイミングが地味に打撃を与えてくる。

そして、終盤には邪精霊に取り込まれてしまい、最終局面で中ボスとして現れることになる。

邪精霊に、化け物に作りかえられてしまう場面はグッときたのよね。


『アズラート様が傍にいてくれないなら、もうどうなったっていいもの』


初めて、前髪があがって可愛らしい顔を露にして涙を流す姿。


実は好きなキャラでした。


だから、思ったのです。

姫様を、そんな運命を歩ませないと。


脱・一人ホラー!!




そう思っただけなんです(涙)





あれから数ヶ月。

我が主フレイ様は、若干7歳にして立派な腐女子とおなりになりました。

もちろん、18禁は封じてあります。


何度も言うけど・・・どうしてこうなった・・・


そして、同じくフレイ様つきの同僚達やら下働きの子達やらにも広まり、ちょっとした即売会を小さな物置部屋で開くくらいには流行っています。


何度も・・・・・・どうしてこうなった・・・・




新作を、ご飯をまつワンコのようなキラキラした目でまつフレイ姫様のためにと、えぇ決して趣味の為ではありませんとも、カップリングを作ったり話を作ったりと城内をウロウロネタ集め。

時折、同じような行動を取っている同志とも遭遇しますが、そこはほら、ねぇ?っていう感じにスルーで。

そんな中、最近視線を感じることが多くなった。

乙女の第六勘を駆使して視線の先を頑張って割り出した所、まぁ何回か失敗して何もない場所を勢いよく指差してしまったこともあるけど、そんな事は前世で遭遇したアレやコレなどの失敗談に比べれば何のそのですよ。

ですが、衛兵に見られて不審気な目で見られてしまったので、今度からは心の中で指指すことに決めました。

何度目かの失敗の後、勘の導きの元、心の中で指差したその先にあったのは、白い雲が美しい青い空。

あれ?って思いました。

青い空には絶対に無い筈の存在が、私の目には映った。

疲れ目かな?

原稿書くのに忙しくて、徹夜したし・・・


いえ、あれは現実のようです。


青い空の上に浮かぶ、黒尽くめの男の方の姿。

どう見ても、空の上から私の方を見ているようです、よね・・・

勘違いだったら、すごく自意識過剰で恥ずかしいんだけど・・・

だけど、確かにこちらを見えていらっしゃる。しかも、睨んでいませんか、あれ?



私、何かしましたっけ?


・・・・うん。

心辺りが、山ほどと・・・・


宙に浮いていらっしゃる所と見るに、あれって多分・・・精霊という存在ってことで。

幼い頃に実家近くに住んでいた魔術師に、彼が契約していた小人みたいな精霊を見せてもらったことがある。確か、小人みたいなのが上位精霊。完全な人型は高位精霊といって、精霊王の側近、各属性に5人しか存在しないと教えてもらったような・・・

しかも、黒を纏っているってことは闇の精霊で間違いない。


あら、あらら?

心当たりがありますねぇ・・・

どうしましょうか?




うん。

見なかったことにしましょう。

幸いなことに、ここは光の精霊王の加護を得るトゥルネソル皇国、しかも光の精霊王が御住まいになっている王宮ですし。

光と相反する闇の精霊は、自由に動くことは出来ないはずです。



あは

あははは


乾いた笑いを上げながら王宮内に入っていく私の姿に、不審気な視線が衛兵たちから向けられるのも何のその。

私は闇の精霊の視線から逃げるよう、足早にフレイ様の部屋に向かいました。



もうすでに、逃れられない運命に捕まっていたことにも気づかずに・・・

「侍女ですが、やれば革命を齎すことも出来るのです。」の続編というか、過去話となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ