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   闇の城

『闇の精霊王』様と言って訂正されること数回。プルート様の顔を見ないように、闇に包まれた前だけを見て足早にクロノスさんを追いかけている間に、そのやり取りは私とプルート様の間で行われました。


いえいえ、私何かしちゃいましたでしょうか?

プルート様って『風の精霊王』様ラブな方なですよね?

アリシアっていうヒロイン前にしても笑顔も見せずに誘導して利用するだけ利用して、最後に『風の精霊王』を背後から抱きしめてニパァな方でしたよ?



「クロノスさん!!!

ちょっと、お聞きしたいことがぁ!!!」


大阪のおばちゃん並に足早に、あわよくば隣に並んで立とうとするプルート様を振り切るように前に進むと、閉ざされた扉を発見しました。

一応、チラッと後ろに視線を向けると、プルート様がニコニコと頷いて、目的の場所がここなのだと教えてくださいました。

少し息切れをしている私と違い、プルート様は涼しげな顔をしています。精霊だからですよね。歩幅が違い過ぎるからじゃないですよね?


扉を思いっきり開け、クロノスさんの姿を探しました。

もう、プルート様の現状はクロノスさんに説明してもらうしかありません。

私の頭はパーンと破裂寸前なのですよ。


扉を開けた部屋の中は、広さも内装も分からない、これまでと変わらぬ真っ暗闇。ただ、暗い部屋の中から小さな声が三つ聞こえてくることが分かるだけです。

ん?

ふと思ったのですが、真っ暗闇に包まれて、明りは持っているランタンだけなお城って、何処のホラーゲームでしょうか?

掃除機や映写機が必要な雰囲気をかもし出してません?


あっ!

私としてことが!!

冥府を作るというのに、ハロウィン要素を盛り込むのを忘れていました!コスプレを世に流行らせる格好のチャンスではありませんか。極論ですが、ハロウィンはお盆と同じものです。死に別れたあいつと一日だけの再会っていう萌シチュを同志たちに知らしめる絶好のチャンスです!

ハロウィン的お盆、後でクロノスさんに提案することとしましょう。





暗闇からヒソヒソ声は、死者なんて怖くないって分かっていても怖いものがあるので、部屋中を照らし出そうランタンを持つ腕を高く掲げました。


「ヒッ!!」


ほのかな明かりに浮かびあがったのは、

床の上に正座の状態で頭を下げている人形サイズのクロノスさんと、その前で横倒しになった本に腰掛けて足を組んでいる手の平サイズの女の子の人形と、同じく手の平サイズでクロノスさんの横に立っていた男の子の人形だった。


明りが三体の影を作り出すと、一斉に私の方を向いたものだから、ついつい驚いて引き攣った声を出してしまいました。

暗闇に動く人形は反則です。



「あぁ、遅かったな。」

しょんぼり反省スタイルだったクロノスさんが手を上げて、コイコイと手招きして呼んでくれました。

呼ばれるままに近づいていき、直接床にいる彼等と視線を少しでもあわせた方がいいだろうと、私も床に足を折って腰を下ろし、正座をしました。

石畳の床ですが、スカートで足を包んでおけば冷たいということもないでしょう。

「おわっ!!!」

いきなり、石畳の床が長い毛でフワフワしている絨毯に変化しました。クロノスさんも、本の上に座っていた女の子も、驚いているくらいでしたが、男の子の人形は長い毛で体の半分が隠されてしまう状態に突然なったことで驚いて転がってしまっています。

「これで、足は痛くないでしょ?」

私の横に、体操座りで座ったプルート様が首を傾げて笑いかけてきました。

「えっ・・・と・・・ありがとうございます?

 これは、プルート様が?」

その言葉から、この絨毯はプルート様の仕業なのは分かりました。

「この城はプルートが闇から作り出したもんだからな。

 作りかえるのなんて一瞬で出来ることだ。」

正座を止め、肩膝を立てた状態に変えたクロノスさんが、立てた膝の上についた腕で頬を支えて笑っています。なんだか近所の鬱陶しいおじさんが浮かべるようにニヤニヤと笑うクロノスさんの視線は、私とプルート様の間を行ったり来たりしています。

「にしても、何時の間にプルートの名前呼ぶようになったんだぁ?

それに、そんなに長い廊下じゃなかったのに、随分と遅かったじゃねぇか」

えっ、なかなかに長い廊下でしたけど?

ランタンだけの薄暗い廊下は、プルート様と色々と世間話で気を逸らす必要があるくらいには長々と続いていて怖かったです。

「お名前は、そう呼ぶように言われたからです。」

「へぇ~」

ニヤニヤと笑い続けるクロノスさん。


こちらをニヤニヤと見ているクロノスさんの視界の外で、手の平サイズの女の子が本の上に立ち上がり、本の端にまで下がりました。

それを見て、何をするのだろうかとじっと目を向けていると、私の様子に気づいたクロノスさんが視線を追うように後ろに振り返りました。そして、それを待っていたと言わんばかりに勢いよく助走をつけ、振り返ったその額にとび蹴りをかました女の子。

「ぐはっ」

蹴られた勢いのままに後ろに仰け反ったクロノスさんの頭を踏み台に蹴り、女の子が私に向かって来たので両手を合わせて手の平を広げ、女の子の着地地点を作り受け入れました。


「いい年してニヤニヤ鬱陶しいんだよ、ドラ息子。

 まだ、説教が足りなかったようだね」


「・・・・・息子?」


私の手の平に着地した彼女が腰に手を当て振り返り、床に倒れたクロノスさんを見下ろしました。

とても貫禄のある姿に、思わずときめいてしまいそうです。


「うちのドラ息子が迷惑をかけているようで、すまないね。

これからは、ムカついたら問答無用で殴ってもらって構わないからね、嬢ちゃん。母親の私が許す。」

「は、はぁ・・・。っていうか、クロノスさんのお母さん、ですか?」

「そうさ。あれの母親のユージェニーってんだ。

 まぁ、よろしく頼むよ。」





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