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   ようやく気づいたうっかりもの

二人を紹介すると冥府予定地を離れ、移動しました。

移動の際、私はクロノスさんを胸に抱き、『闇の精霊王』様に手を繋がれました。私に負担をかけないように移動するからと闇の中を歩いていきます。抱き上げているクロノスさんから「うわぁ~」という唸り声が聞こえてきましたが、「どうかなさいましたか?」と尋ねても口を閉ざして答えてはもらえませんでした。


「着いたよ」


そう言われましても、フワフワのマットの上を歩いているようだった感触が無くなり、カツンという硬い音が足の下に響いたくらいで、目の前は真っ暗なまま。『闇の精霊王』様と自分の体、抱きあげているクロノスさんしか見えません。


「何も、見えませんが。」

「俺も、うっすらとしか見えてないからな。いつも言ってるだろ、灯りつけろよ。」


真っ暗だろうと気にもせずに前に前にと進もうとする『闇の精霊王』様に思わず苦言を出すと、クロノスさんも呆れたような叱責を口にしました。

「精霊でも見えないんですか?」

「精霊ったって、俺は闇属じゃないからな。」

「・・・そういえば、『旅の精霊』って何属になるです?

 風?光?地?旅っていうと、このどれかですか?」

私が精霊譚を書いて精霊化する方々も基本は今ある属性に従ずることは変わらないらしいので、『旅の精霊』を名乗るクロノスさんも何かに属していらっしゃるはずです。

「ん~その内、分かるさ。」

ニヤニヤと笑っている様子から、何か私を驚かすような事があるようです。


「今、明りを灯すよ。」

『闇の精霊王』様の声が聞こえたと思ったら、目の前が真っ白に覆い尽くされ、しばらく瞬きして目が馴染むと、石畳の回廊が広がっていました。

明りの源に目をむけば、『闇の精霊王』様が古びたランタンを持っていました。

「すまない。僕らには光は必要ない、むしろ邪魔なものだから、此処にも照明は備えていないし、こんなものしか無いんだ。」

ランタンの中には、火ではなく小さな光の玉が飛んでいました。

「昔、ルーチェが友達が来たら必要だろうと置いていったものが役に立つ時が来るなんてね。まぁ、これは君専用になるだろうけど。」


あれ?

私って、此処に何度も出入りするようになるのでしょうか?


「リリーナ。ここは闇の精霊たちの住む居城だ。

『冥府の女王』になってもらう死者のことは、『地の精霊王』に絶対に気づかれる訳にはいかなくてな。闇の領域ど真ん中のこの城に居てもらっている。

己の属するものがあれば、どんな些細なものでも感じることが出来るから、闇以外を排除している此処は丁度いいんだ。『光の精霊王』は味方だから、そのランタンは問題ないんだがな。」


私の腕から飛び降り、自分の足で石畳の上に立ったクロノスさんが回廊の奥に進んでいきます。

まるで自分の家にいるように慣れた足取りです。

「こっちだ。」

家主である『闇の精霊王』様を差し置いて、いいんでしょうか?

「っと。『闇の精霊王』様。ランタンお持ちします。私しか必要ないのですし、光は貴方にとって毒みたいなものなのでしょ?」

闇の精霊を相手にする時、光の魔法を乱発した記憶があります。こんな小さな光、傷つけることは無くても、嫌な感じくらいはするかも知れませんよね。


「僕の心配してくれるなんて、君は優しい、ね。」


うわぉ

薄幸の美青年の微笑みって強烈ですね。

スチールでも、こんな表情見たことありませんでした。

不意打ちはやめて下さい。心臓に悪いんです。


「これは女の子が持つには重いよ。

 それに、この程度の光、何ともないから大丈夫だよ。」


その顔を直視したら心臓止まるわっと、前を見ると、さっさと進んでいったらしく、クロノスさんの小さな背中がランタンの灯が届かない闇の中に消えていました。

「今まで、闇以外で出入りするのは、クロノスにタグくらいでね。精霊のクロノスはうっすらとは周りを見る事が出来たし、タグは自分で魔術を使うから良かったんだけど・・・。そうだね。君の為に照明を用意しないといけないね。何時までも、このランタンじゃ勝手が悪い。」



「お~い。早くしろよ!」


クロノスさんの声が、回廊の壁や天井を反響して聞こえてきました。


『闇の精霊王』様に聞こうとして口を開けていたのですが、タイミングを逃してしまいましたね。

-私って、ここにそんなに出入りすることになるんですか?

私の中では二度目な質問となりますが、なんだか冷や汗と共に湧き上がってきます。

頭の端っこで、もやもやとした何かが生まれてきていますが、発掘してしまったら手遅れな気もしないでもないので、ちょっと上からコンクリートで固めたい気分です。



「それと。

僕の事はプルートと呼んでくれないか?

『闇の精霊王』と言うのは何だか他人のようだからね。」




仲間ってことですよね?

他人じゃなくて、仲間ってことで!!!!



ちょ、待ってください、クロノスさん。

これって一体どういうことなのでしょうか?


ふ、フラグは何処に落ちて・・・・



気分は、自宅デート?

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