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無邪気な疑問

少し話の進め方を変えようと思い、題名を少し変え、新しい第一話を差し込みました。

各話のサブタイトルも変更します。

話の内容としては変更点は御座いません。御迷惑をおかけします。

「そういえば、父さんと母さんはなんで結婚したんだろ?」


それは何気ない日常の中での、末っ子の無邪気な疑問から始まった。


「何だよ、急に。」

兄弟全員が集まり居間でそれぞれ大人しく本を読んでいる中、兄弟の末っ子が突然の口にした疑問に、すぐ上の兄が本から顔を上げて弟に問い返した。

本のページを捲る音が止み、部屋のそれぞれの場所で本を読んでいた兄や姉たちも目を向けている。


「いや。だってさ、あの父さんだよ?母さん、よく結婚したなと思って。」

末っ子の言い分に、なるほどと納得してしまった兄弟たち。

子供である彼等からしても、父は特異な、はっきり言えば面倒くさいと思えるほどだ。母への愛情が深いあまり、母を監禁しようとしたり、母が他の人間と話すことを嫌がったり、まだ5歳だった末っ子を外界へと放り出してしまったりと色々と問題を起こしている。

幼いながらも精霊として生まれた末っ子は、放り出されたのをいいことに、そのまま世界中を旅してまわり、幼子だった姿形を少年のものへと急成長させ、つい最近家に帰ってきた。それによって、母の怒りを買って家を追い出されていた父も、家に入ることを許された。けれど懲りてはいなかった父は再び母を怒らせ、現在別室で第三者を交えての『お話し合い』の最中だった。


「そういえば、親父ってマリアンナおばさんの事が好きでしょうがないって感じだったんだよな。旦那が出来て子供が生まれてんのに、諦めるけど忘れられないってくらいに。なのに、なんでお袋とくっつくことになったんだろうな?」

細身な両親の子だとは言っても信じてもらえない、屈強な体つきの長男が顎に手をやり考え込む。母リリーナが人間だった頃に生まれている長男でさえも知らないとなると、両親の配下である精霊たちか、叔父叔母にあたる人たちに聞くしかない。


「ヤンデレって奴だよね、父さんって。」

「でも、友達のクロノスさんとかにはツンデレだわ。」

幼い頃から何度も見ている、クロノスたちに振り回され冷たい目を向けているくせに最後には助けてやっている父の姿を思い出し、早くに成長を止め幼い子供の姿をした長女が笑う。

「寂しがり屋の、かまってもらわないと死んじゃう兎さん。」

父に似た容貌で気だるげな妖艶さを振りまく次女の意見には、全員が鳥肌の立った両腕を摩ることになった。

「父さんの場合、死んじゃうんじゃなくて周囲殲滅するんじゃない?」

急成長させた弟と双子のように瓜二つの次男が苦笑する。


「何はともあれ、ヤンデレでツンデレで猪突猛進のストーカーで自虐的でかまってちゃんってことよね。父様には悪いけど、私なら逃げる一択だわ。」


「母さん、逃げられなかったんだろうな。」

当時はまだ、ただの人間だった母を思い、思わず涙を拭う仕草をする兄弟たち。

「でも本当に、こうと思ったら失恋しようともマリアンナ叔母様一直線だった父様が母様に目を向けたのかは気になるわ。・・・闇の精霊たちに聞いたら教えてくれるかしら?」

人間の寿命以上に生きているはずの長女だったが、その好奇心は子供の見た目に呼応していた。

「それよりも、ルーチェおばさんに聞いたら?

 母さん、若い頃は光の王宮に勤めてたんだろ?」

次男が物心ついた頃には、母が仕事を辞め『書の精霊』を本分として動いていた。兄・姉たちに確かめるように目を向けた。

「そうだな。光の精霊たちも何か知っているかも知れないな。

でも、それならお袋が書いた『精霊譚』に書かれている精霊たちに聞いていっても何か分かるかも知れない。」

母が『書の精霊』となる要因となった『精霊譚』を部屋に置いてある本棚から取り出し、長男はぱらぱらとページを捲りだした。

「じゃあ、私は御父様の悪友三人に聞いてこようかなぁ。あの頃、御母様巻き込んで世界中をやりたい放題にしたのは御父様を含んだ悪童四人組だって叔母様たちが言っていたもの。」

伝達タイチの精霊』に『極めるタグの精霊』、そして『クロノスの精霊』。指を折り、父の友人達の名前を呼んでいく次女。


思いついたら吉日、とばかりに手にしていた本を片付けていく兄弟達。


長男は人数が多いからと、発端を切り開いたくせに呆気にとられていた末っ子の首根っこを掴み、もう片方の手には『精霊譚』を持ったまま、窓から飛び出していった。


次男は、まず自分の部屋へと戻り、自身が加護する国の王宮に暮らす叔母、『光の精霊王』ルーチェに会う為と余所行きの服に着替え、音を立てないようにこっそりと玄関を後にした。


次女も、まず部屋に戻るとダボダボで楽なルームウェアからお気に入りのワンピースに着替え薄っすらと化粧を施すと、幼い頃に贈られてから大切に育てている天馬に乗り、空を駆けていった。


最後に残された長女は、母に「全員、用事が出来たので出掛けます」という書置きを認め、家の中に設置されている父の居城へと繋がる扉に足を進めた。父は母や子供等が暮らすこの屋敷に居付き、結婚するまでの父の住処であった闇の居城は仕事場兼父の配下である闇の精霊たちが暮らす場所となっている。外界が昼間である今、闇の領分を司る闇の精霊たちは城で身体を休めている筈だ。




こうして誰にも止められる事もなく、『闇の精霊王』と『書の精霊』との間に生まれた5人の子供たちは父母の過去を探る為の行動を始めていったのでした。

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