エピローグ
七月の夜の雨が、アパートの窓を打ちつけていた。
部屋にいたユズルは……ハッとしたように顔を上げた。
壁のカレンダーを見る。
「……あの日だ」
ユズルは慌てて部屋を出ると、傘を乱暴に掴んでアパートを飛び出した。
トーマは、自分とユズルが暮らすアパートに急いでいた。
借りてきたDVDのケースにも、少し雨がかかっている。
「……よく降るな……」
トーマは暗い夜空を見上げて、溜息をつくと……そのまま、雨の雫に見とれた。
気のせいか……紫色に光っているように見える。
「……何だ?」
トーマは自分に何が起こったのか分からなかった。
気がつくと……両目から涙が零れていた。
「え、何で……」
「……トーマ!」
アパートの方からユズルが駆けてくるのが見えた。
トーマは、慌てて目を擦る。
「ユズ! 迎えに来てくれたのか?」
何事もなかったように、トーマはユズルの方に歩き出した。
――かつて少女が降りて来た場所に……紫色の雫が降り注ぐ。
〈ありがとう……さよなら……〉
涙で掠れたような、少女の声。
トーマは不思議そうに、振り返った。
※改稿前、連載終了時のあとがきです。
N「……今度は短かった」
優「そう。何ていうか……ひと夏のおとぎ話、的な?」
N「んー、だからか……何かちょっと古臭いような気も……」
優「がーん……」(←これがもう古臭い)
N「それに最後は離ればなれになるんだろうな、と思った」
優「何で?」
N「タイトルでネタバレしてる」(←旧題「さよならの瞬間」)
優「あ、そっか! 駄目じゃん!」
N「……タイトル付けるの下手くそ……」
優「……はは……あはは……」
N「……まぁ、でもとにかく……話を書くことはできるんだってことはわかった。
一応、いろいろ考えてるんだなってのも伝わる」
優「……(じーん)」(Nは辛口なので↑これは十分ホメ言葉)
N「だから……リメイクじゃなくて、新しく話を書いてみればいいのに」
優「……新しく?」
N「普通、異世界モノっていうとさ、最初に異世界に飛ばされて、そこから冒険す
るっていうのが王道だと思うんだよね。……行き来する話もないわけじゃないけ
どさ」
優「ふうん……」
N「今だからこそ、新たに何か書けるかも」
優「……わかった……」
……という訳で、次は“異世界をきちんと旅する話”「漆黒の昔方」です。
※改稿後のあとがき
1話あたりの分量を押さえて細かく分け、描写をちょっと増やしたら……10万字超えた……。
前は9万字ちょっとだった気がするので驚きです。
少しは読みやすくなっているといいな、と思うのですが……。どうでしょう?




