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×(カケル)青春オンライン!  作者: 毒島リコリス
四章

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40/118

強さの秘訣?

 俺があまりにも取り付く島がないので、タクヤは肩を落とした。

「やっぱり、ダメか……」

「ちょっと貴方!タクヤ様がこんなに頼んでいますのよ?!少しくらい見せたっていいではありませんか!」

とうとう、ミサトが声を荒げた。タクヤが慌てて口を塞ぐが、もがもがと抵抗する。俺はため息をついて、反論を試みた。

「だって、『タクヤ様』のこと何も知らないもん俺」

「むっ?!」

ミサトが、口を塞がれたまま眉をしかめる。

「金持ちの学生だってことはわかったけど、どこの権力者の息子だかも知らないし。知ったところで従いたくもないし」

「そうだねえ。何者でもなく、何者にもなれるっていうのが、オンラインゲームの楽しいところだよねえ」

あーさんもうんうんと頷いて同意した。年齢も身分も違う人々が、それを気にせず同じ話題で集まれるのが楽しい。逆に言えば、いちいち現実世界の年齢や身分を気にしていたらキリがない。

「ちなみに、例えば俺の装備を見るためにリアルマネーで買い取るなんて話になると、規約違反で、買ったほうも売ったほうもアカウント停止対象になるから。そもそも売らないけど」

「……だから嫌なのですわ」

苦々しげに吐き捨てるミサトに、タクヤがまた悲しそうな顔で俯く。彼女は、薄々気が付いているのだ。この世界には、金や権力で渡ってきただけの自分には、居場所がないことに。

「ミサト。言っただろう。無理にボクに付き合う必要はないんだよ。そんなに嫌なら、やめていいんだ」

「それも嫌ですわ!タクヤ様が私の知らないところで楽しそうにしているのを、何もできずに見ていろと仰るのですか!」

大好きなタクヤは、平民ただのプレイヤーとなった世界を謳歌していて、自分がいなくても楽しそうにしている。道なき道を進み、恐ろしいモンスターを叩き伏せ、不条理に遭遇しても笑っている彼の心が、彼女には理解できない。要するに、彼女は。

「とーすとに、やきもちを焼いてるんだねえ。……なんだか美味しそうな字面だね?」

あーさんの暢気な台詞はさておき。いかなる者も受け入れる偉大なる母(マザーグランデ)に嫉妬したところで、何の生産性もないわけだが、これ以上は堂々巡りだった。

「仕方ないなァ。それじゃあ、上着だけな」

「っ!本当かい?!」

俺はタクヤに同情を覚え、少しだけ妥協することにした。他人に趣味を理解されないというのは、辛いことだ。それが親しい相手であればあるほど。

「はい、どうぞ」

ジャージの上着を脱いで渡す。受け取って、ステータスを見たタクヤが、ひっ、と小さく悲鳴を上げた。

「なんだ、この数値は」

俺のジャージは、八スロット全てにオール+100のステータスが付いた、ある美さん曰く『気味が悪い』装備だ。上着に付いているのはDF石なので、綺麗に揃った見栄えの良いステータスだと――。

「ち、チートではないのか?!」

いきなりひどいことを言われた。

「こんな数値、見たことも聞いたこともないぞ」

「人が丹精込めて育てた装備に失礼な」

「育てた?」

「錬金術スキルで、石のステータスを上げられるんだよ」

「そうなのか?!」

さすが古の死にシステム、努力を金で買う層には届いていなくて当たり前だった。

「錬金術は便利だよねえ。火薬も作れるし」

「貴方も持っているのか」

「うん。生産職には必須スキルだもん。って言っても、ミサトちゃんみたいな魔法使いも、錬金術持ってると便利だと思うけどねえ」

急に話の矛先を向けられ、ミサトがたじろぐ。

「わ、私?」

「大容量のMPポーション、毎回露店で探して買うの、面倒じゃない?」

「それは、まあ」

魔法使いのMPは、装備のスロットに応じて八百近い数値になる場合もあるので、少なくとも回復量が百以上あるポーションを持っていないと、回復が追いつかない。しかし、MPポーションは、店売りでは三十ポイント回復の小瓶しか売っていないのだ。それ以上は錬金術で生産するしかなく、消耗品ゆえに買い占めも多発する。課金アイテムには全回復や毎秒回復などの特殊ポーションもあるが、何度も言うように、学園杯では課金禁止だ。魔法使いなら特に、MPポーションの安定供給は懸案事項だった。

「どこ行っても重宝されるし、タクヤくんの役にも立つし、どう?」

「か、考えてみますわ……!」

タクヤの役に立つと言われ、ミサトの目の色が変わった。

「なるほど。ボクも覚えてみようかな。ミサト、一緒にやってみるかい?」

どうやら俺とあーさんが対人に強い秘訣が生産にあると踏んだらしいタクヤも、興味を示した。

「! ええ!私、タクヤ様のお役に立ってみせますわ!」

急に勢いづき始めた二人に、俺とあーさんは顔を見合わせて笑った。執事の彼は、ただ静かに二人を見守っていた。


× × ×


【皆の溜まり場】トルマリ通信 vol.2【貿易都市】

5 名前:ゆーきゃん@とーすとうめえ

商店街が大集合してたね


6 名前:nana@とーすとうめえ

何かイベントでもやってんのかと思った


7 名前:マリエル@とーすとうめえ

個人プレイ多いギルドだと思ってたけど

案外集まりいいのね


8 名前:モイ@とーすとうめえ

>>7

侮ったらアカン

奴らの結束の強さはマザーグランデ屈指やぞ


9 名前:一級フラグ建築士@とーすとうめえ

ゴテゴテした格好の三人組が囲まれてるのが見えたぞ

何してたんだろ


10 名前:ルンルン@とーすとうめえ

>>9

ゴスロリ装備の女がAreAとバトってた

もちろん負けてたけど


11 名前:ゆーきゃん@とーすとうめえ

>>10

そりゃAreAには勝てないわー


12 名前:スミス@とーすとうめえ

商店街の中にくろす混ざってなかった?


13 名前:†暗闇†@とーすとうめえ

またくろすかよ

最近のトルマリの騒ぎ、大体くろすがいるな


14 名前:マリエル@とーすとうめえ

AreA王子とくろす揃ってたの?

見たかった~


15 名前:ピンキー@とーすとうめえ

>>14

良いよねあの2人


16 名前:マリエル@とーすとうめえ

>>15

いい


17 名前:スミス@とーすとうめえ

>>15 >>16

やだこのひとたちこわい

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