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×(カケル)青春オンライン!  作者: 毒島リコリス
十四章

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反省と言及

 「敗因はアレだなー、油断」

「元も子もないじゃん」

ゲートを出てきた百鬼夜行の皆さんは、難しい顔をしながら早速反省会をしていた。

鉄天馬(エアロモビル)ノーブレーキで突っ込んでくるとか……。一歩間違えたら自分も吹っ飛ぶ奴じゃん」

「逆に言えばさ、ただ走ってくるだけでスキルじゃないから、自分さえ無事だったら追い打ちも可能なんだよなあ……」

「こんなセクシーなお姉さんを躊躇いなく轢くなんて人の心がない……。奴こそ鬼では……」

おかしい、いつの間にか俺の悪口になっている。そっちだって、らぶぃくんを仕留めたくせに。あんなつぶらな瞳の生き物――もとい、マスコットに容赦なく攻撃が出来るなんて、やはり鬼か悪魔だ。

「負けは負けだろ、潔く認めろ」

「自分は()ってないくせに、偉そうに」

せくめとさんとウサギ先生は、またしても喧嘩していた。大人げない大人同士、気が合うようだ。

「いやしかし、そうだな。今回はおれたちの負けだ」

「その白いのにしか落とされてないもん」

「そうだそうだー」

渋々頷いたせくめとさんの後ろから、ふくれっ面のマユたんと暗闇くんが、野次を飛ばしてくる。

「それなー。結局、うちらナルに頼りっぱなしやったもんな」

ライムは九尾をふさ、と揺らして腕を組んだ。

「せめて事前に素性がわかってればなー、対策したのにぃ」

マユたんがふくれっ面で、俺の顔を顎の下から睨めつけた。

「対策されたら逆手に取るのが対人屋だろ? どっちにしろ負けてたと思うなー」

「ぐぬぬ」

対人屋を名乗ったことはないが、自分たちの頭領に首を振って否定されてしまうと、マユたんもそれ以上の反論はできないようだった。

「まあ、面白かったからいいよ。次は負けん」

また遊んでくれるらしい。

「大会頑張れよ。ルリちゃんと蘇芳、うちのメンバーで良ければいつでも練習相手になるから、声掛けてくれ」

「マジっすか。そりゃありがたいな」

「助かります。またよろしくお願いします」

対人の練習相手としては、最高の人脈だ。しかし、元から団員のライムは置いておいて、

「俺は?」

自分だけ名前を呼ばれなかったことに不満を漏らすと、

「お前はダメ。負けが越すとテンション下がるから」

「ええー」

笑顔で拒否された。


 百鬼夜行の皆さんは反省会を兼ねてギルド内バトルを続けるとのことで、コロシアムのホールで別れた。あれだけ気の張る戦い方をしておきながら、まだ戦う気力があるとは、せくめとさんの真の強さは精神力にあるのかもしれない。見習わねば。

「じゃ、俺は帰る」

「はい、先生もありがとうございました!」

ウサギ先生はひらりと手を振り、また明日なー、と言って去っていった。

「野良でもう一試合やってこようかな。真っ先に落ちたから大して動いてねえし」

「私も」

蘇芳とルリはゲートの方へ向かい、残ったのは俺とライム。

「ライムは行かないの」

「んー、さすがに疲れた。ちょっと休憩やな」

俺同様、一瞬でも隙を見せれば槍投げの餌食になる状況だったわけで、やむなしだ。

「二階のカフェでも行く?」

「ええよ」

というわけで、連れ立って二階へ向かった。


× × ×


 広いテラス席に出ると、狐娘は大きく背伸びをしてから、スカートを翻し振り返った。

「さて、駆くん。ひとつ訊いてええか」

「? なに、水鳥ちゃん」

急に一対一会話モードで、わざわざリアルの名前で呼んだ。何事だろうかと思いつつ、先を促すと。


「――アンタ、くろすやな?」


にやりと笑った顔は、鎌を掛けているのではなく、確信を持って言っているそれだった。

「ばれたか」

下手に弁解をしても無駄だ。両手を上げて降参のポーズを取り、くろすと同じ笑顔を見せると、

「案外あっさり認めよったな」

ライムは拍子抜けした顔で鼻を鳴らし、いつかと同じ席へ座った。

「そろそろ気付くと思ってたからね」

向かいの席に座り、NPCのウェイトレスを呼び止めて注文する。スペシャルメニューのレシピはアバターごとにカウントされるので、今回はアイスカフェラテにした。ライムも同じく。

「暗闇くんたちから何か聞いたの?」

「うんにゃ、薄々そうなんと違うかなー、って思てたんやけど。さっき一緒にバトってて確信した感じ」

大会優勝者がこんな近くにおると思わへんやん、と頬杖をついて口を尖らせた。

「二人には言わんの?」

「気付かれたら隠さないけど、積極的には言わないかなァ」

「せやろなー。うちがくろすやっても隠すわ。随分かっこつけてしもうてるし」

「……人から改めて言われると、恥ずかしいなァ」

そんなつもりはなかったのだけれども、気がついたらそういう言動をしてしまっていただけだ。

「しゃあない、同志のよしみで言わんといてやろ。感謝しいや」

運ばれてきたアイスカフェラテをストローで吸いながら、口とは裏腹にやや不満そうな様子で、ふさふさと尻尾を揺らした。

「ありがと。お礼に今貸してるデスサイスあげちゃう」

「ほんまに? ……バレるのも時間の問題やと思うで?」

「その時は、その時だよ。ギスギスしたらごめんね」

できれば大会が終わってからにしてほしいなと思うが、戦闘を二人に見せれば見せるだけ、リスクは上がって行くのだろう。彼女の言う通り、いつばれてもおかしくない。

「まあ、そんときはまた、お詫びに何か奢ってもらお」

「すまないねえ」

なはは、と笑うと、

「その笑い方なあ、隠す気あるんか」

ライムは大きくため息をついた。

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