魔女談義
「おや幸太。また魔術の練習か?」
「あ、父さんおはよう……ってもう昼前」
「ああ、色々疲れてたからな。もうぐっすり」
「色々」
「ああ、色々」
「……」
「……」
「ま、夫婦生活には必要らしいしね。夫婦円満の秘訣は性生活。ま、いい歳だけど」
「ほっとけ。肉体年齢的にはいまが絶頂期なのだ……って何言わせる」
「ま、いいけど」
「……コホン。やっぱり魔術使うとその姿になるんだな」
「うん、いまだに慣れないんだよね。トイレとか風呂とか」
「ああ、わかるわ。すごいわかる。俺も娘の体みたいで触るのも妙な気分だった。あ、美衣には内緒な」
「いえるかそんなこと。なんでこんな仕様になってしまったのか。ご先祖様め……」
「聖女の謎パワーだな」
「謎パワーだねぇ」
「幸太はまだ女ものの服は買わんのか。買うときはあれだ、ついて行ってやってもいいぞ」
「中身男2人で服選びか……」
「下着とかな」
「ぶらじゃあを見繕ってくれ」
「おでんの注文みたいだな」
「なんていえばいいのやら、考えただけで動悸がひどくなりそうだね」
「ぶらじゃあのいいところ選んでくれ」
「マグロの切り身っぽい」
「ここがぶらじゃあのトロで、こちらが付け合わせのぱんつです」
「パンツっていうんだっけ?」
「あ、ショーツか。ややこしいな」
「女先輩の父さんもまだまだ慣れないんだな」
「慣れる気はしないけどな。あ、そもそも靴がないのか。幸太の」
「あ、そうだね。うちので履けるのは健康サンダルくらいか」
「あれ痛いよな」
「そんなに距離は歩けないよね。健康サンダル履いて治癒の術式発動しながら歩くとかね」
「健康ってなんだって感じだな」
「うん」
「なんだかんだで幸太もいつかはブラ付けるのかぁ」
「どうかなぁ」
「なんで」
「この姿、魔術を発動しないでおとなしくしてると、半日くらいで元に戻るんだよね。最初は数日かけて戻ってたけど。最近は半日で戻る」
「ほう」
「で、戻った時ブラしてたりスカート履いてたりするわけですよ」
「きついな」
「きついね」
「……」
「……」
「あ、父さん」
「なに?」
「この家には今、中身微妙な金髪の美人姉妹しかいないんだけど」
「姉妹」
「見た目ね」
「俺妹か……」
「まぁね」
「……お姉ちゃん」
「キメェ!」
「……」
「……」
「あ、それでなんだっけ?」
「ああ、ここには2人しかいないわけですが」
「口調が」
「2人しかいないんだけど」
「うむ」
「昼ごはんどうしよっか」
「なんかとるか」
「食いに行くっていう手も」
「ううむ」
「なに? 唸って」
「ジャージ姉妹でどこに行くのだ。と思ったのだな」
「ああ、それもそうだね」
「正直、幸太がその姿で飯食いに行って平気とも思えんしな」
「……それもそうだね」
「というわけで、とろう」
「何にする? ピザとか?」
「そうさなぁ……ご飯ものがいい気がする。今日の俺はご飯腹だ」
「ご飯腹って、食いすぎた後の腹みたいな響き」
「じゃあ、お米腹。オコメコメコメオコメバラー」
「やめなさい」
「じゃあ、いつものソバ屋にしよっか。俺カツ丼。幸太は?」
「あ、いいね。じゃあ天丼にしよう」
「あそこのソバって食べたことあるやついるのかね」
「この家にはいないね」
「ブラックリストに入れられそうな家だな」
「めんつゆのように黒い佐藤家」
「うむ。ちょっと注文してくる」
「お願い~」
「ううん、ここの術式があると魔力流すの難しくなるなぁ……よっと……あ、壊れた。あーあ」
「ただいまっと。お、まだ練習中か」
「うん、どうしても複数の術式組み合わせると、難しくなるよね。これ」
「うむ。組み合わせるとより術式に流す魔力が増えるから、どうしても術式の強度を上げなくてはいかん。そうなると、さらに強度を上げる術式をうまいこと組み込まないといかん。大体はここをミスして暴走させたり不発になったりする」
「だよねぇ。あ、これでどうだろう……行けそうだけど父さんから見てどうかな?」
「うーん、ああ行けそうだ。行けそうだけど、これだけでかいと破られる率も高いだろうけどな」
「練習だしね。でも、父さんみたいな光の点みたいになるまで集積度上げるのはちょっと無理だなぁ。チカっと光って大爆発とかやられた方は悪夢だね」
「あれは、ディアーナのイメージする力と俺の設計力と魔力の賜物だな。正直あれは真似されたらちょっと怖いな」
「だよねぇ……よっと、記録記録」
「おーっ! 出来たのかそのデバイス」
「うん。これでこのスマホと指先をこうして繋げば……」
「USBなのな」
「見た目はね。中身は全然別物だけど」
「タップすると術式が構成されると。おお、すげぇ」
「僕専用だけどね。これだと、いろいろ出来そうだよね。辞書引くように魔術行使できる」
「覚えればいいのに」
「構築途中で覚えさせて途中から再開する、みたいな使い方もできるからね便利だよ」
「なるほど?」
「これで集積度をある程度上げられるし、中々のデバイスになったと思うよ」
「そうだな……あ、蕎麦屋が来た! 今日は早いな」
「昼前だからね。はーい! いまいきまーす!」
会話のみで書いてみました。どちらがしゃべっているかわかるようにしたつもりですが……
確認したのですが、読みにくいところや誤字があったらご指摘お願いします。




