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親子の会話

お母さん、お元気ですか? こうしてお話しするのは初めてですね。


僕の記憶には無い、まだ見たことないお母さん。僕は元気で過ごしています。お父さんたちも、とっても元気です。


昨日は、初めて狩りに出かけました。やっと、お父さんたちが僕が狩に付いて行くことを許してくれたのです。


大火食いイノシシを狩ったときには、みんなで大喜びでした。でも、解体するときにはちょっと気持ち悪くなったけど。


でも、お母さんもよく解体作業してたって聞いたので、僕も頑張ります。お母さんは、女の人なのにすごいって思った。


お母さん、僕もお母さんに会いたいです。そちらの世界のコウタ兄さんやミイ姉さんが羨ましい。僕もお母さんの子供なのに。でも、お父さん達もいるから淋しくないよ。


お母さん、聞こえますか? お母さん、お願いだよ、どうか僕のことを忘れないで。僕もお母さんのことが大好きだっていうこと、忘れないで……




……ああ、聞こえているよ。大好きな坊や。私の宝物。お話しできるようになったんだね。我が子が大きくなる姿が見えるようで嬉しいですよ。


お母さんも元気で過ごしています。みんなのこと、家族のことは一度も忘れたことはありません。


狩は危険が多いので、皆のいうことをよく聞いて、怪我しないでね。心配になってしまいます。


ああ、愛している子のことは片時も忘れることは無いでしょう。


そしていつか、こちらの時が過ぎ去ったとき、あなたが私を許していてくれたなら、会いましょう。




ああ! お母さん! ええ、聞こえます! 僕のお母さん!


いつか、僕もお母さんの傍に居られる日々が来ることを夢に……


ああ、もう時間のようです。では、どうかお元気で。




……ええ、愛しています。――。




ふと、幸次は目を覚ます。

流れる涙に気が付き、目を擦る。美穂は隣で寝息を立てている。窓を見ると薄らと明るくなってきているようだ。

先ほどの「会話」。念話だろうか。確かに魔力の波動を感じた。つまり。


「夢、ではない……の? 」


ある衝動が幸次を突き動かす。


ベッドを出て、音を立てずに階段を降りる。


キッチンでグラスに氷を入れ、書斎へ。スコッチを注ぎ一気に煽る。


喉がカッと熱くなる。そこが幸次の限界だった。


「……ご、ごめ……」


机に突っ伏し、謝罪と嗚咽を繰り返す。

世界と子供のどちらかだったのだ。そのような選択であったとしても、自分は子を捨ててきてしまった。どれだけ言い訳をしても捨てた事実は変わらないのだ。


「いつか……・時が来れば、一緒に……」




翌日、書斎の掃除をしに来た美穂は、空になっているスコッチの瓶が転がっているのを見つけたが、何も言わずに片付けた。

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