第21話 妊娠しちゃう
ピンコーン!
風呂上り、自室でまったりしていた俺のスマホが鳴った。メッセージアプリの着信音が。
「あっ、真美さんからだ!」
スマホの画面には、愛らしいポメラニアンの画像が表示されている。
「や、やった! やったぁああ! 真美さんからだ!」
これをどんなに待ち望んでいたことか。
先日のデートでは気まずいまま別れちゃったからな。
あのままずっと話せずにいたけど、LIMEしてきたってことは許されていると考えて良いのか?
ピッ!
俺はゆっくりとスマホをタップする。
『今、電話しても良いかな?』
表示されたメッセージは、短文ながらも刺激的だった。
「で、でで、電話だと! 真美さんと! ああっ、緊張する! ま、待て、パジャマだけど恥ずかしくないかな? って、電話だから分からないよな」
一人であたふたしながら『良いですよ』とメッセージを送った。
ピロロピロロピロロ――
「うわあっ、電話が! いちいち驚くな俺ぇ! てか、ビデオ通話じゃねえか! しまった、やっぱりパジャマ姿が問題にぃ!」
着替えようかと悩む俺だが、いつまでも真美さんを待たせる訳にはいかない。
せめて背筋を伸ばし襟を正してから『通話』をタップした。
『あっ、俊くん♡ 忙しかったかな?』
「全然大丈夫ですよ。って、ぐはぁあっ!」
画面に映った真美さんの姿が刺激的すぎた。透け感多めのランジェリーみたいな格好をしているのだが。
『どうしたの、俊くん?』
「どど、どうしたじゃなくて! 真美さん、その格好は? ねねね、ネグリジェですか?」
真美さんが肩に掛かっている紐を引っ張る。
『ああ、これ? ベビードールだよ♡ 寝間着にしてるんだ。どう、似合うかな?』
そう言って真美さんが肩紐を引っ張り、スマホのカメラを胸元に持ってゆく。
「ちょ、みみ、見えちゃいますって!」
『えへへ♡ 見ても良いよ♡ 俊くんだけの特別ね♡』
「か、からかわないでください。本気にしちゃいますよ」
『良いよ♡ 本気にしても♡』
小悪魔っぽい表情で科を作る真美さん。Gカップ(推定)の胸が窮屈そうに盛り上がり、その谷間は手がスッポリ入りそうなくらい深い。
もう目が離せないぞ!
「だ、だだだ、ダメですって! 見ちゃダメだ! 見ちゃダメだ!」
『うふふっ♡ 変な俊くん』
口に手を当てて笑う真美さんが可愛らしい。
清楚でお淑やかなのに、服装とのギャップが凄すぎるぞ。
『俊くんのパジャマも可愛いね♡』
真美さんに見られている。恥ずかしい。
「すみません、こんな格好で」
『ううん、パジャマの俊くんも新鮮だよ♡』
「そうですかね」
何だろう、お互いに寝間着で話すなんて、一気に距離が縮まったみたいだ。
『うんしょ♡』
そんな色っぽい真美さんだが、今度はベッドに寝転がった。うつ伏せになって寝ころぶように。
横になったことでGカップ(推定)の胸がムニッと潰れ、余計にデカさが強調されているのだが。
とりあえず話題を変えねば。
「あ、あの、真美さん」
『何かな?』
「先日はすみませんでした」
『えっ、何のこと?』
真美さんは本気で分からない顔をしている。
「だから……最近の真美さん、俺に冷たかったし……。先日のデートで俺がやらかしちゃったのかと思いまして……」
『ええええっ!』
真美さんが驚きの声を上げた。
声に合わせて胸がボヨンボヨンしていたので、俺は目を逸らしたけど。
『ち、違うよ! 俊くんは悪くないよ! 私が恥ずかしくなっちゃっただけだよ!』
「そうなんですか?」
『そうだよ。だって私……デートで気絶しちゃって……迷惑かけちゃったから』
そう話す真美さんが、目を伏せ体を縮める。代わりに胸が強調されてるけど。
「そんな、真美さんは悪くないですよ」
『ごめんね、俊くん。あっ、そうだ!』
ボヨンッ!
急に真美さんがパチンと両手を合わせた。それによりGカップ(推定)も凄い弾んだのだが。
『俊くん♡ 明日の夜、家に来ない?』
「えっ?」
『お詫びに手料理をご馳走するよ♡』
「えええっ! 真美さんの手料理!?」
何だってぇええええ! 真美さんの手料理だと!
もうそれって付き合ってるみたいじゃないか!
「さ、さすがにそれは早いと言いますか……。それにおばさんに誤解されちゃいますよ」
『うふっ♡ 変な俊くん。昔はよく来てたでしょ』
真美さんは笑ってから衝撃的な一言を口にする。
『明日は私一人だから大丈夫だよ♡ 両親は旅行なの』
「えっ? ええええっ!?」
りょ、りょりょりょ、旅行だとっ!
もしかして、もしかしなくても、真美さんと二人っきりだと!?
どどど、どうするんだ!? 一つ屋根の下で若い男女が二人っきりなんて、確実に赤ちゃんできちゃうだろぉおおおお!
「真美さん、さすがに二人っきりはマズいのでは? まだ子供は早いです」
「子供じゃないもん♡ もう大人だから大丈夫だよ♡」
ん? 大人? 赤ちゃんの話はスルーしてくれたのかな?
「でも、せめて卒業するまでは……」
『卒業するまで待ってたら進路が違っちゃうかもだよ』
確かに!
真美さんが遠くの大学に進学でもしたら、離れ離れになっちゃう。
って、ちょっと待て! 何で俺はもう付き合ってるみたいな気でいるんだよ!
「で、でも、さすがに妊娠は……。そんな魔性のおっぱい耐えられないです」
し、しまったぁああああ! つい『妊娠』とか『おっぱい』とか本音が漏れてしまった!
てか、俺は今まで何を話していたんだ? マズい、俺の下心が真美さんにモロバレなのでは?
そんな俺の不安を他所に、真美さんは真面目な顔で考え込む。
『うーん、俊くんはニシンのパイが食べたいんだ? 作ったことないけど大丈夫かな?』
セーェェェェーフ!
妊娠とおっぱいがニシンのパイに聞き違えていたみたいだぞ!
助かった!
「あの、ニシンのパイはアニメを観て思い浮かんだだけです。普通のパイで良いです」
本当は真美さんのおっぱいが好きだけど、そんなことは口が裂けても言えない。
『そうなんだ。じゃあアップルパイにしてみようかな? 本当はおっぱいをあげたいけどぉ♡』
「ですよね。アップルパイ美味しいですよね」
よし、健全だな。
電波の状態が悪くて最後の方が良く聞こえなかったけど。
『うふふっ♡ えへへっ♡ じゃあ明日はおっぱいってことで』
「はい、アップルパイですね」
『六時くらいに来てね♡』
「はーい」
ピッ!
通話を切ってから嬉しさが込み上げてくる。急にシャドウボクシングしたくなるような。
「やったぜぇええっ! 真美さんの家で手料理だ! シュッ、シュッ!」
ガンッ!
「痛っ! いってぇええっ!」
繰り出したパンチが机の角に当たり、俺は現実に引き戻される。
そもそも何でシャドウボクシングしているんだ。
「あれっ、そういえば瑛理子先輩は……」
一度冷静になると、瑛理子先輩の顔まで思い浮かべてしまった。あの不意に見せる笑顔を。
「ああああぁ! 俺は何をやってるんだ! 真美さんが好きなのに、瑛理子先輩も気になってしまう! 俺のバカバカバカ!」
ガチャ!
「うっさいぞ、愚弟!」
しまった。一人で騒いでいたら凛を召喚してしまった。最悪だぜ。
「問おう、お前は俺のお姉ちゃんか?」
「寝ぼけてんのか! あんたの姉に決まってるでしょ!」
「痛い痛い!」
凛がプロレス技を掛けてきやがった。スレンダーな体形なのに意外とガチな感じで。
ついでに色々柔らかい部分が当たっていて困惑する。
「待て待て! 実の姉に密着されると微妙なのだが!」
「実姉に反応してんじゃねえ! この色ボケ弟が! あんたのせいで私がどれだけ苦労してるか」
「何の話だ!?」
むしろ苦労しているのは俺なのだが。
まったくこの傍若無人なドS姉ちゃんめ!
「ふうっ、酷い目に遭ったぜ……」
やっと解放された俺は、関節責めに遭っていた肩を回す。
「あっ、そういえば俺、明日の夕食は要らないから。母さんに言っといて」
「はあ? 外食でもするの?」
「真美さんが手料理作ってくれるって」
真美さんの名を聞いた凛が頭を抱えている。
「どうした、姉ちゃん?」
「えっ、いや、その、真美とは進展してるの?」
進展? 何の話だ?
あっ、一つ屋根の下で男女が食事をしたら妊娠しちゃうって話しかな?
「大丈夫だ、妊娠はしないから」
「ああああぁ! もうそんなになってんの!? 実の弟だけに複雑なんだけど!」
凛は何をやってるんだ?
相変わらず、よく分からん姉だな。
「よし、明日はおっぱい……じゃなかった、アップルパイだぜ!」
「あああぁ、もうどうなっても知らないから」
俺は真美さんの手料理を待ちわびていた。
とんでもない事態が待ち受けているとも知らずに。
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