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誰にも媚びない孤高のS級ヒロインが、最近なぜか俺にだけ優しいのだが ~ドS級美少女の瑛理子先輩は、俺が好きすぎてデレを隠し切れない~  作者: みなもと十華@3/25二作同時発売
第1章 瑛理子先輩は誰にもなびかない

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第20話 忘れたはずの記憶

 部活終わりの帰り道、俺は瑛理子先輩とちびっ子()先輩と一緒に歩いていた。

 今日一日で、かなり第一話が進んだんだよな。

 まだまだ文章も稚拙ちせつだが、大きな第一歩だ。


「瑛理子せんぱぁい! みやびの小説も良い感じっスよね」


 雅先輩がノリノリではしゃいでいる。小さな子供みたいで微笑ましい。


 しかし雅先輩……。幽霊部員って言ってたのに、意外と真面目にやっていたな。


 雅先輩は短編小説を書いていたようだ。器用にスマホを使いこなして。

 素早い指捌きでフリック入力し文章を紡いでゆくのは、いかにも現代っ子という感じだ。

 まあ、俺より年上なのだが。


「ん? なに見てるのよぉ! この失礼な後輩はぁ」


 さっきまでドヤ顔で胸を張っていた雅先輩だが、俺の視線に気づいたのか肩を怒らせる。


「えっと、小さくて微笑ましいと思いまして」

「だから子供じゃないって言ってるでしょぉ! この生意気ドM男ぉ!」

「ははは、元気ですね」


 雅先輩の両腕を掴んで持ち上げると、ジタバタと足を振り始めた。

 何だこの可愛い生き物は。


「こらぁ! 雅で遊ぶんじゃないしぃ!」

「先輩を敬ってるんですよ。ほら、高い高い」

「敬ってないでしょぉおおぉ!」


 雅先輩と遊んでいると、いつの間にか真横にいた瑛理子先輩がジト目になっていた。


「あなた、小さい子が好きなの?」

「ち、違いますよ! 雅先輩が親しみやすいだけで」


 変な誤解はやめてくれ。社会的に死にそうだ。

 それに雅先輩は○リじゃないからな。


「雅とは仲が良いのね……ごにょごにょ」

「何か言いましたか?」

「何でもないわ」


 瑛理子先輩が不機嫌になってしまった。


「ふふぅん、あんたなんか瑛理子先輩に踏まれてるのが似合ってるんだしぃ」


 逆に雅先輩は上機嫌だ。


「雅先輩は、いつも朗らかですね」

「だから子ども扱いするんじゃないわよ! てか、早く降ろしなさいよぉ」

「はいはい」


 雅先輩を降ろすと、ここぞとばかりに反撃してきた。

 全く痛くないけど。


 ポコポコポコ!


「ほらほらぁ、雅に歯向かうと痛い目見るわよぉ」

「わー許してー」


 ちょっとだけおふざけに付き合ってあげると、雅先輩は調子づいてきた。


「ふふーんだ! このドM後輩めぇ、これからは雅に一目置きなさい」

「えっ? イ○モツ置く?」

「誰が下ネタにしろって言ったのよぉ!」


 ポコポコポコ!

 ズバシッ! ズバシッ!


「ほらほら、ざーこ♡ ざーこ♡」


 雅先輩はいつも元気だな。

 一家に一ガキ欲しいかもしれない。



 駅で雅先輩と別れてから、俺は瑛理子先輩と二人きりになってしまった。ちょっと気まずい空気のまま。


「えっと、じゃあ……」

「私は書店に寄っていくわね」

「じゃあ俺も……」


 俺も瑛理子先輩と一緒に書店に入った。

 ちょうどラノベの新刊も出る日だからな。


 もうちょっとだけ瑛理子先輩と一緒にいたいと思ってしまったけど、それは内緒だ。


「あっ、この本は……」


 実用書コーナーの前で立ち止まる。

 ある本を見つけ、強烈な懐かしさが込み上げたから。


 小説の書き方入門……。


 俺が本をジッと見つめていたからだろうか。瑛理子先輩が近寄ってきた。


「どうしたの、大崎君? って、これ……」


 先輩も小説の書き方入門を見つめている。


「これはオススメよ。小説執筆の基本が網羅されているわ」

「はい、俺もそう思います。この本には思い出がありまして」


 俺は封印したはずの思い出を開く。

 そっと心の奥にしまったはずの記憶を。


「俺、中学の時にも小説を書きたいって思ったんですよ。それでこの本を買いに本屋にきたんです。そこで一冊だけ残っていたこの本に手を伸ばした時に、ちょうど隣から手を伸ばした人と指が触れてしまい……」


 もう忘れたはずなのに、もう諦めたはずだったのに。

 あの頃の記憶は、今でも脳裏に焼き付いている。

 眩しいほど鮮明に――――




『あら、どうぞ』


 遠い記憶。その人は言った。透き通るような声で。


『あなたの方が一瞬だけ早かったわ』

『い、いえ、俺はいいですから。どうぞ』


 反射的に俺は譲っていた。

 まだその時は趣味で書こうと思っていただけで、コンテストに出そうなど思っていなかったから。


『じゃあ遠慮なく頂くわ』


 その人が微笑んだ気がした。

 帽子で顔は見えなかったけど、そんな気がしたんだ。


『あなたも小説を書くのかしら?』

『は、はい。まだ構想だけですが』

『良いじゃない。書こうと思っただけで一歩前進だわ』


 俺の心が熱をもった。その言葉で勇気をもらえた気がしたんだ。


『私も書いているのよ。短編を三作品ほどだけど。でも、周囲からは反対されているのよね。そんなものは役に立たないとか、小説家なんかになれっこないとか。やっぱり諦めた方が良いのかしら』

『そんなことありません!』


 つい大きな声が出てしまった。

 まるで自分のことのように感じたから。


『誰にも人の夢を邪魔する権利なんかないです。何作も小説を書いているなんて本気ってことですよね。夢に向かって頑張ってるって凄いと思います』


 つい熱くなってしまった。知らない人相手に。

 普段はコミュ障気味な俺だけど、人が本気で取り組んでいるのを邪魔するのは違うと思ったんだ。


『うふふっ、ありがとう。あなたのおかげで勇気が出たわ』


 その人は小さく微笑むと、何度も頷いた。


『そうよね。周囲の雑音なんか聞く必要無いわね。私は書き続けるわ』

『はい』

『私とあなたは同士ね。共に頑張りましょう』

『はい』

『いつかまた会えると良いわね。今度はお互い小説家になって。じゃあ、またね』


 その言葉を残し、彼女は背を向け歩いていった。

 艶やかで美しい黒髪をなびかせて――――




 回想から戻った俺は、恥ずかしさで頭を掻く。


「すみません、急に変な話を。その人は顔も名前も知らないんですよ。帽子を目深にかぶっていたから」


 人に話したのは初めてだ。

 瑛理子先輩になら話しても良いって思ったから。


「やっぱり、あ、あなたが……あの……きの……」

「先輩? 何か言いましたか?」

「な、なんでもないわ」


 瑛理子先輩は横を向く。

 ただ、その顔は赤く染まっているような。


「先輩、顔が赤いですよ?」

「な、何でもないわ! 西日のせいじゃないかしら」

「そうですか」


 瑛理子先輩が後ろを向いてしまった。

 まだご機嫌斜めなのだろうか?


「ほら、行くわよ」

「あ、俺はこの本を買います。今度こそ本気でやってみたいから」

「それは良いわね」


 振り返った瑛理子先輩が微笑んだ。

 それは忘れかけていた俺の情熱に火を点すような笑顔で。


「あれっ」


 今、一瞬だけ瑛理子先輩が、あの時の人と重なって見えた。

 きっと偶然だよな。


「ほら、早く行くわよ」

「はいはい」


 相変わらず言葉がキツそうな瑛理子先輩だけど、その言葉の裏には優しさが隠れているのを、俺は気付き始めていた。

 俺にパソコンを貸してくれたり、雅先輩に対しても親切に教えていたり。

 皆は誤解しているけど、瑛理子先輩は優しい人なんだよな。


「どうしたの、私をジロジロ見て?」


 俺の視線に気づいた瑛理子先輩が怪訝な顔をする。


「いえ、瑛理子先輩って美人で可愛いのに性格も優しいって思って」

「んんっく♡」

「って、どうかしました?」

「な、なんでもないわ」


 また瑛理子先輩が顔を背けてしまった。


「どうしてそっぽ向いてるんですか?」

「ちょっと、今顔を見ちゃダメよ!」

「何でですか?」

「んくぅ~」

「俺、何か怒らせることしちゃいましたか?」

「あなたは悪くないわ。んんっ~」


 両手で顔を隠しながら歩く瑛理子先輩。それ、前が見えなくて危険な気がする。


「きゃっ!」


 瑛理子先輩がつまずき、とっさに俺は彼女の腕を掴んだ。


「あっ、大丈夫ですか?」

「ううっ♡」

「だから前を見て歩かないとって――」

「さ、触らないで!」

「あっ……」


 強引に俺から体を離した瑛理子先輩は、再び顔を逸らしてしまう。今度こそツーンな感じに。

 完全に怒らせちゃったかな?


「すみません……勝手に触ってしまって」

「ち、違うのよ♡ 急に触られてびっくりしただけ。怒ってないから」

「なら良かったです」


 怒ってないようで安心した。

 いくら助けようとしたと言っても、抱きかかえるような体勢になっちゃたし。


「くぅ♡ 私、どうしちゃったのかしら? 大崎君は助けてくれたのに……ごにょごにょ……はぁ♡」

「先輩、何か言いました?」

「ななな、何でもないのよ!」

「やっぱり怒ってます?」

「怒ってないって言ってるでしょ!」

「やっぱり怒ってるじゃないですか」

「怒ってない!」


 それからも瑛理子先輩は挙動不審だった。

 女心は難しい。



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ブレイブ文庫 第1巻
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