故郷の人がヴィッテを探しに来ている可能性はある?
「ウィオラケウス司令官、ウェルブム参謀長。フォルマでございます」
司令官室にある通信玉が光り、鈴を転がしたような声が聞こえた。オクリース様の遠縁でもあるフォルマだ。
司令官室への入室はパスコードを知っていれば、魔法球を使用し入室ができる。もちろん、定期的に変更はしている。
花祭りの運営を手伝っているフォルマも教えられているにも関わらず、誰かが在室だと把握している時は律儀に毎度声をかけてくる。
「おぉ、フォルマか。自由に入ってくれ」
「失礼いたします」
重厚な扉が魔法の仕掛けによって滑らかに開いていく。その奥から姿を現したのは、桃色がかったブロンドの髪を持つフォルマ。ふわふわウェーブが彼女の愛らしさをより強調する。
今日も今日とて、可憐な美少女っぷりだ。膝裏までの髪が、彼女が歩みを進めるたび華麗に舞う。
女性の扱いが苦手に見えるアストラ様も、フォルマ相手には素の表情を浮かべることが多い。実際、今も大型犬の尻尾振り顔負けな調子だ。
「ん?」
胸がちくりと痛み、小さな声が漏れてしまった。
「ヴィッテ、どうかしましたか?」
すかさず、オクリース様が顔を覗き込んできた。一見すると無表情だが、瞳の奥には心配の色が見て取れた。
「いえ、失礼しました」
「……私は、どうかしたのか尋ねたのですが?」
ひぇ! さっきまでは優し気に見えた瞳の色が、一気に冷気を帯びたじゃないか!
助けを求めアストラ様の背中を探すが……アストラ様はフォルマの手土産のシュークリンに大喜びしていらっしゃる。薄紫色の髪に耳、黒い騎士服の後ろには立派な尻尾の幻覚が見えているよ。
心のどこかが、しゅしゅしゅっとしぼんで、その代わり諦めにも似た冷静さで頭がさえていく。
「その、大したことではないのですが、胸がちょっと痛んだ気がして。というか、痛んでいる気がして。でも、もう大丈夫です! 昨日、久しぶりに乗馬をしたので単なる筋肉痛ですね!」
ぶんぶんと肩をまわすと、本当に筋肉痛が襲ってきた。思わず、体を半分に折ってしまった。
勝手ながら親友と思っている大好きなフォルマと、大好きな上司であり身元保証人であるアストラ様のやり取りに何かを思うなんておかしいし。
あれか。仲間に入れて欲しいのか! と一人納得して顔をあげると。オクリース様が口元を押え、震えていらっしゃった。笑いをこらえていらっしゃる。
「あの、オクリース様? 行き倒れていた理由が腹ペコで、なおかつ、起きてすぐ大量のご飯を食べた私が、健康な状態で胸が痛いとか一時間程度の乗馬で筋肉痛だとか言っても説得力ないとは思いますが。爆笑するほどですか?」
じとっと見上げたオクリース様はよっぽどツボにはまったのだろう。今度は体を折って、そばの執務机に腕をついてしまわれた。
これがアストラ様なら「いっそのことちゃんと笑ってください!」と怒るところだが、オクリース様ならいっかと思えるから不思議だ。
「こほん。失礼しました。楽しくなりそうだと思う反面、自覚が芽生えるのは寂しいと思ってしまいました」
「絶対、前半だけですよね。何を自覚するべきなのかもわかりませんし、寂しいのに笑ってしまうのですか?」
「大人は複雑なのですよ」
そう小さく呟いたオクリース様は、すっかりいつもの涼し気な様子に戻っている。そして、質問は受け付けないと言わんばかりに、軽く頭を撫でられた。なんだかむずむずとして、撫でられた部分を触ってしまう。
じゃなくって、誤魔化された?! と思っても時遅し。オクリース様はすでにフォルマとアストラ様の傍に移動していた。私も小走りで応接スペースに駆け寄る。
「フォルマ、こんにちは。祭りの準備、大変そうだね。今日もその書類?」
「ヴィッテ、この間は花姫の選考手続を手伝ってくれてありがとう」
フォルマの父上の領地は首都から離れた場所にある。現在はオクリース様の父上でもあり現宰相であるおじ様の元で、諸々を勉強中らしい。
その学びのひとつが、王宮をあげて催される花祭りの運営なのだ。
「ううん、楽しかった! でもね、私、ひとつ不満があるんだよね」
「もう、ヴィッテったら。何度も聞いていますわ」
「何度でも言いたいの! だって、フォルマが一番花姫だもん!」
花姫とは花祭りの象徴ともなる存在だ。フィオーレ王国中から自薦他薦問わず応募を募り、花祭り初日に公開で最終選考が行われる。国中から問わずとはいっても、実際は貴族の女性が多いらしい。王都からは平民も何人かは通るみたいだけれど。
というのも、花姫の選考基準はとても厳しい。書類選考から始まり、マナーや所作の実技試験諸々ある。フィオーレ中から愛される伝説の花姫の名を与るのだから、甘くはないだろう。
「私もフォルマの花姫姿は見てみたかったですね」
「オクリース兄様まで、やめてくださいまし。わたくしは……着飾った姿は好いた方にだけ褒めていただければそれが一番なのです」
ほんのりと頬を染めたフォルマ。フォルマは親戚であるオクリース様を兄と慕うのと同時、女性としても想いを寄せている。
鈍感にも、
「もったいないですね。けれども、一理あるかもしれません」
と微笑むオクリース様の肩に突っ込みを入れたいのを必死で耐えた。
でも、フォルマがさらに耳を染めたから良しとしよう。
こっそりと頷いている私を、満面の笑みで見たのはアストラ様。腕を組み、笑顔全開だ。あ、これ嫌な予感しかない。
「俺はヴィッテの可愛い花娘姿はみんなに見せたいぞ」
はい、ありがとうございます。親馬鹿発言をいただきました。今なら、アストラ様の口元にお髭がはえている幻覚もばっちりだ。
フォルマとオクリース様とは程遠い空気に、べそりとなってしまう。きっと面白い顔をしているに違いない、今の私は。
「恐悦至極に存じます」
「本当のことだからな!」
「ほんと、アストラ様って父様みたいです」
やっとのことで返し、書類を抱え自分の席に戻るしかない。
じゃなくって! なんで私が落ち込むのか! ここは全力でフォルマよかったね、私とアストラ様なんてこうだよって言ってあげられるネタじゃないか。
「ねぇ、ヴィッテ。おかしなことを聞くけれど」
机で大きなため息をついている私の肩に触れたのは、優しくて華奢な手だった。
振り返れば、フォルマは思いのほか真剣な表情をしていた。その向こう側で腕を組み、「んん?」と首を傾げているアストラ様は見ないでおく。
「今のやり取りについてでなければ」
「えぇ。アストラ様とオクリース兄様のお耳にも入れておきたいことですわ」
フォルマがしゃんと背を伸ばしていうものだから。大人しく手を引かれ、応接スペースに戻る。ふかふかのソファーに腰を沈めると、隣に座ったフォルマがそっと手を重ねてきた。
ふわりと甘い花の香りが鼻をかすめる。何の花だろう。どうしてか懐かしいと思えた。後で聞いてみよう。
「故郷の人がヴィッテを探しに来ている可能性はある?」
故郷の人。その言葉に、数秒、頭が真っ白になった。
私にとって、故郷は辛い記憶の方が濃い。もちろん、嫌な思い出ばかりではないが、両親を亡くし、姉に捨てられ、逃げてきた場所である事実が胸に刻まれている。
「どう、かな」
つぶれた声が喉から絞り出された。自分の薄っぺらさを思い出し、泣きたくなった。でも、ダメだし、知られたくない。自分がいかに薄かった存在だなんて。
黙りこくる私の手を撫で、フォルマは静かに続けた。
「お父様の仕事関係や家人の方々はどうかしら」
「どうしたのフォルマ?」
「いいから、心あたりは?」
じっと見つめられて、私も真剣に考えざるを得なくなる。
私が探されているとすれば、十中八九、良くない方向でだ。父様と母様が亡くなってから、私は自分勝手に家人や従業員に紹介状を書いた。優しいみんなは青白い顔に真っ黒なクマを浮かべた私を前に、言葉を飲んだ。飲んだ息さえもはっきり覚えている。独りよがりだった私に文句を言いたい人間は、どんなに多いか。
それでも――。
「最後までお力添えいただいた方々と我が家に勤めてくださっていたみなさんには、フィオーレに滞在しているという連絡はしてあるの。返事はまちまちだったけれど」
フィオーレで当たり前のように広まっている魔法通信だが、私の国では一部の貴族しか使用できなかった。能力的な問題、道具の高価さ、両方をとっても。
けれど首都フィオーレの場合、情報管理の高さゆえに、住民登録をしている人間に対しては宛名だけでも郵便が届くシステムが構築されている。故郷の人間が連絡をとろうと思えば、第一に郵便を活用するはずだ。……私が野良生活をしているのが前提にされているなら、別だけど。
「故郷の事情を踏まえても、居場所を知らないのに直接会いに来る人はいないんじゃないかな?」
「ヴィッテ自身が知らない身内という可能性はないのでしょうか」
オクリース様が、慎重に言葉を紡いでくださっているのがわかった。
お二人やフォルマには、身内のほとんどを話しているから今更なのにね。
「アクイラエ家は短命な人が多いので、もともと親戚自体が多くありません。母方も同様のようで、ほとんど祖父母や親せきの話を聞いたこともありませんでした」
「それは、初耳だ。いや、ヴィッテの両親も――」
腕を組んで顔に影を作ったアストラ様。
「アストラ様、えーと、寿命的な意味よりは仕事や趣味に没頭して不健康な生活を送る人が多いのかと。ほら、私が良い例ですよ。異国の森で腹ペコで倒れる位だし」
冷や汗交じりに言い訳しても、アストラ様が納得する様子はない。
どどどうしろと!? っていうか、大国とは諸々生活水準やら事情も違うしさ! 俯いてスカートを握るしかない。どうする、ヴィッテ。どうするよ。
「それに、あれです! 大昔、フィオーレから共に移った親戚とも、私や姉の縁談関係で縁を切ったりでしたので」
焦ったあまり、私は選択を誤った。言い切った後で、どばりと汗が噴き出す。
「縁談関係?」
私の向かいに腕を組んで腰掛けているアストラ様が、あからさまに不機嫌そうな声を出した。顔をあげれば予想に違わない怖い表情を浮かべていた。眉間に皺を寄せている。
私はどうしてか、彼の様子が嬉しくて仕方がなかった。本当なら、仕事中にすいませんと謝罪するべきところなのに。
「はい。父が経営する貿易商の恩恵をあやかりたいという人たちばかりでしたから。自分たちにとって都合の良い人間に、姉や私を嫁がせたかったのでしょう。だからこそ、父は姉に社交界での立場を、私に仕事の能力を残してくれました」
そうだ。もともと、父の考えはそうだった。私と姉様、二人が一緒に手を取り合って生きていけるようにと思っていてくださった。だからこそ、私たちはそれぞれの立場で生きがいを見つけていた。姉様だって私を――。
ずきりと頭の芯が悲鳴をあげる。めまいが起きて吐き気が襲う。
――違うわ、ヴィッテ。それは違う。あの女はわたしからヴィッテを奪う悪魔――
遠くから聞こえる声。脳髄から痺れる甘い声に全身が震える。
掌で覆い隠した顔から、さっと血の気が引いていくのがわかった。あまりなったことのない貧血みたい。力が入らなくて、めまいがする。
「ヴィッテ?」
フォルマが肩を抱いてくれるのがわかった。
そうだ。私、声を恐ろしいと思うのと同時、フォルマの花の香りをかいだ時と同じように、ひどく懐かしくなった気がしたんだ。
「ヴィッテ、大丈夫か?」
「あ、はい。問題ありません」
掌を外し光に触れると、一瞬前に浮かびかけた考えを否定するしかなかった。姉様は私を嫌っていた。だから、認めてくれていたなんて事実は妄想だ。
――そう、一瞬の気の迷いよ――
幻聴にも思えた声に、私はひどく安堵していた。違う。家族を壊した姉様を慕うなんて、絶対に違う。確信にも似た頭の声に、頭痛がひいていく。
思い出を美化しかけていたから、家族をめちゃくちゃにした姉様を、愛しいなんて思ったのだ。
「あと、母は家出に近かったらしく、母方の実家とは全く交流もありませんし、そもそもどういった血筋なのかも知りません」
「つまり、ヴィッテを探す人間はいないということでしょうか」
オクリース様の問いに、笑みが浮かぶ。彼の後ろにある棚のガラスに映った自分に驚きもせず、私は微笑み続けていた。ガラスに映る私は、自分でも見たことがないような完璧な笑みを浮かべていたのに。
「そうですね」
心の中では泣いていた。本当は、あまりにも哀れな自分に泣けると思った。
今日はだいぶ前向きになれていたはずなのに、幻聴が響いてからは昔の自分に戻ったみたいだ。
「きっと、私がいなくなっても、だれも探しません」
なのに、どうしてだろう。私は、幼い頃からの自分を知る人間がいないことに喜んでいる。
そう感じて、また泣きたくなった。泣きたくなって、ひどく目が乾いていく。乾いているから大丈夫だと前を見る。私の前にいる三人の方が、物悲し気な空気を纏っていて辛くなる。
「俺は探す。ヴィッテがいなくなるなんて駄目だから」
机越しに、両手を握ってくださったアストラ様。冷えた手にじわじわと染みてくる体温に、顔が俯いてしまう。身を引こうとすれば強くなる力に、心の中でぽたりと滴が落ちてしまった。
――忘れないから。俺は忘れないから、君を。君たちを――
滴がはじけた瞬間、聞こえた声。幼くて、でもしっかりとした真っすぐな声。君たちをって言ってくれたのが、すごく嬉しかった。とてつもなく、嬉しくて大好きだと思った。
でも、不思議とその大事な声は重なって聞こえた。唯一無二に思える言葉なのに。
「ごめんなさい!」
飲み込んだ息はどこまでも熱い。熱いのと同時、頭の片隅で囁く声が氷のように感じられた。
思い切り頭を下げた。今の私にはわかる。自分が吐いた言葉のひどさが。
「そして、ありがとうございます! 嫌だな、私。きっと、今が幸せすぎて不安になるんですね。この数ヶ月でかなりお知り合いも増えましたし、魔術騎士団のみんなも心配してくれるでしょうし、何より三人は絶対探してくれるだろうなって自惚れてみる位はしてもいいかなぁって」
顔横の前髪をいじってみても照れくささは紛れず、くだけた口調になってしまった。今更か、なんて自分に突っ込んでみるものの、体温があがっていくのを止められない。
視線が集まっているのを感じて、すっごくいたたまれないよ!
「まぁ、ヴィッテ」
あれだ。腿に手を重ねてきたフォルマの口調は、「成長したわね」と暖かい眼差しを向けてくるご近所様そのものだ。
じっ自分でもかなり頑張った発言な自覚がある分、羞恥度数は倍増である。
「あ、でも――」
ふいに浮かんだ可能性。私、自分に向けられる憎悪を目の当たりにしているじゃないか。
あの方なら怒りの矛先を私に向けてくる可能性が高い。
「どうかしまして?」
「子爵のお怒りが冷めていなくて、私を探しているのかも」
すっと体温が下がっていく。
蘇ってくる。頬を拳で打たれた痛みと衝撃が。どくどくと心臓がはねる。痛い。胸を破って飛び出してきそうだ。震える指が、自分の頬を滑る。痛い、痛い。あの燃えるような、砕けるほどの衝撃。
「ううん。それよりも、姉様と彼の消息がわかって、それで、何かあって、私に責任をとらせようとしてらっしゃるのかもしれない」
私はいい。
私ではなく、私をネタにアストラ様やオクリース様それにフォルマに害が及ぶなんてことがあったら、私、本当に生きていけない。それだけは何としてでも阻止しないといけない。
「大丈夫だ、ヴィッテ」
悪魔のような表情で眉間に皺を寄せているだろう私の頭が、ふわりと撫でられた。それに、耳に流れ込んでくる優しい声色。お日様の香り。
顔をあげた先にいたのは、私のすぐ隣、ひじかけ部分に座っているアストラ様だった。
「アストラ様」
呼びかければ、彼は少し強めにくしゃくしゃと髪を撫でてくださった。あぁ、心地いい。
閉じかけた瞼をあげ、しっかりと目の前の衣服を見つめる。魔術騎士団の司令官服。黒を基調とした、上質な魔法糸で編まれた服。
「ありがとうございます、司令官殿」
「このタイミングでそう呼ぶのか、君は」
「はい、今はそう呼ばせていただきます。仕事場に、これ以上の私的感情を持ち込むのはふさわしくないと、私にもわかりますので」
すっと背を伸ばし、乱れた前髪を涼し気に直してみる。
横目にちらっと映ったアストラ様は、むすりと口を結んでいた。その姿がどうしようもなく幸せで、口元がむずむずして、必死で笑いそうになるのを耐える。
「なので、元気をいただいたお礼は、いつもの場所でさせてくださいね。もちろん、仕事でもお返ししますが」
笑えば、アストラ様は一瞬だけぽかんとして。ばっと顔を逸らしてしまわれた。でも、オクリース様の隣に戻る動作がぎこちなかったのは、拒否されているからじゃないのは理解できた。
あったかい空気。ネガティブな私でも、ここに満ちていると感じられるものは信じてみなよと、自分に言えるようになった、のかな。
「話を戻しますが、子爵以外の探し人に一つだけ心当たりがあります」
なんとか口角をあげて、笑えた。へらっと奇妙な顔つきな自覚はあるが。にやけを隠すのに必死なのだ。
「幼馴染のメミニが近く、彼女の父様についてフィオーレに来訪するのはお伝え済みです。明日うちに直接くる予定なんですけれど、サプライズ好きで方向音痴な彼女のことです。迷子になって、私のうちを聞いて回っているかもしれません」
自分で口にしながらも、噂になるほど聞きまわるわけないでしょと突っ込まざるを得ない可能性だ。ここは航海の予定が変わって、と言った方が説得力があったかな?
そして、一番問題なのは発言者の私自身が疑問に思っているのが、この三人にはバレバレなことだ。
「明日になれば、少なくとも可能性のひとつには直接尋ねられます。もし、メミニが噂の根源なら、彼女にはふんだんに料理の腕をふるってもらいますね!」
立ち上がった勢いのまま、大股で自分の仕事机に体を向ける。『花姫祭り』と書かれたファイルを数冊、『隊列案』の付箋がつけられた書類を腕に抱く。
その勢いのままソファーに戻り、本日中に決定すべき事項のページを開く。司令官殿と参謀長殿に決裁を了すべき書類を並べる。
「私的な話題にお時間を割いてしまい、申し訳ございませんでした。本日の議題は花姫の最終選考会場の警備についてですが――」
ぴりっとしまった空気に変わり、ひどく安堵した。




