道標 2
私の両親は、私という娘が授かったと知った時。それはそれは神様に感謝したという。
生まれてくる前に、両親は成長ストーリーを物語の様に話し合ったらしい。
いずれは、幸せな結婚を、と望んでくれていた。
だが、生まれた私が、瞳を開けた時。
両親は絶句した。
灰色の髪の毛に、まず落胆したというのに瞳が左右で違うオッドアイ。
「猫みたい……」
お手伝いの侍女が呟いたのが、その場に居た全員に聞こえていた。
そんな猫みたいな容姿に、成長してからすぐにコンプレックスを抱いた私。
そんな一人娘の容姿を厭わず、愛をくれ続けた両親には感謝しきれない。
けど、けど、だ。
親戚一同は、そんな娘とっとと孤児院の前にでも置いてきてしまえと言い続けた。
私自身、こんな容姿を持ち責められ続ける両親に申し訳なくて小さい頃お願いした事があった。
「ごめんなさい。お父様、お母様。私をどうか捨ててください」
そう言って、頭を深く下げた。
だが、次の瞬間。
私は両親にきつく抱き締められた。
「カティアを捨てる事は絶対にしない」
「で、でもお父様!」
「貴女は、私たちの宝物よ」
「お母様……」
私はそこで大きな声を上げて泣き出した。
今まで不安だった気持ちが、一気に解消され、溢れた。
私は此処に居ていいんだ。
そう思えた。
すくすくと私は成長して、年頃の娘となった。
そろそろ、結婚も考えなければならないのだ。
だが、こんな容姿で何処の貴族が娶ってくれるのだろう。
そんなカティアを嫁に。という話は意外にも舞い込んできた。
奇跡だ、私は思った。
今以上に、なけなしの美に磨きをかけようと努力した毎日だった。
いざ、お互いの顔見せの日がやってきた。
相手の貴族の男性の方が身分が高く、私は伏せていた瞳を怖々と開けた。
この方が私を嫁にと言ってくれたのだ。
一生、心身ともに支えたい……!
期待は次の瞬間打ちのめされた。
「こんな化け物嫁に出来るか!」
相手の男性は私を一目見るなり叫んだ。
散々、相手方に両親ともに罵倒されてその場は終わったのだった。
そんな結果だったが、次の見合い話が舞い込んできたのは一カ月もたたない内だった。
今度こそ、と意気込む私だったが……。
結果は似たようなもので、相手方は震えて母親に縋るマザコンだった。
ぴえーん、と泣き縋る息子を抱き締めながら、相手方の母親は私達家族を追い払った。
次こそ、とは、もう思えなかった……。
打ちひしがれる私を、両親は慰めてくれた。
だが、このままでは代々続いたお家が断続してしまう。
焦った両親は、怪しい商人に紹介されて金髪になるという毛染めの薬と、両目が同じ色になるという薬を、高額な値段で大量に、それは大量に購入してしまった。
最初は、素直に薬を飲んでた私だったが灰色の毛は、金髪になるどころか緑色の斑点が出来る状態に。
目の方は、効く訳もなく……。
却って足が一時麻痺する始末。
このままでは一生、車椅子生活だ。
と医者に言われて、また両親は治療に多額のお金を払った。
幸いに、足は動く程に戻ったのだったが、その裏ではさらにお金を払い続けてくれた両親が借金までしてくれていたと知ったのは、大分後の事だった……。
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