護身術を教えて下さい
新年明けましておめでとうございます。
久々投稿です。
※誤字、修正しました。1/4
それから数日が経った。
結局、二人とも核心をつく話はしなかった。
それからは色んな魔法を行使するようになった私に、オリジナルのものもあったせいか、レイシアが驚いているのは気分が良かった。
逆にレイシアに魔法を教えてもらったりしていた。
私は体を動かすのが好きだ。
普段は令嬢として過ごしていたので体を動かす機会もなかったが、魔法を使うようになって体を動かすことでスッキリした気持ちになる。
そうするとなんだか楽しくなってもっと俊敏に動けたら、しなやかな動きが出来たら、と目標がどんどん出来ていく。
ふと、魔法だけ頼っていいのかと思った。
私の魔法は精霊頼りのものだし、魔法を使うのであれば戦う場面なども出てくるかもしれない。
そんな時、身を守るにはどうすべきか。
私はレイシアにお願いをすることにした。
「というわけで、よろしくお願いします」
ぺこり、と頭を下げてからレイシアの顔を見れば、案の定彼は思いっきり顔を顰めていた。
「お前は自分が何を言っているのかわかってるのか」
「もちろんです」
「令嬢が戦い方を教えて欲しいだなんて」
「違います。護身術です」
「短剣を握りしめて?」
「もちろん、護身のための道具ですよ?」
にこりと笑えば、胡散臭そうな目を向けられた。
酷い。本当なのに。
「それで、なんで俺に頼む?」
「だってレイシア様なら戦い方を知ってらっしゃるでしょう?私に手加減なんてもの、しないでしょう?」
その返答にレイシアは眉を顰める。
違いますか、と私は不思議そうに首を傾げれば、違わないが、と答えが返ってくる。
ほら見たことか。
そんなことを心の中で呟くが、もちろん口には出せないのでにっこりと笑っておく。
嫌そうな顔をするレイシアに私は畳み掛けるように早口になる。
「レイシア様、日々魔法の向上に努めておりますが、私の魔法は特殊です。精霊頼りのものなのです。ある日突然精霊の気が変わってしまったら私はどうなるでしょう?一般の方と変わらない生活をするだけならいいですが、もし何か情報を持ってしまっていたら?私の精霊魔法に興味を持った方がいたら?私は身の安全を精霊魔法以外で守る術を知りません。ならば、自身で守るしかないのです」
胸の前で手を組み、お願いしますとレイシアへと懇願する。
思いっきり顔を顰められても私はやめない。
「そもそも令嬢なら周囲が守ってくれるだろう」
「それで守って頂けないかもしれないから言ってるのです!」
乙女ゲーのバッドエンドを思い出せばどれも周囲に守ってもらえそうなものはない。
一番いいバッドエンドは国外追放だ。
ただの令嬢なら野垂れ死ぬ可能性大だが、精霊魔法が使えるならどうとでもなるし、万が一使えなかったとしても自身の身を守れるのであればあとはなんとかしよう。
だけど、国外追放より暗殺か監禁の可能性が高い。
暗殺なんていつどこでどのように殺されるかわかんないし、どんな理由かなんてのもわからない。
乙女ゲーなら王子の刺客だが、もしそれ以外の人が私を気に食わないからって理由で排除しようとしてきたら、私は精霊魔法以外で対抗の術はない。
「守ってもらえないってどういうことだ?」
ハッと顔をあげる。
そこには怪訝な表情をしたレイシアがいて、私は失言をしたことに気付いた。
「いえ、その、いくら護衛の方がいたとしても精霊魔法を使える私にそこそこの実力者を送り込まれるのではないかという推測の上で、護衛の方が太刀打ち出来るのかと不安になりまして」
咄嗟の言い訳とは言え、頭をフル回転させて出した言葉は言ってからその通りだと自分で自分の言葉に納得する。
確かに精霊魔法は特殊で、そんな魔法を使う私をただの暗殺者に向かわせるとは考えにくい。
せめて魔法に対抗出来る者を差し向けるだろう。
魔法を封じられてしまえば私はただの小娘だ。
顔を顰めていたが、私の言葉に納得したようだった。
「……いいだろう」
その言葉に私は顔がパアアアと明るくなる。
「ありがとうございます!」
そんな私にレイシアはますます眉を顰めて、盛大な溜め息を吐いていた。
「護衛が負けた時点でお前に護身術を身に付けていたとしても、助かるかどうかは甚だ疑問だがな」
そんな嫌味を漏らしながら。




