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レイシアは意外と律儀

久々の投稿です。


「だが、もらった魔石分の協力はしてやるつもりだ」


レイシアの言葉に私はきょとん、とレイシアを見つめた。

何だ?と言いたげな顔をしている。

律儀だ。彼はとても律儀だ。

なんだかとても嬉しくなって、頬が緩む。

私を見て、一瞬目を瞠ったレイシアはふい、と横を向いた。

何故か顔を顰めているレイシアに私は首を傾げながら、お礼を言う。


「ありがとうございます。レイシア様の協力があれば私も更に魔法の向上が出来るでしょう」

「さっきの言葉を吐いた後とは思えんな」


呆れた顔をしながら、「で?」と話を戻される。


「私が魔法を使えなかったのは、精霊達に魔力を吸収されてしまうことが原因でした」


なるほど、納得した表情で頷くレイシア。


「それで、私の魔力を吸収しているなら精霊達にお願いをすればいいのではないかと思いまして」


私の言葉にレイシアは驚き、神妙に頷く。


「そうか。そういうことか。それで、精霊はお願いとやらを聞いてくれたのか?」

「はい。正確に伝えれば問題なく実行してくれます。曖昧なお願いですと大変な目に遭いますが」


ほーう、と興味深そうにこちらを見てくるが、私が口を開かないとわかるとそれ以上追求しようとはしてこなかった。


「魔法は使えるようになったということだな。どれ、見せてみろ」


私を見据えるレイシアに、まあそうなりますよね、と溜息を一つ漏らし、集中力を高める。


イメージを構築し、それを伝えるように魔力に乗せ、精霊に分け与える。


「!」


風が私とレイシアを持ち上げた。

驚きの表情をするレイシアに私は満足して、しかし綺麗に着地する部分にはちょっぴり不満を感じながら、私は聞く。


「どうです?」

「無詠唱か。まあ、詠唱しない魔術師もいるが、お前の年で考えるとすごいことだな。いや、精霊魔法はそういうものなのか?」


最初の私の時みたいに尻餅くらいついてよ。

私が鈍臭いのかな、なんて思いながら、レイシアの独り言を耳に入れる。


「精霊が見えずとも出来るのか?」

「え?精霊見えてますよ?」


ちらりと周りの精霊達を見回すも、レイシアは同じように私の視線を辿るのに、眉を顰めて「見えないが」と呟く。


「え?何故です?前と同じようにいますよ?」


寧ろ前よりもたくさんいるのに、と首を傾げるとレイシアはどこか納得した顔でいた。


「確かに、そう考えると前回が異常だったというわけか」


ふむ、と顎に手をあてながら考え込む仕草をして、こちらを向いた。


「何か心当たりは?」


前回、レイシアが精霊を見れた時と今回見れない、その違い。

心当たりはめっちゃある。

めちゃくちゃある。


けど、それは言ってもいいものだろうか。


「心当たり、ですか……」


考えているように呟き、レイシアを見遣る。

彼はじっとこちらを見ていた。


何故だろう。

彼の紫色の瞳で見つめられると、嘘を吐けない。

吐けないというよりは吐きたくない、という方が正しいだろうか。

全てを委ねて頼ってしまいたい気持ちになる。

彼の年齢にしてはあまりにも冷静で大人顔負けのような話し方をすることが原因かもしれない。

彼の雰囲気がそうさせるのかもしれない。

それとも彼の合理的で理論的な賢さが私に尊敬の念を抱かせるそれが、理由かもしれない。


「……ないです」


結局、嘘を吐いた。

だってここはまだ乙女ゲーに酷似した世界。

彼は攻略対象だ。

何がどうなるかなんてわからない。

私はその世界では悲惨な末路を辿る。

そうやすやすとこちらの手札を見せてはいけない。


「そうか」


レイシアは一言呟くと、そのまま口を閉じた。



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