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魔法力0の騎士  作者: 犬威
第2章 アルテア大陸
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side カナリア=ファンネル ~侵入~

続きです!

 

 トンネルの通路は人が一人通れるくらいの広さで、金属製の外装に守られ、崩壊しないような作りになっている。


 入ってきた場所から風がトンネル内に流れ込むようにヒューという音が響く。



 今までこの都市に住んでいたのに地下にこんなものができているなんて知らなかったわ…



 通路の高さ15cmの所は水が流れており、どうやら入り口にあった池から水が流れて込んでいるみたいね。


 正直足を取られそうで歩きずらかった。


 私は今、ドレスの裾を捲り上げて濡れないようにトンネルの内部を進んでいる。



 こんな格好じゃなかったらもっと早く進めたのに…



 自分の趣味がこんなところで厄介になるとは思ってもみなかった。



「大丈夫か?カナリア」



 前を先導して歩くトリシアさんが気遣ってくれているのだろう、私の歩くスピードに合わせてくれている。



「だ、大丈夫ですわ、それにしてもこんな場所があったなんて…」



 バシャバシャと音を鳴らし、転ばないように手を壁につけながら進むので、なかなか思ったように進めなくてとても(わずら)わしい。


 だけど、それ以上にこのトンネルを作り出した技術が、普通の物ではないことが進んで行くうちによくわかった。


 まず、金属の壁に繋ぎ目が一切見当たらず、内部がとても綺麗な作りになっている。



 この技術はいったいなんなの…



 少し考えていると前を歩くトリシアさんが悲しそうに(ささや)くように(つぶや)く。



「ここは姉さんの形見みたいな所だよ…」


「えっ?」



 風の音でうまく聞き取ることができなかったが、前を歩くトリシアさんの背中が寂しそうに見えた気がした。



「ようやく着いたな」



 人が一人通り抜けられる坑道は終わりを迎え、目前に飛び込んでくるのは大きくて広い、金属で(おお)われた空間。


 中央にある大きな箱に繋がるように無数の管が地上に伸びるように張り巡らされていた。


 トリシアさんが火のついたランプを掲げ、地図と照らし合わせている。



 まさかこの管がすべての家に繋がっているなんて…



 上を(あお)ぎ見れば、無数の管に眩暈(めまい)がしそうになる。



「地下牢はこっちだ、行くぞカナリア」


「は、はい」



 この広い空間に着くと水の流れは緩やかになっていて、比較的先ほどよりは辛くなく進むことができたおかげで、比較的早く目的の地点まで来ることができた。



「この上だな」



 トリシアさんはランプを(かか)げ、上を(あお)ぎ見る。



 ここから地上までは相当な高さですわよ… いったいどうやって行くというの!?



「カナリア、あまりこのことは内緒にしておくれよ」


「え、ええ、わかりました」



 トリシアさんは手を水面にかざし、言葉を紡ぐ。



「【土木操作】」



 たちまち水面から木が生えるように上へと伸びてゆき、天井まで到達するとそれは一つの階段となった。



「なに… これ…」


「説明は後でするよ、さあ行こうか」



 驚きを隠せない私を余所(よそ)に、トリシアさんはどんどん階段を上っていく。


 トリシアさんこんな奥の手を隠していたなんて…


 後を追うように私も登っていき、天井付近でぴたりとトリシアさんは止まった。



「エリアサイレンス!、コンセントレイト」



 範囲の音の消音と集中力強化、トリシアさんはどうやら上の音を感知しているようね…


 出てきた途端に見つかったら洒落にならないものね、さすがだわ。



「大丈夫みたいだ、これから地上に出る、カナリアは催眠(さいみん)の魔法は使えるか?」


「使えます」


「さすが魔導の天才と言われたカナリアだな」



 天才… ね…



「それを超える天才を助けに行くのはちょっとアレですけど」



 あっという間に超えられてしまったんだもの…



「フフ、先輩が助けてやらないとな」



 トリシアさんは少し微笑(ほほえ)んだ。

 ようやく笑った気がした。



「ええ、完璧に救い出してみせます」



 つられて思わず私も笑みが漏れる。



「ああ、必ず助け出そう、カナリアが催眠魔法(さいみんまほう)を使いつつ、私は道を作っていく」


「はい」


「【土木操作】」



 くりぬく様に穴を空け、素早く外に出ると、どうやら地下牢の食堂らしく、この時間は人が周りにいないようだ。


 私が出ると、すぐさま空いていた穴は閉じ、綺麗に塞がった。



 すごい力ね…



 ふとトリシアさんの方を見ると(ひたい)に汗をかき、息も少し上がっているようだった。



 あまり連発は魔力が厳しそうだわ…



 大きな力にはそれだけ膨大な魔力を消費するものがよくある。



 この能力もおそらくその手のものかしらね…



 手招きするトリシアさんの後を付いていく、音はエリアサイレンスのおかげで出てはいないが、見つかってはいけない為、緊張感が(ともな)う。


 地下牢のある場所は初めて来たが、黒塗りの壁にランプが至る所につけられていて、ほのかに薄暗い。


 しばらく中を歩くと壁を曲がるところでトリシアさんが私を呼ぶ。


 そこを(うかが)うとどうやら牢屋までの入り口に門番が2人いるようで、屈強そうなギガントの男が武器を手に鎮座していた。


 私は気づかれないように狙いを絞り魔法を紡ぐ。



「エリアハイスリープ」



 ガタリと声に気付いた男どもが立ち上がろうとしたが既に遅い。


 男たちは気絶するかのように崩れ、眠りに落ちた。



「時間はどれくらい持ちそうだ?」



 そう、この魔法には解けるまでの制限時間がある。



「もって… 5分ほどです」


「わかった、急ぐぞ」


「はい」



 眠っている男達の脇を通り抜け、牢屋が並んでいる場所を一つ一つ確認しながら走っていく。


 途中途中に巡回している騎士もエリアハイスリープで眠らせていく。



「クソッ、ここにもいない…」


「次、急ぎましょう」


「ああ」



 制限時間が差し迫ってきていた時だった。



「騎士… 団長…さんですか?」


「ようやく見つけた」



 好都合なことに4人(まと)まって牢に入れられていたのを発見。



 どうやらまだ捕まった期間が短かったおかげで、それぞれ振り分けられていなかったみたいね。



 皆の顔を見渡すとどことなく疲れてやつれているようにも見えた。


 ポケットからアルフレアから託された牢屋の鍵を取り出し、鍵を開ける。



「開いたわ、早くここから出るわよ」



 案の定セレス含め、他の者も魔力を遮断する腕輪を嵌められているみたい何とかしてあげたいけど…


 灰色のエルフの子を立ち上がらせ、トリシアさんは茶髪の女の子を担ぐ。



 どうやら茶髪の子の体力の消耗が激しいみたいで急がないといけない感じだわ…



「君も早く」


「一人で立てる、大丈夫だ」



 紫の髪のエルフの子はすっと立ち上がると頭をぺこりと下げ、後に続いていく。



「ありがとうございます… カナリアさん… そしてお願いです、パトラを助けてください」



 涙を目に貯めて、セレスは頭を下げる。


 そんなこと言われなくても大丈夫よ…



「まかせなさい! ここを出たらすぐに治療を…」


「カナリア、すまない… 悪い知らせだ」



 先に出ていたトリシアさんから声がかけられる。


 なんとなくわかっていた…


 そろそろ時間切れだっていうことを…



「さっきはよくもやってくれたな」


「逃がしはしない」



 先ほど眠らせていた門番のギガントの二人組が両手に武器を構え、私達の前に立ちふさがる。






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