33.ガストン
儂――ガストンは、メル市のすぐ西にある最初の村に向かった。
このあたりは人口の少ない村が多いので、兵士たちは手分けして複数の村を一度に探すことになっている。
儂は部隊長よろしくひとつの小隊を率いて、村に近づいた。村人たちは何事かと目を丸くしていたが、今のところ儂たちに抵抗する様子はない。
先程までいたメル市の様子、そして母親の様子から、この村に聖女はいないと予感した。しかし国の一大事であり、念には念を入れなければいけない。
「村長はいるか、話をしたい」
「はい」
すぐ、村長らしい剥げた爺さんが呼び出された。ぺこぺこ腰を下げている。
「軍が一体この村に何の用でしょうか?」
平身低頭だが、儂たちを恐れている。‥‥聖女ではなく、どちらかといえば徴発のほうか。
「安心しろ、この村から物をとるわけではない。聖女について聞きたいのだ」
「ちょっと、いきなりその単語をお出しになりますと‥!」
そばにいた兵士から注意されて、儂は我に返った。少し油断しすぎたか。しかし村長は態度を変えることもなく、「私は存じ上げませんが、メル市に現れるようですね」と言った。
「この村に、赤髪と金髪の少女はいるか?」
「へえ、赤髪が2人、金髪が4人いますよ」
村長は儂の目の前で村人に言いつけて、すぐ少女たちを集めた。確かに6人が全員、すぐ儂のもとに並んできた。その時点でこの村は外れだと悟った。
一応6人の姿を確認する。赤髪の2人はどちらも短髪かセミロングであった。金髪は‥‥確かに短髪はいるが、瞳の色がそれぞれ赤と茶色だった。顔立ちも明らかに違う。そして身長も、儂が見たものより低い。
「ほ、他には何か?」
「‥‥‥‥隠している人はいるか?」
この村は外れだが、調査する以上は徹底しないといけない。儂は義務感から聞いた。
儂に従順なふりをして隠していることはないだろうか。村人の家を捜索するのはできる限りやりたくないし、メル市から出発する時に将官からもやめるべきだと言われている。一刻を争う事態だというのに、本当に聖女がいる村で創作を拒否された時にどうすればいいのか‥‥それがもどかしかった。
「そんなことを言われましても、これで全員ですよ」
「頼む。これには国の生命がかかっているんだ」
儂は村長に頭を下げた。村長は困ったように間を置いて、「そこまでおっしゃるなら、家の中を見ていただいていいですよ」と返した。儂はしばらく考えてから、頭を上げた。
「‥‥‥‥いや、結構だ。調査は以上だ。ご協力、感謝する」
そうして儂たちは最初の村の調査を終えた。




