平小平【カミングアウト】
『蒼井企画では古参の芸人!! 漫才を組むのは30年ぶりだ!!』
『平小平の登場です!!』
「どうも平朝雄です」
七三分けで色白の60歳ほどの中年男性だ。垂れ目で唇が厚く、どこか陰気な感じがする。
黒いネクタイに白い背広を着ていた。
「どうも小平透です」
パンチパーマででっぷりと太った60歳ほどの中年男性だ。日焼けした肌にどっしりとした印象がある。ただし平より頭ひとつ低い。
こちらは白いネクタイに黒い背広を着ていた。
「「二人そろって平小平です」」
二人はぺこりと頭を下げた。
「いやー、君と漫才を組むのは何十年ぶりかねぇ」
「30年だよ。俺はお前が結婚をしたから、別れたんだよ」
小平の言葉に平はそっぽを向いた。どこかふてくされている感じがする。
「ぶはははは!! なんだいお前さん、焼きもちを焼いているのかい?」
「ふん、そんなものを焼くわけないだろう。サンマを焼いた方がましだ」
小平は腹を抱えながら豪快に笑っている。平は小平に背を向け、小石を蹴るような仕草をした。
それを見かねた小平は平に近づき、後ろから抱き着いた。平は目を見開き驚いた。
「馬鹿野郎! 人様の見ている前で抱き着く奴がいるか!!」
「ほほう、二人きりならいいのかね?」
激昂する平に対し、小平は余裕綽々で答えた。平は目を閉じ、口をつぐんだ。
「俺は見合い結婚をせざるを得なかったのさ。実家がうるさくてな」
「そんなに実家が大事なのか!! 俺がどれほど苦労したかわかっているのか!!」
「わかっているさ。女を殴る悪役に転身して、女優に嫌われていることにな」
「実際は演技だけどな。女優の方々には嫌うよう吹聴してもらったけどな」
平は小平を振りほどき、離れた。腕を組み独白する。
「ぶはははは!! お前さんは不器用な男だのう!! だがのう、俺は女房を抱かなかったのさ。代わりに養子を5人迎えて育てていたのだよ!!」
それを聞いた平は目を見開き、小平を見つめた。
「信じられるか!! お前は俺を捨てたんだ!! そんなお前の言葉など聞く耳持たん!!」
平は小平に対し右手で空手チョップをかました。しかし小平はそれを左手で受け止めた。
さらに平は蹴りを繰り出したが、小平は大仏のように動かず、藍ての蹴りをいなしていた。
平は息切れを起こし、肩で息をしていた。
「お前の愛、確かに受け取ったよ。俺の心が昔のように熱くなったぜ。ダルマストーブのようにな」
「透!!」
「朝雄!!」
二人は熱く抱擁した。観客席では万雷の拍手が起きた。
「って、なんで俺たちのプライバシーを暴露するんだよ!! 俺たちがゲイだってことばれたじゃないか!!」
「いや、お前さんがそうなるよう仕向けたんじゃないか。というか俺らって昔っからそっちの気があるって言われてたよな」
そう言ってスタッフが一枚のパネルを持ってきた。それは30年前の二人の姿だ。スマートでハンサムな平に、愛嬌のある丸顔の小平が写っていた。
「なぜか俺たちのヤオイ本が出てたんだよなぁ。不思議だぜ」
「まったくだな。おっとヤオイ本は昔のBL本のことですよ。皆さん知っていますか?」
小平が観客に振ると、知ってますと返答された。
「おいおい俺たちだけ知らなかったのかよ!!」
「世間の皆さんは割と鼻が利くもんだな」
「昔は衆道の契りとか言ってな」
「確かにな。でも俺たちは対等だよ。お前を女扱いしたことはないぜ」
「俺だってないぜ」
「ぼほほほほ!!」
「ぶはははは!!」
二人は大笑いした。
「「ありがとうございました!!」」
二人は頭を下げた。
cm。ヘイニーショップ。お酒はヘイニーショップに行こう。都内限定なら配達します。出演平小平。
snsの声。『平小平復活したね。昔からゲイ疑惑があったけどカミングアウトしたか』
『小平透は結婚しているけど奥さんは不妊症なんだよね。それでも友人のように付き合っているらしいな』
『平朝雄はB級俳優として有名だよね。女優に対しては子供のように扱っていたってさ』
ダテケンの声『平小平の復活は素直に嬉しい。ゲイカップルの噂は知っていたが、お笑いと関係ないからな。二人とも俳優として成功しているが何か違う感じがしたね。今回二人の漫才を見て、これだと思ったよ』
ヘイニーショップのモデルはリー・ヘイニーです。この人は 8回連続でMr. Olympiaを制覇した、最も成功したボディビルダーの一人とされています。
平朝雄。俳優の小池朝雄がモデルです。
小平透。俳優の大平透がモデルです。声優の方が有名だけど、サイコメトラーエイジに出演したことがあります。
本来小平透は裏返りのリバスに出演した俳優の一人でした。劇場版で漫才コンビにしました。




