ただいま不倫中【結婚しているのに】
「どうも、伴裕貴です」
七三分けで眼鏡をかけていた。ふっくらした愛嬌のある顔で、身体全体もふっくらしている50歳だ。
サラリーマンのような紺色の背広を着ていた。
「私は泉香菜です!! ただいま不倫中です!!」
伴より頭一つ低い20歳ほどの女性だ。ポニーテールで活発そうな美女だ。黒いパンツスーツを着ており、健康的に見える。
「君ぃ、不倫中と言わないでください。私とあなたはそんなただれた関係ではないのです」
「何を言っているんですか!! ぴちぴちギャルの私とラブラブなんですよ!!」
香菜は激怒した。伴は少し気まずそうな顔になっている。
「それに私たちは結婚しているんですよ!! 堂々とすればいいんです!!」
香菜は自慢げにぽんと右手で胸を叩いた。
「そうですけどねぇ、でも世間にばれたら私たちは非難されるんです、主に私が犯罪者扱いされるんですよ、ロリコンロリコンと近所の人に罵声を浴びせられるんです、つらいんですよ……」
「そういう輩は消火器でぶしゅーと吹き飛ばしてあげますよ!!」
伴ははかなげな声を上げているが、香菜は消火器を持つ仕草で、周囲を消化するように動いた。
「君ねぇ、そういう乱暴なことはだめですよ。暴行罪で逮捕されてしまいます。ああ、なんで私は君みたいな娘と籍を入れてしまったのだろう……」
「それは私が押し掛け女房だからですよ!! 私ダーリンみたいなふっくらした中年男性が好きなんです!! 毎晩成年漫画のようにベッドの上で、ぎったんぎったんダーリンの上で舟をこいでいます!!」
伴が右手を額に当てて嘆くと、香菜は船をこぐような仕草をした。
「君ねぇ、若い子がそんな品のないことをしちゃいけませんよ。親から教わらなかったのですか?」
「私はむしろ親から教わりました。なんですかさっきからうじうじと!! この若さに溢れた私と一緒になって嬉しくないんですか!!」
「嬉しいよ、嬉しいけども……」
詰め寄る香菜にたじたじの伴。すると伴は両手を握り、腰を落とした。そしてふんばるように気合を入れ始める。
そして一気に立ち上がった。その顔は太陽のように明るくなった。
「ええい、構うものか!! 私たちがイチヤラブして誰の迷惑がかかるものか!! よぉし香菜!! さっそくペアルックで街を歩こうじゃないか!!」
そう言って伴は背広を脱いだ。下には黒いTシャツを着ており、loveと書かれていた。
香菜も負けずに上着を脱ぐ。伴と同じTシャツを着ていた。
「じゃあさっそく人気のカフェで一つのジュースを二人で飲みましょう!! 周りに私たちのラブラブぶりを見せつけてやりましょう!!」
「ああ、もう遠慮はしない!! 私たちの愛を見せつけてやるんだ!! そして堂々と私たちは結婚しているんだと宣言してやる。周囲に何を言われたって知るものか!!」
「きゃー、その粋よ!! もうダーリンたら最高!!」
伴は香菜を抱きかかえて、ステージの上をぐるぐる回った。二人とも幸せそうな表情を浮かべている。
ひとしきり回った後二人はステージの上に立った。
「でも私たち不倫中じゃないよね。結婚しているのに」
「そうだね、むしろただいま不倫中と思われても仕方ないよ」
「じゃあ、服に結婚してますと記した方がいいかな」
「やめた方がいいな。罰ゲーム扱いされそうだよ」
「やっぱり普段は隠した方がいいね」
香菜の言葉に伴はうんとうなずいた。
「「ありがとうございました!!」」
CM:コロンボ結婚相談所。結婚相手を探したいならコロンボ結婚相談所にお任せを。出演ただいま不倫中。
『伴裕貴がひさしぶりにコンビ組んだな。前はこの人だけ目立ってた』
『泉香菜と組んでから歯車がぴったりと合った感じがするね』
『本当に夫婦だからね。フェミは激怒してたけど』
ダテケン『伴裕貴は俺と同じ天才だ。だが彼は漫才にこだわり、ピン芸人を目指すつもりはなかった。俳優業としてはサスペンスドラマの犯人役がはまり役になっていた。ドラマで百人を殺し続けてきた。それが自分の娘ほどの年齢の女性と出会い、漫才を開花させたのはさすがだった。』
コロンボ結婚相談所のモデルは、ボディビルダーの故フランク・コロンボから取りました。
ただいま不倫中のモデルは伴淳三郎と泉友子です。
映画アジャパー天国で主題歌を歌っていました。
下の名前は梶裕貴さんと花澤香菜さんです。




