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絶対無理と思っていた学園一の美少女と付き合い始めたら、何故か甘々な関係になりました  作者: 延野正行
第1章

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16/49

14時限目 お兄ちゃんの――。

2017年10月18日

タイトル「絶対無理と思っていた学園一の美少女【姫騎士】と付き合い始めたら、何故か甘々な関係になりました」変更しました。

度々申し訳ないm(_ _)m

「大久野くんの妹さん、なんですか!?」


 円卓の会議室で素っ頓狂な声を上げたのは、詩子さんだった。


 朝の騒動で円卓の兵隊さん達に取り押さえられたぼくの妹は、そのまま連行される。

 その後、厳しい取り調べを受け、すっかり灸を据えられた理采の処分は、円卓の長である会長に委ねられた。

 会長は人払いをし、ぼくと詩子さんを呼び出したのだ。


 ぼくは事情を話すと、詩子さんの絶叫につながったというわけである。


「す、すすすすすいません! 未来の旦那さんの妹さんをわたし――」


 詩子さん、落ち着いて。

 話が飛躍しすぎ!

 それにいつもの姫騎士無双も、理采にはまるで通じていないらしい。


「キャアアアアアアア!! 姫崎先輩だぁぁぁぁあああ!!」


 叫ぶや否や、目をピンク色にさせて近づこうとする。

 ギシギシと音を立て、円卓の人たちによって施された拘束から逃れようとしていた。

 今にも飛びかかって、靴を舐めさせてくださいといわんばかりに興奮している。


「姫崎先輩! 靴を舐めさせてください!!」


 本当に言うな!

 比喩でいってるのに。


「はっはっはっ。なかなか愉快な妹さんじゃないか。一体どうやって、こんな風に調教したんだい!」


「ぼくが吹き込んだみたいにいわないでもらえますか!!」


 そもそも妹が詩子さんのファンだと気づいたのは、今朝なのだ。

 もちろん、ぼくは混乱していた。


 今日、妹の部屋で見たもの。

 それは壁一面に貼られた詩子さんの写真だった。

 さらに熱烈な愛の言葉も書き殴られた紙もあって、もはやホラーの域に達していた。


「なるほど。そういう事情か」


 ぼくの心の声(モノローグ)から事情を察するのはやめてもらえませんか。


「同じことを2度も説明しなくて済むじゃないか?」

「微妙にメタい発言しないでください」

「大丈夫。君がいきなり心の声(モノローグ)に下ネタをぶっ込んできても、私は寛容な心で受け止めるつもりだよ」

「いいませんよ! そんなこと!」


 ぼくが会長と馬鹿なやりとりをしている間も、理采は腹を空かせた野犬のように息を切らし、詩子さんにねっとりとした視線を送っていた。

 その間に入ったのは、他ならぬ姉である会長だった。


「やあやあ、大久野くんの妹殿。私の名前は、姫崎亜沙央。この円卓の長にして、光乃城学園の生徒会長をしている。ついでにいうと、君が盛大に告白してくれた姫崎詩子君の姉だ。よろしくね」


「姫崎先輩のお姉さん……。じゃあ、つまり義姉さんですか!」


「う、うん。そっちの義姉さんはまだ気が早いと思うので、将来にとっておこうか」

「お願いします! 姫崎先輩と結婚させてください!」

「無垢な少女の願いを聞き届けてあげたいのは山々だが……」

「今なら、可愛い系の妹がついてきますよ!」



 …………………………………………………………………………………………。



「悪くないなあ」

「あっさりほだされないでください」


 一体、その長い()にどれほどの思考が巡ったのだろう。

 そもそも会長には、詩子さんっていう宇宙最強の美少女がいるというのに。


「いやあ、可愛い系の妹というのは、色々コンプしたくなるもんなんだよ!」


 トレーディングカードか!


 ぼくと会長が不毛なツッコミ合いしていると、詩子さんは言った。


「あの……大久野さん」


「どうか理采と! もしくは雌ブタとお呼びください、姫崎先輩。わたしもご主人様と呼ばせてもらっていいですか?」


「めんどくさいので、全却下でいいですか」


 詩子さんはどん引きしていた。

 少しぼくの方を見る。

 あれはきっと「妹さんにどんな教育をしているんですか?」という目だ。

 誤解なんだ、詩子さん。

 ぼくも今さっき知ったんだ。

 家でこんなモンスターが育っていたことを。


「実は、わたしとお兄さんは付き合っています」


 詩子さんは告白した。

 この世でぼくと詩子さん、会長、一部の関係者しか知らない事実を。

 ちょっとびっくりしたけど仕方がない。

 こうでも言わないと、理采の想いは止められそうにない。


「知ってますよ、我が兄が泥棒猫なのは」


 理采がぽつりと呟く。

 その一言に、ぼくたちは同時に目を剥いた。


 あと、前にもいったけど、その泥棒猫の使い方おかしくない?


「理采、いつから?」


「昨日……。夜中に手をつないでいるのを見た」


 あちゃー。

 見られていたのか。

 じゃあ、今日の唐突な告白は、ぼくと詩子さんの関係を知ったのが、トリガーになったのだろうか。自分の好きな人が、親族と付き合っているなら、焦る気持ちはわかるけど。


 気まずい雰囲気になる中、理采の大きな瞳は詩子さんを捉えた。


「あの……なんで、お兄ちゃんなんですか?」


「なんでって……」


「はっきりいって信じられません。控えめにいっても、顔はよくないし、胴長いのに、足は豚足だし、頭もよくありません。時々、豚の方が賢いんじゃないかって思う時があるし。全体的に豚にしか見えないんですよ」


 り、理采!

 控えめが控えめになってない。

 あと、豚を押しすぎ!

 いや、自覚はあるよ。

 確かにデブだよ。

 でも、なんか無理矢理「豚」っていおうとするのはやめよう。


 お兄ちゃん、泣いちゃうから。


「あとメンタル弱いし。すぐ泣くし。あと豚だし」


 謎の豚押しやめろ!


「お金だってありませんよ、うち。……一体何を企んでいるんですか。うちのお兄ちゃんをからかっているなら、今すぐ理采と――」


 マシンガンのように射出されていた理采の言葉が切れる。

 妹は詩子さんの顔を見ながら、表情をこわばらせていた。

 小さな肩がかすかに震えている。


「なんで笑っているんですか?」


 その通り、詩子さんは笑っていた。

 さぞかし恋人を馬鹿にされて怒っているのかと思いきや、穏やかに微笑んでいたのだ。

 思わず手を合わせたくなるほど、穏やかに……。


理采ちゃん(ヽヽヽヽヽ)、本当はお兄さんが好きなんですよね」


「な、なな! なんでそんな! 理采が好きなのは――!


「だって、さっきからお兄さんのことばかり心配してるじゃないですか?」


「ふえ!!」


 豆鉄砲をくらった鳩のように理采は固まる。


「それにいつもお兄さんにお弁当を作っているのは、理采さんだと聞きました」


「あ、あれは、自分の分と一緒に作ってるだけで」


「朝食からちゃんこ鍋が出てくるぐらい、気合いが入ってるっていってましたよ」


「なんでそんなこと――」


「お兄さんから聞いてます。すっごく働き者で助かってるって」


 理采はぼくの方を睨んだ。

 半泣きになりながら、「なんで余計なことを喋るの!」と目で訴えていた。


「本当はお兄さんがわたしに騙されているって思って、心配してるんじゃないですか?」


「なるほど」


 会長はポンと手を打つ。


「大久野くんと詩子が付き合っていることを知った理采ちゃんは、いても立ってもいられず、学園に乱入してきたというわけか。詩子の真意を聞くために」


 なんか無理ないですか、その推理。


「恋は盲目というじゃないか。過大な愛は時に真実の愛を見誤らせるものさ」


 会長が珍しくいいこといったような気がする。


「気がするんじゃない。事実、いいことをいったんだよ」


 得意げに鼻を鳴らした。

 ぼくは妹に向き直る。


「理采、本当か? 本当だったら誤解だ。お兄ちゃんと詩子さんは――」


「違う! 違うもん!」


 大きく頭を振り、妹は顔を上げる。

 その瞳は少し涙に滲んでいた。


「お兄ちゃんのぶたぁぁぁぁぁああああああああ!!」


 そこはせめて馬鹿だろぉぉぉおおお!!


 妹は教室を飛び出していく。

 てか、いつの間に拘束を解いたんだ。


 ともかく追いかけないと!


「やめたまえ、大久野くん。今は当事者間で話し合ってもこじれるだけだ」

「で、でも――」

「妹を思う気持ちはわかるが、ここは私に任せたまえ。悪いようにはしないから」


 会長が……?


「なんだ、その猜疑心に満ち満ちた目は」

「べ、別にぃ……」

「いつかの女優じゃあるまいし。そもそもこういうことはな。同性同士、腹を割って話した方がいいと思うのだ」


 一理あるけど、やっぱり不安だ。


「大丈夫ですよ、帝斗くん。お姉ちゃんは、詐欺師で、狡猾で、悪魔みたいなクズ野郎ですけど、場を整えるという点では天才ですだから」


 さらっと真顔で、実の姉をディスらないで下さい、詩子さん。

 そんなこというと、会長が地の底まで落ち込んじゃいますよ。


 ずぅぅうう~~~~んん……。


 ああ! 会長が廊下の隅で三角座りしながら、1人で〇×ゲームを始めちゃった!


「と、ともかくだ。妹さんに2人の関係がばれたのは、我々円卓と、姫崎家の失態でもある。大船に乗った気持ちで任せてくれたまえ」


 会長はドンと大きな胸を叩くのだった。



 ◇◇◇◇◇



 家に戻ると、理采が帰ってきていた。

 それどころかダイニングの方から良い匂いが漂ってくる。

 おそらく理采の十八番料理の1つ「豚肉と秋野菜カレー」だろ。


 靴をポンと脱ぎ散らかし、早速ぼくはダイニングに進んだ。

 エプロン姿の理采が、カレーの味見をしていた。


「あ。おかえり、お兄ちゃん」

「うん。ただいま、理采」

「もうすぐ出来るから、ちょっと待っててね」


 満足そうに微笑む。

 やがて、御飯とカレーがてんこ盛りの皿をテーブルに並べた。

 まるでエッフェル塔のように盛り付けられたカレーを見ながら、ぼくはホッとする。


 ああ、いつもの理采だ。


 ぼくを肥え太らせることに躊躇のない妹の姿があった。


「どうしたの、お兄ちゃん」

「なんでもない。部屋に鞄を置いて、着替えてくる」


 ぼくは申告通り、鞄を置き、部屋着に着替える。

 ダイニングに戻ると、あのエッフェル塔カレーと対峙した。


「「いただきます」」


 ともに手を合わせ、声を重ねる。

 早速スプーンで掬った。

 美味い。

 やっぱり、ぼくの妹が作るカレーは最高だった。


 すると、理采は唐突にスプーンを置く。


「今日はごめんね」


 やや俯き加減に、謝罪を口にした。

 ぼくは首を振る。


「いいよ。お兄ちゃんこそごめん。心配させて」


「お兄ちゃんが謝ることない。理采が悪いの」


 沈痛な表情を崩さない。

 ぼくもまたスプーンを置いた。


「詩子さんと話してみて、どうだった?」

「え? うん。すっごい素敵な人だったよ!」

「理采は今も、詩子さんのことが好きなんだよね」

「う、うん。もちろん……」

「良かった」


 ぼくは笑った。

 対して理采はキョトンとする。


「ぼくは嬉しいんだ」


「え?」


「自分の妹が、同じ人を好きになってくれたことが……」


「お兄ちゃん……」


「兄妹で同じ人を好きになったんだ。それは多分、運命だと思う。だから、理采が好きな人は、お兄ちゃんの恋人だけど、それでも詩子さんとは仲良くしてほしい。ダメかな?」


「あのね。お兄ちゃん!」


 理采の声には、何か切実なものを感じた。

 やはり辛いのだろうか。

 だよな。

 ぼくも逆の立場なら……。


「理采ね。考えを改めたの。理采は、もう……。詩子さんの恋人になるのを諦める」


「い、いいの? それで」


「だから、お兄ちゃんは詩子さんを幸せにしてね」


「うん。もちろん……」



「結婚して、この家に3人で暮らしましょう」



 …………へ?


「そしたら、理采は詩子さんの小姑ってことでしょ! つまり、詩子さんを思うがままにすることが出来るってことじゃない!」


 ちょっと待って!

 小姑って、そんな奴隷商人みたいな権利ないからね。


「その時にはお兄ちゃんは、社会人になって会社にいってるから……。真っ昼間から詩子さんのあれをあーして、げへへへへ……」


 完全にうちの妹がエロ親父になっているんだが!

 誰だよ、理采に変なことを吹き込んだのは!!


「え? 会長さんだけど……」


 生徒か――いや、姫崎亜沙央ぉぉおおおおおおおお!!

 おぼえてろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!


夜集計でジャンル別4位でした。

でも、まだ頑張って更新します。

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よろしくお願いします。

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