第2話(累計 第92話) ダムガール、メイドと毎度のギャグ問答をする。
「ふぅ。今日もいっぱい仕事しましたわぁ」
「アミちゃん姫さま、お疲れさまでした。しかし、姫さま直々の工事。やはり姫さまが現場監督や作業をしなきゃ、まだ工事は無理なんですか?」
魔族国家からの避難民が多く住む街、コンビットスに設置されたティオさまとわたし専用の別宅。
護岸工事の現場からそこに帰還したわたし。
格納庫にゴーレムを収納した後、専属側仕えヨハナちゃんからお茶いりのコップを貰う。
「そうですわねぇ。今回はソイルセメントという新工法を使っていますので、しばらくは見本をわたくしが直接見せた方がいいでしょう。この工法は道路整備にも使えますですし。土嚢で固めた上にソイルセメントで舗装すれば、魔導トラックによる流通活動にも充分耐えられる立派な道路になりますから」
わたしはお茶で喉を潤い、ヨハナちゃんに汗をタオルで拭ってもらいながら、自分が現場にいなきゃならない理由を説明する。
「といいつつ、実は現場で働くのはお好きなのでしょ、アミちゃんは? 書類仕事が苦手とお聞きしていますしぃ」
「ゔ! そ、それは……」
心の中を当てられ、わたしは思わずお茶を口から噴き出しそうになる。
……だって、わたし。現場の空気が好きなんだもん! 前世でも、現場のおっちゃんらと仲良くなって、休憩時間中に色々お話したの。
「やっぱりですか。まあ、今はイグナティオさまが事務関係を成されてますから、アミちゃんはインフラや工業プラントの構築に力を入れて下されば問題無いです。イグナティオさまも、アミちゃんには思うように行動させて置けばいいと許可を得てます。もちろん、それにも限度はありますけど?」
「わ、分かりました。もう見ていなくても大丈夫と判断次第、自分からゴーレムで工事するのは辞めますの」
ヨハナちゃんのツッコミは毎度鋭い。
お父さまからだけでなく、ティオさまからもわたしの監督を命じられており、正直わたしとヨハナちゃん、どちらが主従か分からなくなることもある。
……というか、わたしが世間一般の貴族令嬢の範疇に入らないのが問題なのよねぇ。もう止まらないけど。
「別に完全に辞めなくてもいいですよ。気分転換にお外でお仕事するのもいいですし、アミちゃんと一緒にお仕事するのは周囲からも好評なんですよ。オークの方々からもアミちゃんと是非一緒にお仕事したいと聞いてますよ」
「それは光栄だわ。魔族の皆さんとも仲良く暮らすのに、同じ釜の飯を食べて一緒に仕事するのは必要だとわたくしは思ってますの。奪いあって悲しみを増やすよりも、何かを共に作り上げて喜ばれる方が気分いいに決まってますもん」
最初は殺される危険性もあって、おどおどと只人族に遠慮していた魔族国家の避難民。
最近では仕事後、只人族やドワーフ族の人達と共に酒場で盛り上がっている姿も見受けられるようになった。
オークの若者やゴブリンのおじさん、そして只人族の人たちが同じテーブルを囲んで仲良く酒を呑む。
……とっても幸せで素晴らしい世界なの。
「そこはアタシも理解します。アミちゃんと一緒に仕事してますと、固定概念に凝り固まることがどれだけ愚かな行為だと思いますもの」
「でしょでしょ。だから……」
「と申しましても、アミちゃん。いえ、アミータ姫さまはヴァデリア伯爵アヴェーナ家の令嬢であり陛下より認められました女騎士さま、更にはヴォルヴィリア公爵イグナティオさまの婚約者であられます。状況に応じて、ちゃんと貴族令嬢らしい行動もお願い致しますね」
「はーい。気を付けますわ」
実にありがたい指摘。
どうしても欲望のままに暴走するわたしではあるが、その欲望を押し通すためには権力や政治力、資金力などを上手く使う必要がある。
なれば、TPOに合わせ時には貴族令嬢。
姫たる姿を周囲に見せる必要もあるのだろう。
「まあ、残念なことですが既に手遅れ。アミちゃんは王国内でも『泥かぶり』姫さまで有名なので、ここぞというタイミングでビシっと成されたらいいと思いますわ」
「ぐぬぬぅ。言い返せる言葉が無いですわぁぁ。わたくし、やり過ぎましたか?」
「はい。なので、アミちゃん姫さまは、このままお進みくださいませ。アタシや周囲が取り繕い、もといフォローしますので」
毎度の主従ギャグを繰り返すわたしとヨハナちゃん。
しかし、お互いに笑みを浮かべ、世界をより良い方向へ歩みを共にする仲間。
「わたくし、良き仲間に恵まれましたのね」
「だって、アタシはアミちゃんに命を救ってもらい、様々なモノを与えて頂きました。なれば、アタシの命はアミータ姫さまに与えられたと同意。一生お仕えするのはあたり前ですよ」
着替えを手伝ってもらう間、わたしとヨハナちゃんは更に色々と語り合った。
◆ ◇ ◆ ◇
「アミータお姉さま、本日もお疲れさまでした」
「いえいえ、リナちゃんもお疲れさまですわ。市内視察、いつも大変ですね」
夕食時、わたしはゴブリン族の姫リナちゃんと共に食卓を囲む。
大地震時、一時王都にある我が屋に避難していたリナちゃん達ゴブリン組。
災害対策が落ち着いたころ、まだ学校が再開する見込みがない事から陛下の許可をもらい、公爵領。
魔族が多く住む街、コンビットスへと移り住んだ。
……魔族らを取りまとめ、王国との橋渡しの役目をリナちゃんへと頼んだの。弟君であられるティオさまの領地内というのも安心材料よね。
王都内に善良で賢き姫であれゴブリンを住まわせているより、同族が多く住み陛下が最も信用するティオさまの元で「管理」する方が間違いも起きにくいとの政治的判断なのは、わたしにも理解できる。
「魔族と只人の皆が幸せそうにしているのを見るのですから、嬉しい事はあっても疲れる事はありませんですわ。それよりお姉さまは、毎日のインフラ工事、大変かと思いますの」
「こちらこそ、大好きな土木工事を好んでやってますので、疲れませんですの。ゴブリン族の親方さんとも仲良くなりましたわ」
今日もリナちゃんとは夕食を囲みながら、お互いの情報交換を行う。
魔族との共存モデルケース、コンビットス。
この街を発展させ、更には魔族国家との戦争時には拠点として使えるようにする。
それが、わたしの願いであり、リナちゃんの思いでもある。
共に願うのは戦争から、どうやって民を守るのか。
まだまだ、わたしは立ち止まってなんていられない。
……魔王、絶対にわたしは負けないよ!




