第46話(累計 第90話) ダムガール、運命にあらがう!!
「何故なら、記憶には幾つもの分岐点があり、そこには必ず『BAⅮ END』。ゲームオーバーの表記があるんです」
わたしの言葉に、ティオさまは可愛い顔のまま。
首をかしげる。
「ゲームオーバー?? それは、一体どういう意味ですか?」
「物語の終わり。登場人物の敗北による終焉ですわ、ティオさま。といっても分からないですわよね。ゲームという物語。それは読者。物語を読む人が登場人物を操る事で遊び、話を進めていくものですの」
……ゲームという概念。遊ぶというというのは伝えやすいけど、物語を遊ぶというのを伝えるのは難しいわ。
「分かったような、分からないような……。で、この世界が誰かの遊ぶ舞台だとおっしゃるのですか、アミお姉さま?」
「わたくしの前世世界。そちらでは誰もが文字を読み書きでき、あまつさえ多くの人々が自分で物語を紡いできました。中にはわたくしが説明したゲーム形式。自ら登場人物となり、物語世界で生きていくものもありました。この世界もその一つだったのでしょう」
わたしは世界背景から説明する。
まだ識字率が高くない世界から見れば、誰もが文字を読み書きできるだけでなく、物語を作るというのは想像も絶する事だろう。
……そして、誰もがインターネットを通じて世界へ自分が紡いだ物語を公開できるのは凄い事だよね。
「ボクには理解しかねる世界です……。でも、ボクたちは自分の意思で生きています。お姉さんを愛するこの思いは偽物では無いはず!」
「はい。その通り。わたくしが。ううん、わたしがティオさまを愛している思いも偽物じゃないです。で、この世界を作った創造者。誰かは本来の『わたくし』を悪役。主人公エリーザの敵になる存在として設定、運命づけていたんです」
わたしは本題を語る。
本来のアミータは悪役令嬢としてエリーザと戦う存在だったと。
「では、お姉さんは知ってしまった運命にあらがったのですね」
「はい。そんなのまっぴらごめんですもの。わたしは、ティオさまやエリーザ。ヨハナちゃんやドゥーナちゃん。リナちゃん。ジュリエッタちゃん。他にもたくさんの人々と笑いながら生きていきたいんです。フラグなんて全部踏み倒してやるの。そして、ダムを作るんです!」
わたしは思いを全てティオさまに話す。
運命なんて、自分の行動で変えられる。
死亡フラグなんて、ぼっきり折って幸せになってやると。
「ふふふ。実にお姉さんらしい言葉ですね。ボク、安心しました。ボクの思いは偽物じゃないし、お姉さんはボクが大好きなお姉さんでした。二人頑張れば、世界をより良いモノ。笑顔でいっぱいに変えられるのが分かりましたから」
「ありがとうございます、ティオさま。わたし、決めました。運命を変えるのは、まだ怖いです。血が再び流れる事もあるかもしれません。でも、ティオさまと一緒にずっと笑っていたいんです。だから、これからも前に進む。私が願う世界に変えていくために、力を使いますわ」
……泥だけじゃなく、血に汚れたって、わたし。もう足を止めないわ。どんな運命にだって立ち向かってみせるの。魔王だろうが、魔神だろうが、邪神だろうが。わたしがぶっ飛ばして土下座させちゃうわ。
「うん。ボクもお姉さんと一緒に歩むために、頑張るよ。あ、それでお姉さんは地震が魔王が起こしたかもと言ってたんだね。妙に具体的だったし」
「はい。本来の『わたくし』が起こす『未来』は時折、夢の形で見ます。そこでは、わたくしに追い詰められた魔王が新たなる力を求め、贄として異世界の魔神を召喚した際に大地震を起こしていました。これはかなりのリスクを産むらしく、魔王も自ら望んでの行動ではなかったそうです」
……今回は何が魔王にあったんだろう? リナちゃんが広めた噂で魔族国家内に反乱でも起きたのかしら?
それから、夜が更ける中。
わたしたちは、これまでの事。
これからの事を語りあった。
「ティオさま。アミータはずっと貴方さまと一緒です」
「アミお姉さん。ボクもお姉さんと共に人生を歩みます」
将来を誓い合った二人。
何回もキスをし、お互いに抱き合い。
命の暖かさを感じながら眠りについた。
……もう少しでティオさまの純潔を奪いそうになったのは、ナイショ。だって、ティオさまったら、わたしの身体いっぱい触るんだもん。
◆ ◇ ◆ ◇
地震で発生した火災により全てが焼け野原となった魔族国家首都。
死の大地となった中、ただ一つ残った建築物。
ねじくれた塔と歪んだ柱で構築された黒き城。
そんな魔王城の最奥。
漆黒の謁見室、松明の炎がゆらりと揺らめく。
「ふははは! これで、もう余を害するものは存在しなくなったぞ!」
「ぎょ、御意にございます、魔王閣下」
異界の邪神の似姿を写し捕った玉座に座りし黒髪、黒い目の細身な只人族青年。
青年は以前よりもさらに強い妖気を放ち、目の前にひれ伏す魔神官を圧倒する。
「竜人の残党どもめ、余に反乱などをするとは不届き千万! ゴブリンどもの世迷言に騙されおって! ダークエルフの生き残りも反逆を企てるとは実に許せん」
「す、全てはゴブリン族の王が原因でございます。アヤツの娘が只人族に可愛がられた事が切っ掛け。強き者、魔王閣下こそが世界を支配するべき存在であるのに、平和がどうとか、優しさがどうとか。小娘が放った妙な甘言を国内に広げ、内乱を引き起こしたのは許せぬ事でございます」
魔王は己に反乱を起こした者達に対する怒りを隠さない。
魔族国家内でも依然強大な力を持っていた種族、竜人。
人型になった竜とも呼ばれている。
「魔族ともあろうものが、小娘の甘っちょろい言葉に絆され騙されおって! 余がトカゲモドキに倒されるとでも思うたか。余はいかなる犠牲、リスクを払ってでも生き延びる。そして、最強となるのだ!!」
「はっ! それでこそ、我らが魔王閣下でございます。魔神さえも喰らって強くなられた貴方さまに敵は存在しません」
魔王は、尚も押さえきれぬ強大な妖気を周囲に放つ。
自らこそ、無敵であると。
「ふははは! もうあてにならぬ者どもの力など借りぬ。余は運命とやらに打ち勝つ。聖女などには絶対に討たれぬのだ。必ず余は打ち勝ち、このバカげた世界を作り上げただろう創造神にすら抗おう! 余はオマエのオモチャなどでは無いと」
己の運命。
本来の『未来』では、聖女に撃たれることを既に知っているかのように語る魔王。
アミータ同様に自ら動き、運命に抗うと宣言する。
「はい、閣下。その為にも今は時間稼ぎが必要かと思われます。せんだっての地震により、国内は被害甚大。幸い、反乱軍も被害を受け動きが止まっておりますが、こちらから只人どもの国に攻め込むには何もかもが足りませぬ」
しかし、魔王が強くなるために『贄』を呼び込んだ反動。
大地震により、魔族国家内でも被害は甚大。
反乱軍を鎮圧できても、只人の国。
主力部隊が王国へ攻めいる程の余裕はない。
「では、この原因を作り上げたゴブリン王を使おうではないか。あのような弱小部族など我らには必要無い」
「御意。では、そのように致します。愚かなゴブリン王グリシュ。アヤツはダークエルフ族を多く配下に持ち、あまつさえ后にさえしております。ダークエルフ族の処分を行う上でも好都合かと」
魔族国家内で、新たな動きが始まる。
アミータの慈悲が巻き起こした「蝶の羽ばたき」。
その小さな、しかし優しく強い風が何を起こすのか。
それは、まだ誰も知らない。
(第2部 完結)
第3部ですが、しばしお休みを頂き6月中旬より再開します。
では、まだまだ続くダムガール、アミータちゃんの物語。
お楽しみを!




