第40話(累計 第84話) ダムガール、街道で道路工事をする。
「アミちゃん姫さま。今日はお疲れさまでした」
「アミ姫さま、タロス号ですが早速メンテをしておきますね」
わたしが街道工事を始めた初日。
王都から最初の宿場村まで修復をしながら北へ移動。
大体、一日で三十キロ進むのがやっと。
……これでも、随分と早いとは思うけどね。普通に整備された街道を徒歩で進むのは一日三十キロくらい。魔導自動車もゴーレムも時速三十キロくらいだせるから、本当なら一時間で移動できる範囲なの。
土砂崩れしていた箇所をシャベルで整地、倒木を取り除く。
地割れ部分には石灰入りの土を詰め込んで、ゴーレムの腕で叩く。
「ありがとう、二人とも。この村の被害もそこそこ酷かったから、倒壊家屋を取り除けたのも良かったわ。命があるうちに助けたかったけど……」
……初日に助けられたら、間に合って命があったのかな。ああ、わたしは無力だわ。
夕方前に宿場村に到着したわたし達。
まだ復興どころか倒壊建物や瓦礫が多い村で、救助活動やトイレ作りを行った。
……井戸から遠い場所に穴を掘って、枯草や落ち葉を混ぜる好気性発酵型トイレを作ったの。災害時にトイレをちゃんとしないと、病気が起きちゃうから。
暗くなる前に瓦礫の下から村人を数名救助をしたが、残念ながら全員既に死亡していた。
「ごめんなさい、皆さま。もっと早く助けに来られていたら……」
「いえ。姫さまのおかげで彼らもお墓で眠れます。村を代表して感謝します。ありがとうございました」
間に合わなかったのに関わらず、被害者の家族や村長らからわたし達は感謝された。
人力ではどうにもならなかった上に、王都からも救助の手が遅れていたから。
「王都に連絡をしておきますので、明日以降に救援が来るかと思います、村長さん。わたくし、明日以降も街道を修復していきます。そうすれば、この村は救助隊にとって大事な中継点になりますので」
「はい。ありがとうございます、アミータ姫さま。うら若くお美しい令嬢さまでありながら、民を救われる。噂通りの姫さまですね」
「ええ! アミちゃん姫さまは、『泥かぶり』姫さま! 泥を被りその身が汚れてでも民を救う英雄なのです!!」
夕闇が迫る中、村長さんや村の人々から感謝され、ダメ押しにヨハナちゃんからも褒められる。
「もー。恥ずかしいです。さあ、みんなでご飯にしましょう。ヨハナ、炊き出しの準備をです。わたくしも手伝いましょう!」
「はいですぅ」
わたしは、村人たちの輪の中に入っていった。
◆ ◇ ◆ ◇
「お父さま、ご無事で何よりです」
「アミータが耐震化とやらをしてくれていたおかげだよ。街中も同じように戦災から復興していたから、地震被害は少なかったし」
街道を修復しながら北へ進んでいったわたし達。
五日ほどかけて伯爵領の中心まで進み、ようやく懐かしき我が家にたどり着いた。
「わたくしの知識で、少しでも民が救えたのなら嬉しいですわ」
「今になれば、最初はどうしてと思っていたことも全て理にかなっていた訳だ。異界の知識と聞くが、アミータには今後とも世界を救ってほしい」
「はいですわ、お父さま」
わたしは、自分の行動が認められて嬉しくなった。
……でも、まだ今回の被害を全て修繕できたわけじゃないしね。もっと、頑張るわ!
「良かったですわね、アミちゃん姫さま」
「ええ、ヨハナちゃん」
「ヨハナ、アミータを頼むぞ。何せ、この暴走台風。放置したら何をしでかすか分からんからなぁ」
お父さまとの久方ぶりの面会は、とても楽しいものだった。
「で、こちらにはいつまで居られそうなのかな?」
「各種物資の補充とゴーレムの修是。そして整備員や工兵隊の休養を考えれば、四、五日以内には出立したいと思います。まだ、公爵領は遠いですもの」
……タロス号も、かなり使い込んだものね。橋が落ちていた場所では、川の中にも入ったし。今日明日中に本格メンテしてもらえばいいかな。ウチの領都は被害も少ないし。
「そうか。では、しばし休むと良いよ。お前には一応伝えておくが、公爵領との境付近で地震以降、山賊が現れていて村々が襲われ女子供らが誘拐されたという報告を受けている。こちらとしても何とかしたいのだが、復興に忙しく兵が回せない。一応、辺境の村には警告をしているが、道中気を付けるように」
「はい。分かりました、お父さま。発見次第、山賊を成敗して人質を救いますわ!」
お父さまの追加情報によれば、火事場泥棒ならぬ地震山賊が洗わている様だ。
なれば、遭遇しだい無力化して土下座させるに限る。
「どうして、そうなるかなぁ。お前に何かあれば……」
「御屋形さま。アミちゃん姫さまは、不幸を見過ごせない質。山賊に領民が襲われているのを知れば、成敗するでしょう。それに、これまでのパターンからすれば『お約束』なので」
「ええ、ヨハナちゃん。明らかに遭遇戦『フラグ』が立ってますの。早速、ドゥーナちゃんたちと武装もチェックしないと、拳銃だけでじゃ不安だから、リボルディング・ライフルも準備ね」
お父さまは心配そうな顔で、わたしに山賊討伐をしなくてというが、そういう訳にも行かない。
ヨハナちゃんが言うとり、目の前の不幸を知ってしまえば、無視できないのがわたしの性分。
お約束であり、フラグであろうから、容赦なく敵は殲滅するに限るのだ。
「い、一体、お前たちは何を話しているんだ?」
「ということで、ヨハナちゃん。拳銃の練習はしてる?」
「遠くからでは上手く的に当たらないです。その分、ルキウスさまに接近戦用の歩法を教えて頂きましたので、当たるまで近づいて撃ちますね」
お父さまが混乱しているなか、わたしとヨハナちゃんは襲われた時の戦い方を相談した。




