第38話(累計 第82話) ダムガール、陛下と再度会談をする。
「ティオ、今朝までとは顔色が随分と違うな。それに表情も柔らかくなった。アミータ嬢、我が弟を救ってくださり、感謝します」
「へ、陛下。わたくし、陛下に感謝されるような事はしておりません。ただ、ティオさまと一緒に添い寝をしただけ。もちろん、如何わしい行為は全く行っておりませんので、ティオさまの純潔は大丈夫でございます」
ゆっくり休んだティオさまとわたし。
アポをとって陛下に会いに行き、小さな歓談室で面会をしている。
……陛下の側には、見慣れた老齢の側仕えというか執事さんのみ。わたし側にはファフさんとヨハナちゃんだけ。部屋の中には六人しか居ないのは、ティオさまが王弟ぎみであられるのもあるのかな? 誰も陛下に危害を加える筈ないし。わたしとしても、秘密が漏れなくて確かるわ。
「余。いや、私としては別にアミータ嬢とティオが結ばれて欲しいので、アミータ嬢から襲ってもらってもいいのだが……。あ、冗談だって。怒るんじゃない、ティオ」
「兄上! この非常事態にボクとアミお姉さんで遊ばないで下さいませ!」
「うふふ、御兄弟が仲良くて実に宜しいですわ」
陛下も王都の状況は落ち着いて余裕が出てきたのか、ティオさまを揶揄うのが微笑ましい。
わたしも、笑みを思わず浮かべてしまう。
「さて、余人を交わさずの話。アミータ嬢には手加減なしに情報提示をしてほしい。この執事は口が堅く信用置ける。アミータ嬢に提案してもらったワイバーン航空騎兵による被害地偵察、おかげで早期に各地の情報入手が出来て非常に助かった」
「それは何よりです、陛下。わたくしも情報が欲しいのですが、少々お聞きしてよろしいでしょうか?」
「アミお姉さん。先程、今回の地震の裏に魔王がいると話していましたが、それに関係する事ですか?」
陛下、他所行き、王としての顔では無く、ティオさまの兄としてわたしに話を聞きたがる。
わたしの提案が災害対策に効果あったのと、兄としてティオさまのパートナーにわたしの事を認めてくれたのだろう。
「ええ、ティオさま。陛下、今回の地震ですが北側、魔族国家との国境に近い程揺れが大きくて被害が多くないですか?」
「その通りです、アミータ嬢。貴方が、そう推理した根拠でもありますか?」
「まさか、魔族国家が地震を起こしたのですか、お姉さん?」
……やっぱりなのね。となれば、魔王の動きが油断ならないの。直ぐには動かないと思うけど。
私の推理通り、北に向かうほど地震被害が大きくなっている様だ。
なら、次の策も急がないといけない。
「まだ確証がある情報ではないのですが、魔王閣下が魔族国家内で何かをした副作用で地震が起きた可能性があるんです。元々、この地では超古代の地殻変動で国境の高い山脈が生まれており、地面の裂け目たる『断層』。そして数万年単位での地面、『地殻プレート』の動きがあるのですが、それを刺激して起きたのが今回の地震と思われます」
……前世世界、日本列島が生まれたのも多くの地殻プレートの動きが重なって出来たって前世世界の地学で習ったの。耐震を考えるのに地震を知るの当たり前だから。
「よくは分からぬが、アミータ嬢がそう思うのなら可能性は否定できぬな。もしかしてアミータ嬢は地震が起きるという確証が以前からあって行動していたのか? 確かに北方程被害が大きいのだが、国境地帯のティオの公爵領。そして隣り合うアミータ嬢の実家たる伯爵領では被害が少ないと報告を受けている」
「それは、たまたま。偶然ですわ。わたくしが『夢の世界』で習った建築法の基本に耐震。地震対策が最初から盛り込まれているんです。その為に、わたくしが企画した建物は地震に強いはず。『夢の世界』でわたくしが生まれ育った国は、毎日何処かで地震が起きる国でしたので。百年周期でなら、今回以上の地震が幾度も起きてますし」
「なんだと!??」
「毎日、地震!? それに百年周期って?? いったい、どんな国なんですか、お姉さん??」
わたしが日本の地震について語ると、陛下もティオさまも驚く。
前世世界においても、日本の地震については世界の『非常識』ではあったが。
「その上に、昨年起きました洪水レベルの大雨も、毎年恒例のイベント。なので、土木技術やインフラ構築能力がとことん進歩してました。今になって考えれば不思議な国ですよね。その分、自然の恵みが大きくて、今の王国と同じくらいの面積で二十倍以上の国民が住んでました」
……日本の降水量ってヨーロッパの倍以上だものね。だから、稲作で古代から人口維持できていたの。
「想像も絶する世界ですねぇ。アミお姉さんの前世って」
「……なるほど。アミータ嬢の高度な知識と技術。その出どころが理解できた気がする。ティオ、絶対にアミータ嬢を守り切れ。彼女こそ、世界を救う女神だ」
「ちょ! あまりほめ殺しにしないでくださいませ、陛下。わたくし、ティオさまとは元々離れる気はございませんですので」
……これで、世界中を敵にまわして戦って負けて、復興後に経済で世界を制覇した変態国って話したら余計に怖がられそうね。
その後も、わたしは陛下から現在の状況について色々情報を得た。
「では、今後の方針としまして被災地のインフラ復旧を提案いたします。地震後の二次災害により被害者が増えないよう、物流や衛生環境の構築を意見具申致します、陛下」
「うむ、その様にいたそうぞ。アミータ嬢には良き案があるのかな?」
わたしの提案に直ぐに乗ってくれる陛下。
こういう対応の早さが専制国家の利点。
賢い指導者が上にいる間は、民主国家よりも早く国が動く。
……とはいえ、いつ何時に賢王が暗君になり下がるか分からないのよね。古代中国の秦、始皇帝は晩年に不老不死を願っておかしくなったし。いつかは、議会制民主主義。出来れば、立憲議会君主制を目指したいなぁ。貴族と民衆の戦争なんて、まっぴらごめんなの。
「はい。既に公爵領などで実用に至ってます魔導エンジン駆動の重機、及び有人操縦型ゴーレムによる工事を行いましょう。また街道も土嚢と石灰を使用した道路で復旧します」
わたしは、この後も思いつく対策を陛下に提案した。




