第30話(累計 第74話) ダム・ガール、王様へ意見具申を行う。
「陛下。この大災害時にアポも無しの面会に応じ下さいまして、ありがとうございます」
「可愛い弟が必死に面会を頼むのだ。そして、その横に異界の災害対策を知る賢き姫が居るのならば、話を聞くに決まっておる」
「陛下。わたくし、別に賢くはございません。全て、わたくしが思いついたことでは無く、ただただ習った事をおつたえしているばかりでございます」
王城に苦労しつつ徒歩で到着したティオさまとわたし。
兵士や文官たちがパニック状態を起こしている中、なんとか陛下への面会の機会を得る事に成功した。
「とまあ、今は形ばかりの礼儀を言っている場合では無いな。アミータ嬢、ティオ。早速だが私を助けてくれないか?」
まだ瓦礫が赤い絨毯の上に多数転がる謁見室。
わたしとティオさまは臣下の立場として膝を降ろし、陛下の言葉を受ける。
「はい、兄上。ボクはその為にアミお姉さんを連れてまいりましたので」
「御意、陛下」
玉座に座り、かなり悲痛な表情の陛下。
しかし、ティオさまの「兄上」という言葉に少し笑みを浮かべた。
「アミータ嬢。今回の災害は一体どういうものか、詳しく教えてくれぬか。現在、連絡が付いた重鎮らを集めている。その場にて教授頂けると助かる」
「はい、喜んで。その前に緊急で陛下にお願いがございます。城下にありますワイバーン航空騎兵の王国各地への偵察行動を進言致します」
少し表情がゆるんだ陛下に、わたしは緊急で意見具申をした。
……まだ日が昇っているうちに被害偵察をしなきゃ。
「それはどういう意味か、教えてくれぬかな、アミータ嬢」
「今回の災害、地揺れ。地震と呼ばれます地殻。大地が動く現象でございます。これには発生地点。震源があり、その場所が一番震度、揺れ方が激しくなります。今回、先に揺れが伝わるP波、縦揺れと本震S波、横揺れの時間差がかなりありました。詳しい理屈は後で説明しますが、おそらく震源は王都から500キロ程。馬車でなら十七日程掛かる遠方と思われます」
……P波とS波の時間差から震源地を計算するのは、前世日本では皆知ってたよね。確か時間差×8で震源地までの大体なキロ数が出るんだったわ。今回、一分ほど時間差があったし。
「あれが最大の揺れでは無かったというのか!?」
「お姉さん、あれ以上のものが来るんですか!?」
「はい、陛下。ティオさま。わたくしの個人感覚で今回の王都の震度は4から5弱。おそらく震源地では最大6強から7。王都以上に壊滅状態になっている可能性が高いですし、震源地が海中であれば、発生した大きな波。津波によって沿岸の地域は既に海に飲み込まれていると思われます」
わたしの答えに陛下のみならず、ティオさまも顔を青くする。
地震に慣れない、かつ知識が少ない人では想像も出来ないと思われる。
……わたしだって、東日本大震災を体験しなきゃ地震の被害を舐めていたものね。なまじ日本の耐震が凄い分、地震揺れだけじゃ殆ど人的被害は出なかったし。
「ということですので、日中に王国各地にワイバーン航空騎兵を送り被害状況を偵察。余裕があれば各地の領主とのホットラインを引いて、更なる二次被害から民を守る行動をなされるよう、意見具申をいたしますわ。こんなときに怖いのが火災とデマです」
なおも、軽い余震が続く中。
わたしは人々を救うための提案をする。
「……分かった。アミータ嬢の意見を早速活用しよう。文官、早急に準備を」
陛下が側仕えに即座命令を下すのを見、わたしは安心する。
この賢き王の元でなら、王国は今回の災害からも立ち上がれると思うから。
「ふぅ。ティオ、アミータ嬢は凄いな。面会後すぐにこのような策を出せるとは」
「だって、アミお姉さんですものね。ボク、ますますお姉さんのことが大好きになりました」
「これこそ、アミちゃん姫さまですもの!」
「ええ、アミータさまこそ、我らが知恵と勝利の女神でございます!」
「もう、皆さまぁ。こんな緊急時まで、わたくしを持ち上げるのはご遠慮くださいませぇ。恥ずかしくなりますもの」
……ヨハナちゃんやファフさんまで、わたしを玉座前で持ち上げないでほしいよぉ!
まだ揺れが続く謁見室の中。
笑い声が少し広がった。
◆ ◇ ◆ ◇
「では、皆さまにご説明をします。今回の大地震、おそらくですがこの円周の何処かに震源地。地震が起きた場所がございます」
多くの重鎮が集まる大会議室。
壁のしっくいに大きなヒビが入っており、窓も一部が割れている。
そんな会議室に置かれた宴会用の机の上、羊皮紙製の大きな地図が置かれている。
……あまり正確じゃないと思うけど、今回の説明くらいには大丈夫かな。王国って前世ヨーロッパならドイツくらいの内陸にあるの。
王国全土が描かれた羊皮紙製の地図の上、王都の上にピンを差す。
そしてピンに繋いだ糸。
縮尺からおそらく500キロメートルくらいの長さになる糸を引っ張り、コンパス風に円を描く。
「これは!? 円の中に王国のほぼ全土が埋まるではないか」
「どうして、このような事が小娘。いや、女騎士殿に分かるのだ!?」
将軍や高級文官らが興奮ぎみに叫ぶ中、わたしは震源地の説明をする。
「まずはアミータ嬢の話を聞こう。その上で判断をするのだ。なお、アミータ嬢の知識については余とヴォルヴィリア公爵にて確認ずみだ」
ざわざわとなる中、陛下がわたしに対しフォローしてくれるのは実に嬉しい。
なので、わたしも本気で提案をしてみた。
「今回の国難。皆さまとの協力で乗り切っていきましょう!」




