第25話(累計 第69話) ダム・ガール、ゴブリンの子ども達と笑いあう。
「あー、とっても可愛いのぉ。この子、コボルトの赤ちゃんなんてモフモフ!」
「ヒメサマ。アリガト」
打倒、魔族国家を心を決めたわたし。
そのまま難民キャンプに向かい、今はゴブリンやコボルトら魔族の中に囲まれている。
「あ! こら、何処触ってんの! えっちぃ」
「アー、オコッタ! ワハハ!」
「ヨハナちゃん、走ったら危ないよ」
わたしの周囲には、赤ちゃんを抱いたゴブリン族やコボルト族のお母さんたち。
みんな、とっても可愛い赤ちゃんを、わたしに見せに来てくれている
……ヨハナちゃんは、少し大きくなったゴブリンやオークの男の子たちと遊んでいるの。うふふ。ゴブリンの男の子でも小さいときは、ヒトとあんまり変わらないんだね。オークの子は少し太っちょかな?
周囲にいるゴブリンやオークの男の人達。
多分、子ども達のお父さんなんだろうけど、ハラハラして心配そうなのが、とってもおかしい。
戦場だと、わたし達と魔族はお互いに殺し合う関係。
でも、この場所では皆が笑ったり、ドキドキしながら共に生活をしている。
……警備している公爵領の兵士さんたちの顔も笑ってるの。あの人たちも誰かの御父さんなのかもね。
「あー、楽しいですの。辛抱せずに来てよかったですわ。ご招待いただき、ありがとう存じます。ティオさま」
「ボクこそ、こんな幸せな光景を見せて頂き、アミお姉さんに感謝です。魔族とボクたち、どうして戦わなければならないのかと思っていましたが、こんな幸せな世界も作れるんですね」
ティオさまも、ゴブリンの子どもたちに囲まれて幸せそうな笑顔。
これがわたしの望む世界。
「いえいえでございます。わたくし、今回で決めました。魔王が人を喰らうのなら、わたくしは国。魔族国家を喰らいます。そして、ヒトもエルフもドワーフも。そして魔族もみんなが笑って幸せに暮らせるような国にしたいと思いました」
「アミちゃん姫さま。すっごい事おっしゃってる自覚はあるんでしょうか? あ、ほい。もうスカートはめくらせませんですわよ、おほほ」
わたしの初心宣言にヨハナちゃんが突っ込む。
しかし、ヨハナちゃんも笑顔だし、否定する感じでは無い。
……ヨハナちゃん、すばっしこいゴブリンの男の子のスカートめくりを回避しているのが凄いね。
「ホ、ホンキデスカ? 姫サマ?」
「はいですわ。だって、今こうやって皆さんと一緒に笑顔でいられるんですもの。だったら、この避難キャンプと同じ事を国。ううん、世界単位まで広げたら良いじゃないですか? ね、簡単でしょ? うふふ」
ゴブリンのお母さんが心配そうにわたしの宣言に対し、尋ねてくる。
だから、わたしは自信を持って答える。
今、お互いに笑いあっているじゃないかと。
「ティオさま。わたくし、色々思いつきましたわ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「コレハ一体?」
「オトーチャン! コレ、カッコイイ!!」
「ショベルカー、ブルトーザーですね。後は、土木作業用ゴーレムさん。これで一気に皆さんのお家を作ります。また、お仕事先になる畑の方にもトラクターを投入しますね」
目の前で動く機械仕掛けの怪物。
工事用重機にゴブリンやオークのお父さん達が驚きの顔を見せ、子供たちは大興奮。
……オイルシリンダーはまだ作れなかったから、ショベルカーなんかの重機はゴーレム技術応用の魔導筋肉筒で動いているの。わたしの愛機も外骨格から内骨格型に改装中ね
魔族難民キャンプを視察した後、わたしは思いついたことをティオさまに相談した。
そして翌日、早速実行に入った。
……だって公爵領にいられる日程って短いんだもん。こういう事はスピード勝負!
「ふふふ。お姉さんに掛かれば、何でも一気に物事が動いちゃいますね。元々何もなかった荒地を居住地にしてしまうんですから」
難民キャンプに魔導エンジン駆動の重機を投入させて工事をさせてほしいと、わたしはティオさまに頼んだのだ。
郊外の荒れ地にあり、領地中心部から離れているキャンプ。
少しの井戸と布製テント、仮設のトイレがあるだけで、自然環境に対する対策がほとんどない。
……トイレは、好気発酵型ね。これなら悪臭が少ないし、肥料にも使えるの。
「だって、このまま暑い夏や寒い冬の厳しい野外にいたら可愛い赤ちゃんが死んじゃいますもの。だったら、わたくし流の街作り。重機による土木建設工事のテストケースで仮設住宅を作ればいいんじゃないかと思ったんです」
どんどんと小山が削られ、地面が整地されていく。
後はセメントで地盤改良して、そこにコンクリートモジュール化したプレハブ家屋を運んで組み立てれば完成。
「ド、ドウシテ、オデ達ヲ助ケル?」
「そうですねぇ。寝覚めが悪いから、でしょうか。だって、こんな可愛い子達が苦しむのなんて見たくないんですもの」
不思議そうに訪ねてきたゴブリンお父さんに向かって、わたしは群がってきたゴブリンの子どもを抱っこしながら答える。
「どの世界でも子どもたちは未来への希望。宝物ですものね」
「ア、アリガトォ。オデ達、恩返シスル」
涙をこぼしながらわたしに感謝してくる魔族の大人達。
恥ずかしくなって、わたしは照れ隠しに本音を語った。
「もちろん、下心もありますよ。魔王さまをぎゃふんと言わせるための作戦その一ですから。皆さんにも、これからは働いてもらいます。働かざる者、食うべからず! 只飯は今日までですので。うふふ」
「アミお姉さん、それ下心じゃないですって」
「アミちゃん姫さまに、二枚舌は無理ですから、しょうがないです」
……と言っても、荒れ地でいきなり農業収穫なんて無理だから、別に仕事を考えるの。外野のツッコミは、しばし放置ね。
ゴブリンやオーク族は、只人らとは敵対種族。
とはいえ、魔王の圧政から家族を守る為に只人族の国へ逃げるくらい家族思いの人なら、話は通じやすい。
愛は相互理解の元。
そう、私は信じている。
「さあ、皆で素敵な街をつくろうね!」
「ハイ!」




