第24話(累計 第68話) ダム・ガール、魔族難民と面談をする。
「では、姫さま。こちらに保護した者たちの代表者が待機しています」
「ありがとう存じます、隊長さん。では、ティオさま。参りましょう!」
「アミちゃん姫さま。必要以上に緊張しなくても大丈夫ですよ? アタシもちゃんと側にいますからね」
わたし達は騎士団長さんに先導され、魔族国家からの難民が居留している仮設地に向かった。
「こちらです。どうぞ」
騎士団長さんが案内してくれたのは、仮設住居代わりの大型テント。
そこの扉代わりの布をまくり上げると、中には髭もじゃのドワーフ族の男性。
そしてコーギー系な子犬っぽい顔の小柄な獣人にゴブリン族の女性が、顔を伏せ地面に膝を着いて待機して居た。
……ん? この子、獣人族じゃなくてコボルト族だ。かわいー!
「者共。ここにおいでは、この地。ヴォルヴィリア公爵領、領主であられますイグナティオ・デ・ヴォルヴィリア閣下。そして閣下の婚約者。ヴァデリア伯爵アヴェーナ家の長女にてディムの称号をもたれています、アミータ・デ・アヴェーナさまにございます」
騎士団長さんが、魔族さんたちにティオさまとわたしの事を紹介してくれる。
しかし、今更ながらティオさまの婚約者と呼ばれるのは、嬉し恥ずかしい。
ディムと紹介されるのにも、中々慣れない。
「遠方より我ら魔族がためにお越し頂き、感謝いたしやす」
「顔を上げてくれないかな。ボクは皆さんから詳しい事情を聴きに来ました」
代表らしいドワーフ族の男性が言葉を話してくる。
魔族側に居たとはいえ、わたしも公爵領で沢山のドワーフ族と仕事をしているので、彼らと話すのに忌避とかは無い。
……他の人は、コボルト族。この子は年齢も男女も分からないの。一見、子犬顔なんだもん。ゴブリン族は……。お母さん? 可愛い女の子な印象なんだけど、小さなお子さんを抱っこしているわ。
「オレは魔族国家ドワーフ族、スカードのヴィトゥル。こいつらは、まだ只人語が片言しか話せないから、オレが通訳をする。それで良いな? いや、良いでしょうか?」
「ええ、慣れない只人語ですから、言葉づかいはお気になさらずに」
髭面のドワーフ族オジサン、ヴィトゥルさんと名乗る方が通訳をしてくれるようだ。
……魔族国家内でも共通言語は無いって話。種族ごとの言葉が別にあって、最近では魔王さまが只人語を話される関係で、只人語が共通言語になっているってのは、リナちゃんから聞いたの。
「それは、ありがてぇ。前も兵士に話したが、今魔族国家でひでぇ圧政が行われてんだ。オレたちドワーフ族は、まだ鍛冶仕事が重視されていたからマシだったが、コボルトやゴブリンらは悲惨だったのさ」
そこからヴィトゥールさんが話す内容。
伯爵領での悲劇以上に、凄まじいものだった。
「酷い! 戦ってこいなら、まだ理解しますが、食料になれってのは……」
「オーク共の肉は豚肉に近いって話さ。男どもは戦士になれないやつ、女も子どもが産めなくなった奴は、文字通り食われていった。オークの子どもも魔王がいる王宮じゃ、高級食材扱いさ」
わたしは、口元まで上がりそうになった胃液をなんとか飲み込みなおす。
オーク族とは、わたしも直接戦ったのでその巨体と強さは理解していた。
だが、そのオークですら食肉。
家畜扱いされているとは思わなかった。
「ゴブリンどもは、食える部分が少ないから雑用や下級兵。一部上級種以外のオスは、気まぐれに殺されたり死前提の先兵。メスなんて、娯楽のために犯されたり、食われたり……。嬢ちゃんの前じゃ言えない事になってら」
……リナちゃん、詳しくは自分たちの事情を言わなかったけど、そんなに酷い事になっていたの!?
「コボルト族も似たようなもんさ。魔族国家内では弱肉強食。魔王を中心にして、食いあう定め。なにせ、魔王じたいが人肉を喜んで喰らう悪食野郎。なんでも、喰らった相手の知識や能力を自分のモノにできる。そうやって同胞を喰らって伸し上がったって話さ」
「ひ、ひどすぎます……」
「公爵領でも寒くて小麦よりもライ麦主流なので、どうやって更に北部。農作が厳しい山脈の向こう側で多くの兵を養う事が出来ていたのか? そして、王国に攻め込んできた兵が残虐なのか? その答えの一端が見えた気がします」
どうして殺される危険性があるだろう王国。
公爵領に魔族が逃げ込んできたのか。
その理由が分かった。
……単純に殺されるのはマシ。最悪は食われちゃうんだ……。
わたしの視界に、プルプル恐怖に震えながらも自らの子どもを抱きしめるゴブリン族の母親。
涙目になりながらも、必死に叫びそうになるのを我慢しているコボルトさんが入ってきた。
「お姉さん。もう我慢しなくてもいいです。ボクも踏ん切りがつきました。経済的な理由で戦争を仕掛けてくるのは理解します。ですが、文字通り喰らうため。全滅、根絶やしをするために攻め込んでくる相手に手加減なんてしてやる必要はないです!」
「ありがとう存じます。ええ、わたくしも決めました。魔王は必ずわたくしが打倒します。なので、ヴトゥールさん。ゴブリン族のお母様、そしてコボルトさん。わたくし、アミータは貴方がたを守りますわ」
「……! あ、ありがとうございやす。ああ、噂を信じて良かった。ゴブリン族の姫君の便りに、アミータ姫さまや公爵閣下の事がありました。その話は一気に魔族国家内の弱小種族内に広まっています」
わたしがしゃがみ込み、手を握って守ると宣言するとヴトゥールさんは男泣きをしだしてしまった。
そして、敵国内でわたしの名声が広まっている事を教えてくれた。
……毒を食らわば皿まで! 向こうが人を食べるのなら、こっちは国。魔族国家そのものを食べてやろう! 魔族の民全部をわたしの願いをかなえる仕事についてもらうの。そして、皆で幸せになってやるんだ!!!
「そちらのお二人。もう大丈夫。怖くないよ?」
わたしはなおも震える二人に笑みを向けた。




