第21話(累計 第65話) ダム・ガール、開発計画を話し合う。
「それではスノッリさん。現在までの開発進歩状況を教えて頂けますか?」
「はい、姫さん。現在ですが、製鉄関係は高炉、転炉。反射炉が稼働し始めました。またコークス炉、セメント炉に煉瓦焼きの窯も上手く動いていますぜ」
一晩、実家でゆっくり過ごしたわたし。
父の看病を妹エリーザにお願いし、ファフさんの背に乗って公爵領まで空の旅を楽しんだ。
そして休憩後。
関係者を呼んでもらい、公爵領における現在の開発状況を聞いている。
「それなら結構ですわ。製鉄時に出る鉱さいがセメント材料になるので、使用をお願いします。さて、これでようやく次の段階に移れます。鉄筋コンクリートは実用域に入りました」
製鉄とセメントが上手くかみ合えば、RC。
鉄筋コンクリートによる強固な建物を作る事が可能となる。
そしてRCの骨格に鉄骨を使えば、SRC。
高層ビルが作れる。
「今後の建物は耐震に戦闘を考慮し、最低でもRC構造。出来ればSRCで作りましょう」
「ええ、姫さん。石工関係者には詳しく伝えておきやす」
……夢のダム建設まで、もう一歩近づいたの! 後はPC。プレストレスト・コンクリートが出来れば、何でも作れるよ。鉄筋の代わりに撃ち込んだピアノ線を引っ張って作れば、強度も上がるし。ローマン・コンクリートにも夢があるけど、再発見している暇は今ないの!
とりあえず、コンクリート関係は無事に進んでいることが分かった。
これで建物関係は順調に進みそうに思える。
「鋼もそうですが、他の金属加工はどうなってますか? 銅や鉛、出来れば『ニッケル』や『クロム』、『モリブデン』辺りも欲しいです」
「そのあたりは鉱山の専門家に聞かなきゃ分からんです。ただ、銅や鉛に関しては良いのが出来ているって聞いてますぜ」
工業化において、鉄の次に重要なのが銅。
電気関係を扱うには出来る限り純粋な銅を手に入れ、それに耐久性、絶縁性のある被覆を被せないといけない。
……前世世界の大日本帝国。石油もだけど他の物資、ゴムとかも禁輸を喰らってやむなく戦争になったという話もあるしね。
「では、そちらはそのままお願いします。ニッケルやクロムが発見できれば、錆びない鉄や優秀な合金が出来ますね。こちらは鉱山関係の方にまた話を聞きましょう。蛇みたいな模様の石が無かったかと」
「お姉さん。一体何を話しているのか。ボクにも分かるように話してくれないかい? 親方やドゥーナ以外はポカン状態なんだけど」
「あ、ごめんなさい。手加減無しにお話を進めてしまいましたの。おほほ」
つい、技術者相手にと本気で話してしまったので、誰もがついていけない話になっている。
「わたくしも金属関係は専門では無く、前世学校で習った事を思い出しながらです。建物を作る際の素材、それがいいモノならより良いモノになる訳ですの。その為の素材、今は鉄が沢山欲しいんです」
「ティオ坊ちゃん。姫さんのアイデアで、今こちらでは一大センセーションが起きてるのですさ。窓の外を見てくだせえ。立ち並ぶ工場がすごいですよ」
「なんか、しばらく見ない間にボクの領地が様変わりしているんだけど?」
ティオさまには開発の許可を取っていたのだが、細かい話は言わなくても良いとも聞いていたので、手加減無し。
いや、技術者が過労死しないくらいの『手加減』モードで開発が進んでいるのだ。
……本当なら百年以上の技術進化を数ヶ月で進んでいるからねぇ。発電所はまだだから、アルミニウムは無理っぽいけど。
「アタイもアミ姫さまには苦言を言っているんですよ。少しは手加減しないと、イグナティオさまが帰った時に驚き過ぎますって」
「アミちゃん姫さま、放置したら何処までも暴走しちゃいますからねぇ。イグナティオさま、今からでいいですから、毎回報告を聞いてから許可を出しませんか?」
という訳で、わたしの側仕えメイド、二人から苦言が飛んでくるのも止むをえまい。
「う、うん。このまま進んだら大変な事になるのは、ボクも理解したよ。だから止めたいんだけど、お姉さん。お姉さんは止めたくない。いや、止められないんですね」
「はい、ティオさま。その為にジュリエッタちゃんも呼びました」
「え!? ここで、いきなりワタシの出番? アミっち、後で良いから詳しい話してよね」
……化学系の開発はジュリちゃんがいないと困るの。だって、火薬がそろそろ必要な気配がするんだもん。
わたしの中で不安がどんどん増大してきている。
入学当初は、そこまで慌てて開発しなくてもいい。
わたしが成人する十六歳までに、ある程度のプラントが間に合っていたら良いと思っていた。
「リナちゃんの存在で、魔王さまは間違いなく王国へ近日中に攻め込むのが確定しました。その際の戦場は、おそらく公爵領。ならば、待っていられない。必ず勝利をする為に、技術革新をしなくてはならないのです」
「それで、錬金術の研究所をウチに作るという事かな、お姉さん?」
「そうです。鉄鋼関係は間に合いそうなので、高圧高熱に耐えられる反応容器を作れれば、肥料に火薬にと手が増えます」
「とまあ、アタイ達ドワーフ族が過労死しそうになるんですけどねぇ」
「ドゥーナ、そんな気弱でどーすんだ? 姫さんのアイデアは面白くて、誰も喜んでいるんだぜ。そりゃ、休む暇があまり無いがな。ガハハ!」
幸いと言っていいのか。
ドワーフ族の技術者さんたち、わたしのアイデアにすっかり盛り上がってしまい、自分から休む暇も惜しんで開発にいそしんでくれている。
……刀鍛冶さんに日本刀の原理を教えちゃったのは、不味かったかも。毎日徹夜で玉鋼作りをやっているんだもん。
「皆さんには慰労としてお酒や料理を準備しています。また、定期的に休みは取って下さいませ。時間はあまりないとはいえ、それまでに皆さんが倒れてしまっては本末転倒。ドワーフ族さんたちだけでなく、他の方々も決してご無理なさらず」
「ということで、親方。後は頼みます。さて、アミお姉さんには分かっているみたいだけど、魔族国家の動きがおかしい。実はこちらに帰って早々、魔族国家からの難民が公爵領に流れだしたと報告を受けている。この辺りの話を騎士団長から話を聞こう」
……魔王さま、わたしは貴方には負けないよ! リナちゃんを泣かせるような奴はゆるさないもん。




