第20話(累計 第64話) ダム・ガール、久方ぶりに実家でくつろぎつつ、計画を進める。
「お父さま、お加減は如何でしょうか?」
「大分マシにはなったよ。公爵閣下の計らいで医官や上級医療神官も派遣してもらっているしね。第一、問題を起こすアミータがここには居ない……。じょ、冗談に決まっている。だから、そのクッションを投げるのは勘弁してくれるかい?」
「おとーさまのばかぁぁぁ!」
「すっかり御屋形さまも、アミちゃん姫さまの影響でギャグをたしなまわれるようになられたのですね。お元気になられた証拠で良きことでございます」
ヴァデリア伯爵領にドラゴン、ファフさんに乗せてもらって帰ったわたし達。
領主屋敷の歓談室にて、久方ぶりにお父さまと面会している。
……お父さま、ようやくベットから起きだしたの。冗談も言えるくらいに元気になって良かったわ。面会は、わたし、エリーザ、ティオさまにファフさんで。ドゥーナちゃんとジュリエッタちゃんは別室で待機してもらってるの。
わたしは、口で怒りながらも笑顔でお父さまにクッションを投げつける。
こうやって親子でふざけ合えるのが、とても幸せだから。
「お姉ちゃん、お父さまはまだ病み上がりなんだから、イジメないでね。でも、本当に良かったわ」
「伯爵さま、お元気になられて良かったです。ボクも一安心です。事後報告になりましたが、学校で御相談も無くアミお姉さんと婚約発表をしてしまいました。申し訳ありません」
ヨハナちゃんに給仕してもらい、皆でまったりお茶を楽しむ。
「閣下。馬鹿娘ですが、今後ともよろしくお願いします。さて、馬鹿娘のアミータ。お前のことだから、また何かろくでもない……。いや、何か役に立つことを考えているんだろ? 早めに白状した方がいいぞ」
「うふふ。もう、お父さまったら」
「御屋形様は、アミちゃん姫さまの事をよく御理解なさってますね。その通りでございます」
……お父さま。ティオさまとの婚約を認めてくれたの、嬉しいよぉ。
笑いながらお父さまが、わたしに早くアイデアを提示しろという。
よくわたしの事を理解しているのは、流石は我が父である。
「うふふ。では、まずお配りする資料を見てくださいませ。ヨハナちゃん、皆さまに資料を」
「はいですぅ」
「うむ……。これは、また多方面の改善案だなぁ」
お父さまは、わたしが植物紙にガリ判印刷した資料を見て、苦笑する。
「では、順番にご説明しますね。まずは一枚目、道路整備についてです。領内ですが、街道も一部しか石畳になっていません。石畳舗装も充分では無く、雨が降れば水たまりが出来てしまう事もあるでしょう。それを簡単に改善する方法があるんです」
「土嚢を使うんですか、アミお姉さん? これは……」
わたしが提示した方法。
それは土嚢を埋め込んで固めて道路にする方法。
NPOで途上国に行った際に実際に工事を行い、地元の力だけで道路を作り上げたのだ。
……石油の油田をまだ見つけてはいないから、アスファルト舗装もまだできないからね。それに地盤整備もせずに石を並べただけの石畳なんてすぐにダメになっちゃうし。ローマ街道は、案外とハイテクなんだよ。
「まずは土を平らに整えます。上からハンマーとかで叩き固めると良いですね。その後に、土を半分強くらい入れた土嚢を並べて、更に叩いて固めます。高さが欲しい場合は、土嚢を二段とか三段重ねにするといいですね。最後にもう一度石灰入りの土を敷いて固めると完成です。この方法なら石畳を敷き詰めるよりも簡単に道路が出来ますよ」
「これは凄いですね、お姉さん。ボクでも道路を作れそうです」
……ティオさまが、すっかりご機嫌なのが良いわ。うふふ。
前世世界でも、先進国の協力にて途上国でアスファルト舗装をやったは良いが、地元に補修技術が無くて壊れたらそのままになってしまっていた。
その点、土嚢を使った道路は地元で修復も出来るのが良い。
自分たちで治せないものを与えても、壊れた後治す事が出来ない。
モノを与えるのではなく、モノの作り方、修繕方法を与えるべきなのだ。
……道路が他の地面よりもかさ上げ出来ているから、雨が降っても脇に流れていくの。排水が出来るから、中途半端な石畳よりも良いわ。
前世古代ローマでは石畳を使った舗装が出来ていたが、あれも高度な技術が必要。
この世界でも不可能ではないが、作業速度は圧倒的に土嚢の方が上。
その上、工事技術がそこまで必要無いのも良い。
「道路が舗装出来れば、流通の便が良くなっていきますから。さて、次。二枚目が農業改革です。これですが、学校で友人になった男の子から詳しく教えて頂きました」
わたしは、次の案を説明しだした。
「ほう、アミータに友人が増えたか。それも男子とはな。これまでも友人が少なくて心配だったが、嬉しいよ」
「お姉ちゃんの周囲って変な人が集まるの、面白いけど心配になっちゃう。あ! イグナティオさまは変じゃないです! ご、ごめんなさいぃ」
「うふふ。大丈夫ですよ、エリーザさま。アミお姉さんが面白いのは確かですからね」
歓談室で笑い声が響く。
わたしは嬉しくなって、お父さま達に説明を続けた。




