第17話(累計 第61話) ダム・ガール、各方面からお叱りを受ける。
「イグナティオさま。普段ならお姉ちゃんを止めるのに、一緒に暴走なさるなんて……。すっかり二人で盛り上がってしまったのですねぇ」
「すいません、エリーザさま。ボク、つい嬉しくてアミお姉さんに追従しちゃいました。でも、大好きなお姉さんと一緒に領地改革をしたいのは本当です。お姉さんとなら、領地の皆。いや国民全部と一緒に幸せを分け合える気がするんです」
「閣下。いつもは若輩でありながら、我らゴブリン氏族にまでお気を使われるご立派なお方とお見受けしていました。ですが、失礼ながら今朝は初めて、貴方さまの年相応な可愛いお姿が初めて見えた気が致しますわ」
先生たちからのお説教が終わる頃には、授業が終わっていた。
職員室から苦笑しながら二人出ると、ニヤニヤ顔の妹や仲間たちが生暖かい様子で待っててくれていた。
……リナちゃんが、ティオさまに対してにっこり顔で微笑むの、とっても可愛いなぁ。この間までは、リナちゃんとティオさまが近くにいるだけでも胸が痛かったのに。やっぱりティオさまの告白で、わたしに余裕が出来たから大丈夫になったのかな?
「とりあえず、お茶をどうぞです、お二人とも。しっかし、アミちゃん姫さまの暴走は毎度見慣れておりますが、イグナティオ公爵閣下の暴走もなかなか。実に良き、似たもの夫婦……。あ、ご夫婦にはまだ早すぎますね、おほほ」
「ヨハナちゃん。わたくし達を揶揄わないでくださいませぇぇ」
「そーだよ。ボクだって恥ずかしいもの。あ、別に怒ってはいないし、これからもヨハナお姉さんはボクにも容赦なく突っ込んでね」
無理を言って女子寮の面会室を借りて、状況説明とお説教の続きとなっているわたしとティオさま。
……だって、仲間内で男性はティオさま、ファフさん。そしてルキウスくんだけだからね。
「でも、アミ姫さまとイグナティオさまがお二人で暴走しますと、技術者として働くアタイ達ドワーフ族が死滅しかねないので、ご容赦を欲しいですぅ」
「ごめんねぇ、ドゥーナちゃん。開発は技術者の都合も考えて計画的に進めますわ」
「アミちゃん姫さまにそうして頂ければ、アタシも安堵します。お二人が組んで暴走なさると国が危ないですので」
「私も同感です。坊ちゃまが、ここまで暴走するとは、恋のパワー。侮れなし」
側仕え組からなおもツッコミが飛ぶ。
ファフさんも苦笑しながら突っ込んでくるのには、わたしも自分のブレーキを再度拾い直さないといけないと思った。
……ティオさまと出会って、すっかりブレーキや自重を投げ捨てちゃってたからねぇ。
「お姉ちゃん、もし余裕があるならウチの領地。伯爵領にもインフラってのを構築して欲しいな。領民みんなが幸せになれば、わたくしも嬉しいし」
わたしがドゥーナちゃんに開発速度の調整を考えると伝えるとエリーザからも開発依頼が来た。
確かに嫁ぎ先だけで無く、実家も開発をするのにわたしも異存は無い。
……もう開発を止めるお義母さまも居ないしね。
「ええ、エリーザ。早速計画を考えておきますわ。リナ姫さまの前で話すのも何ですが、兵器開発や兵員輸送のための道路作りも優先にしなくてはなりませんですし」
「いえいえ、お気になさらずに。アミータお姉さまがお考えなのは魔族を攻める力では無く、魔族から民を守る力。ワタクシも十分理解をしていますので」
……リナちゃんが可愛くてとっても賢いの。ゴブリンって愚かだってのが前世含めてこちらでも言われてるけど、個人差が大きいのかもね。言葉に礼儀作法も含めて、何処かですっごく勉強したんだろうなぁ。どうやって学んだろう。気になるの。
「本当にリナちゃん姫さまは賢いですわ。リナ姫さま、そういえば以前から気になっていた事があるのですが、少しお聞きして宜しいですか?」
「はい、お姉さま。我が国や民に不利益を与えるような事でなければお答え致しますわ」
わたしは、以前から気になっていたことを質問してみた。
「ゴブリン氏族の里に学校などの子どもたちが勉強をする場所はありますか? 他の魔族とかも、子ども達がどんな勉強をしているのか、わたくし気になっていたんです」
……リナちゃんはすごく賢いし、わたしとティオさまを襲ってきたゴブリン砲兵や魔術師。その技術は、必ずどこかで学んで来たと思うの。それに大砲なんかを考えたり作った異世界の知識を持つ技術者が、絶対に魔族の中にいるはずだし。
「え? てっきり、ワタクシがどうやって王国に来たのかとか聞かれると思いましたわ……? アミータお姉さま、そのご質問にはお答えできますね。学校というか、集団で教育を行う考えが残念ながらゴブリンには元々あまりないのです。魔族の間では、ゴブリンは扱いやすく使い捨ての愚かな兵士扱いなので」
……わたしだって、聞いて良い事、悪い事。少しくらいは頭も気も使うよ。リナちゃんと少女メイドたちが高山経由で国境越えをしたとは元から考えていなかったし。多分、トンネル。古代遺跡ダンジョンなんかを通ってきたのだと思ってるの。
「そうですか。リナちゃん姫さまが年上のわたくし以上にしっかりなされていて、かつお作法も完璧。更には異国語である只人の言葉まで文字を含めて使いこなされていらっしゃるのは凄いです。なので、てっきり高度な教育を受けられる組織というか機関が魔族国家内にあるのかと思ってました」
「ボクが聴く限り、魔族国家においてもこの王国でも平民の子どもが学べる場所は少ないです。こと軍事や魔法、そしてアミお姉さんの土木にジュリエッタさまの錬金術にドゥーナさんの金属加工。どれもこれも学ぶ場所がほとんど無い非常に貴重な技術ですね」
リナちゃんやティオさまの話を総合するに、この世界では子どもが学べる機会はまだ少ない様だ。
農村部では、子どもが一家を支える労働力として考えられていたのは、前世世界の過去でもこの世界でも同じ。
……良し、決めたの! ダムの前に作る建物が。
「ティオさま。わたくし、学校を。すべての子どもたちが学べる学校を作りたいんです!」




