第16話(累計 第60話) ダム・ガール、正式に公爵さまと婚約をする。
「わたくしは、ティオさまを愛しています!」
わたしは、朝日が気持ちいい晴天の元。
ハナミズキが咲き誇る学校の校庭という公衆の面前でありながら、自らの思いを叫ぶ。
ティオ様への思いを。
「では、アミお姉さんはボクを選んでくださるのですか?」
「もちろんです。もう一度、はっきり言います。わたくし、アミータ・デ・アヴェーナはイグナティオ・デ・ヴォルヴィリアさまを愛しています! 大好きなんです」
わたしは大声でティオさまが大好きだと宣言する。
もう自分の心を偽るのもやめた。
過去、「前世」の失恋は、今のわたしには関係ない。
記憶が連続していようとも、今のわたしはアミータ。
過去に遠慮などする必要など一切ない。
ダムへの思いと同じく、ティオさまへの思いも隠さず表現すればいい。
そう、言葉に出して。
「ほ、本当ですか、お姉さん?」
「ティオさま、アミータはティオさまがだーい好きです! ティオさまが成人を迎えたら結婚しましょう」
わたしは婚約をすっとばし、結婚まで語る。
もう、わたしを止めるものなど何もない。
欲望のままに暴走するだけだ。
周囲でわたし達を見守ってくれていた人たち。
二人がお互いに好きだと叫ぶとワーと歓声を上げた。
みんなが祝福の言葉を叫ぶ。
「お姉ちゃん! おめでとうございます。イグナティオさまと末永くお幸せに」
「アミちゃん姫さま、おめでとーございますぅ。二人の子育ては、アタシに任せてくださいませ!」
「アミ姫さま、おめでとうございます。出来ますれば、婚約後は開発スピードを抑えて頂けると……」
「アミっち、おめでとー。これで、ワタシの研究も進みそう」
「アミータお姉さん。いや『ダム好きお嬢さん』。おめでとうございます。これで僕もイグナティオさまから殺気貰わなくなるので、ひと安心です」
「アミータお姉さま、イグナティオさま。おめでとう存じます。ゴブリン氏族を代表してお祝い致しますわ」
「学校で告白なんて、羨ましいですわ」
「男の子、元王子様じゃないの。すっごい玉の輿じゃないかしら?」
「『泥かぶり』姫が婚約とは……」
……半分以上は祝福の声ね。恥ずかしいけど、嬉しいなぁ。
「う、嬉しいです、お姉さん。ボクはずっとアミお姉さんと一緒に居たかった。大好きなんです。ボクが成人をし、正式に公爵となった暁には豪勢な結婚式をしましょう!」
「はい。でも、豪勢なのはちょっと考えてしまいます。わたくし、無意味な贅沢は好きじゃないので。質素でも大好きな人々に囲まれ、領民、国民みんなが笑顔になれるような結婚式にしたいです!」
「あ、ごめんなさい。そうですよね。お姉さんは自分の幸せ以上に他人の幸せを大事になさりますから。ええ、皆が笑える結婚式にしましょう。では、領地の開発を本格的にしませんか?」
わたしの希望を受け、豪勢な結婚式を辞めてくれたティオさま。
元王族であれば結婚式が豪勢になるのは当たり前。
でも、一部の人たちだけ。
貴族だけが喜ぶ結婚式というのは、わたしの中にはない。
……もちろん豪勢にするために衣装や料理などを作る人たちへ経済を回すというのは納得するわ。でも、せっかく結婚式で経済を回すのなら、更に別の意味で大規模にしなきゃ。
「それ、大歓迎ですわ! 街に上下水道やガス、温水などのインフラを供給して、道路は全面舗装。更に蒸気機関車なんかも通したいです。快適になった街全体を結婚式場にして、自動車でパレード。住民みんなで大騒ぎしますの!」
「ええ、それは面白いですね。街全体で結婚式。領内全部にもお祭りを広げたいです、アミお姉さん」
お互いの思いを伝えあった、わたし達。
今度は未来構想を語る。
わたしが領都や領地内のインフラを構築。
そのまま、幸せな人々と祝いあう未来。
「皆さん! もう授業が始まりますよぉ! こんなところで立ち止まっていないで、早く教室に入りなさい。ですが、優雅さを失わぬよう走ってはなりませんよ」
わたしが脳内ピンクのまま、インフラ構築を考えていた時。
突然、大きな声が校庭に響く。
声の方に視線を見ると、そこには壮年女性教師が居た。
「急がなきゃ!」
「わーい」
「きゃぁあ」
多くの生徒たちが優雅さを失わない最大歩行速度で教室へ向かう。
わたしとティオさまも赤い顔を見合わせ、教室へ向かおうとした。
「ヴォルヴィリア公爵イグナティオさま。そしてヴァデリア伯爵令嬢にしてディム・アミータさま。騒動の中心である貴方がたは、職員室に来て下さい。色々とお話がありますわ……」
「はい、先生」
「はぁいい」
わたしとティオさまは、後から来た苦笑が止まらない憲兵らに連行されて職員室送りとなった。
「イグナティオさま。授業のノートは後でお見せしますね。お姉ちゃん、存分に怒られて来てねー」
妹からの声援(?)を受けて、わたしはとぼとぼと職員室へと向かった。
◆ ◇ ◆ ◇
わたしとティオさまが告白しあった校庭に立つハナミズキの巨木。
後に「恋人たちの木」と呼ばれるようになる。
ハナミズキの花が咲くころ、花の下で二人告白をすれば恋が成就するという伝説が生まれた。
なお、わたしがその事を知ったのは、十年以上未来。
わたしとティオさまの娘が貴族学校に入学してからの事であった。
まる。




