第37話:ダム・ガール、ロボで格闘戦もこなす!
ドスンと反動が、わたしの駆るゴーレムを襲う。
撃ち出した砲弾が壊れた城門を乗り越えようとしていたミスラル・ゴーレムたちに着弾。
派手に爆発をした。
「やったか!? あ、ダメなフラグ発言しちゃったの! 随伴兵の皆、逃げて!!」
わたしの迂闊な発言通り、煙の中から銀色に輝くゴーレムが立ち上がってくる。
このままでは、巨人同士の戦いに巻き込まれるから、わたしは周囲の味方に避難指示を出す。
「一体は撃破できたのは、まだ幸いね。もう、大砲は間に合わない。『タロス・キャノン・リリース』『タロス・メイス・オン!』」
一体は完全に沈黙したものの、壊れた門をのっそりと踏み越えて城門外の平地を走ってくるミスラル・ゴーレム二体。
もはや砲撃が間に合わないので大砲を捨て、わたしは背中から両手持ちな大型メイスを引き抜いた。
……怖いの。で、でも負けてられないのぉぉ!
「いっけぇぇ!」
先行して剣を抜いて振りかぶる機体頭部に、こちらも長柄の鋼鉄製メイスを叩きつける。
ガキンと激しい音がなり、衝撃がコクピットにも響く。
柄の長さ分、間合いがこちらの方が遠いので先に敵の騎士兜状な頭部がぐしゃりとつぶれ、敵機の剣が描く軌跡が「タロス」号から外れた。
「このままぁ!」
ミスラルとの激突で鋼鉄製のメイス先端部がバラバラに砕け散るが、まだトドメが刺せていない。
頭部と視覚を失いふらふらしているが、もう一撃が必要。
「いっけぇぇ!」
長柄をひっくり返し、槍代わりの石突を頭部が崩れたゴーレムの胸へと押し付ける。
そして魔導コアがあるであろう部分に、ドスンと渾身の力で突き刺した。
……お父様にゴーレムのコアが何処にあるのか、昔教えてもらったわ。
「これで二機を撃破。あと、一体は……。危ない!」
記憶に頼って一体撃破したので、安堵した瞬間。
がくんと脱力したゴーレムの影から、もう一体のミスラル・ゴーレムが切り付けてきた。
「! こ、怖い」
刺さった得物を抜く暇もなく、バックダッシュ。
激しい動きに関節部のディスクブレーキから火花があがり、ディスクから煙が上がる。
「遮蔽物が無いここじゃ、危ないの。でも街中に逃げ込みたくはないから、壊れた壁を遮蔽物にしよう」
わたしは、仕方なく壊れた城壁の周囲に逃げ込む。
街中では、たくさんの人たちが逃げ惑うのが見える。
そんな中、兵士らが避難民を押しのけて向かってきているが、正直来てもらっても困る。
……兵士さんを踏みつぶさないようにしなきゃ!
関節部の工夫でこちらの方が機動性が高いので、なんとか避けられたものの、更に迫りくる敵。
わたしは、瓦礫を遮蔽物にしながら視線を周囲に向ける。
何か、打開策が無いのかと。
「あ! あれを拾えば」
きらりと光る剣が、踏み割られた石畳の上に転がる。
さっき砲撃で撃破した機体が持っていたミスラル製の剣。
「くぅ!」
斬撃を必死に避けながら、街の入り口付近で剣を拾った「タロス」号。
かなり無理をしているので、関節部ディスクブレーキが赤熱し始めた。
……でも、剣をどう使ったらいいの?
しかし、わたしに剣術の技能は無く、タロス号のシステムにも剣術はプログラミングされていない。
……こういう時、単純に振りかぶっちゃダメだ。殺るなら、腰だめに急所の胸か腹を一突き!
脳内で戦い方を組もうと必死に考えながら、攻撃を避ける。
力任せで振り回すだけの斬撃だから今は避けられるが、ずっとは無理。
足元に注意しないと、瓦礫で転べば終わり。
人を踏んで滑っても負け。
更に関節部の消耗が激しく、脚部ディスクブレーキもいつ壊れてもおかしくない。
わたしが遮蔽物にしていた壁は、ミスラル製の剣の一撃で簡単に瓦礫になる。
足元に近づく兵士を避けながら、わたしは機体を必死に駆る。
……あれ? そういえば昔、誰かに教えてもらった覚えがあるの。
「刃物を振りかぶってくる奴は、素人さ。怖くても間合い内に踏み込んで、刃物を握ってる柄を下から跳ね上げりゃ、後は簡単。そのまま刃物を奪って心臓にグサリで勝ちさ。柳生新陰流奥義の一つ、無刀取りって技。大事なのは、一番怖いタイミングでの踏み込みだな」
死にそうな枯れた老人から何処かで教えてもらった事が、いきなり脳裏に浮かぶ。
あれは前世、NPOに行く前の護身術道場での話だったか。
……そうか! だったら!
正面から右手に持つ剣を振りかぶってきたミスラル・ゴーレム。
怖いと思った瞬間、わたしは体当たりのつもりでダッシュを掛けた。
「ぐ!」
脚部ディスクブレーキから火花と煙が上がる。
凄いGを感じながら、コクピットの窓が敵機体でいっぱいになった。
「ここぉぉ!」
踏み込んだ勢いで、機体の左手を跳ね上げる。
火花を上げながら上げた拳。
振りかぶってきた敵ゴーレムの持つ剣の柄に、それをぶつけた。
「いけぇぇぇ!」
剣の軌道がずらされ、前につんのめった形になった敵機。
その腹部が目の前にいっぱいになる。
そこへ、右手に持っていた剣を全力で突き刺した。
ガガという音を立て、火花を放つ剣がミスラルの固まりに突き刺さる。
コアを貫いたのか、ゴーレムは痙攣を起こして倒れる。
「全部、トドメ刺しておかなきゃ……」
わたしは、倒れた機体から剣を奪い、念のために全機の頭部や腹部を破壊した。
……わたし、どうしてこんな時でも身体が動くんだろう? 普通、怖くてたまらないよね。魔神相手の時も皆が固まっていたのに、動けたの?
自分が恐慌も硬直も起こさずに戦える事を不思議に思うが、今は戦闘中。
休憩は出来ても油断はできない。
「邪魔していた兵士さん、わたくしに踏み潰されたく無いなら逃げましょうね?」
「うわぁぁ、逃げろー!」
先ほどまで足元で邪魔をしていた兵士さんたちは自分側のミスラル・ゴーレムが全部敗北した上に、わたしが警告したので蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。
「ふぅ。これで一安心。このままカントリー・ハウスまで行きましょか。随伴の皆さん、大丈夫でしたか?」
「ええ。姫さまのゴーレムを駆る姿に感動しました!」
周囲で警戒をしてくれていた随伴兵のお兄さん達に声を掛け、わたしは義母が待つであろう、かつての我が家を目指す。
「魔神、邪魔するなー!」
逃げる兵士の向こうから追撃してきたレッサー・デーモン数体。
わたしは、ゴーレムに剣を振りかぶらせて飛びかかった。




