第61話(累計 第234話) グランドエピローグ:ダムガールは、ダムをこれからも作っていく!!
配信番組を撮影してもらったわたし。
録画を終え、ナイトさんを皆で公館から見送る。
「近日中にこちらにも電源と配信受信機を設置しますね。せっかく映した映像を皆さまにも見て頂きたいので」
「ありがとう存じます、ナイトさん。しかし、少々恥ずかしいのですが……」
……話だと、わたしの恥ずかしいドジなシーンも結構あるらしく、それがまた可愛らしいと大人気らしいのは困るわ。
公館の前庭、駐機場に停めたヘリ。
そこにナイトさんを案内したとき。
「オマエ! オマエが居なければ! アミータ、死ねぇぇ!」
突如、庭木の影から飛び出してきた、みすぼらしい男。
その狂気じみた顔と手に持ったフリントロック型拳銃。
わたしがとっさに<石壁>を作る前に、その引き金が引かれた。
「きゃぁ!」
「姫さま!」
「何をする!」
銃口から火が吹き、周囲に硫黄の匂いが充満する。
引き金を引いて虚ろな表情の男。
わたしは、その顔に見覚えがあった。
……あ! 法王じゃないの!
以前は恰幅もよく、純白の豪華な衣装を身にまとっていた法王。
しかし、今は薄汚れ砂まみれ。
巡礼者の恰好で、隠れ潜んでいたのだろう。
「ティオさま! ティオさまぁ!」
しかし、そんな事はどうでもいい。
急に飛び出してきたティオさまがわたしを庇って、撃たれてしまったのだ。
「ふははは! 小娘を殺せなかったのは残念だったが、公爵を殺せたのなら十分だ。もう俺には何も残っていない。アミータも一緒に不幸になろうぞ!」
「そ、そんな、ティオさま。目を、目を覚ましてぇ!」
わたしは一生懸命、治癒魔法を詠唱する。
兵士らに取り押されられた法王など、どうでもいい。
今はティオさまの命が大事だ。
「ああ、どうして。どうして、わたくしを庇って……」
ティオさまの胸。
騎士服をモチーフにした衣装に、大きく穴が開く。
わたしは目を閉じ、力いっぱいティオさまを抱きしめ、彼の命が失われていくのを悲しんだ。
「い、痛いです。お姉さん」
「え! ティオさま! ティオさまぁぁ!」
わたしは急いで目を開き、ティオさまの顔を見る。
そこには痛みで顔をしかめつつも、わたしを見返してくれるティオさまが居た。
「お姉さん、忘れてましたか? お姉さんの指示で全員の衣装を防弾仕様にしたって。大分痛いですが、血は出ていません。無事に銃弾を防弾具が止めてくれました」
……あ、そういえば、穴が開いてても出血が無いわ!
「良かった。良かったぁぁぁ!」
わたしはティオさまを抱きしめ、号泣する。
わたしのこれまでの努力、それがティオさまを救ったのだから。
「良かったです、坊ちゃま」
「アタシ、もう心臓が止まりそうでした」
わたしを囲む仲間達も涙を流して、ティオさまの無事を喜んだ。
一名、ナイト氏はカメラを回しているが、ティオさまが助かったのだから、まあ良い。
「そ、そんなバカな! 銃で撃たれたのだぞ? 魔法で防ぎもせずに、ど、どうして死なない!?」
「法王、いえ。元法王。貴方には分からない力。わたくしが構築してきた科学の力が、貴方の暴力に勝ったのです。しかし、許せませんですわ。兵士の方、わたくしに彼の身柄を渡してくださいませんでしょうか?」
両肩を警備兵に抑え込まれていた元法王。
彼は、自分の必殺な銃撃が防がれたのが信じられないようだが、そんな事は関係ない。
わたしは、わたしの大好きな人を傷つけられて怒りが止まらない。
「これは見ものでございます。視聴者の皆さま、アミータ嬢のお姿をご覧ください」
背後でカメラを抱え、興奮しているナイトさん。
「アミちゃん姫さま、やっちゃってくださいませ。ですが、お命は取らぬように。簡単に殺しては後からいびれないです。それに、こんな逆恨みな愚か者の血なんて、アタシは見たくないですぅ」
そして声援しているんだか、ストップをしているんだが分からないヨハナちゃん。
涙声ながら、わたしの手を汚すまでの敵じゃないと言ってくれる。
「分かっていますわ、ヨハナちゃん。少々、ぶん殴るだけですもの。うふふ。さあ、ポコポコタイムですの。御覚悟を、元法王さま。石でカイザーナックルを作ってっと」
「ひ、ひぇぇぇ」
怯える元法王の前、私は両手に嵌めた石製ナックルをカチンカチンとぶつけて鳴らす。
「御覚悟を、元法王さま?」
その後、わたしは存分に元法王をどつきまわした。
◆ ◇ ◆ ◇
「ティオさま。お胸痛くないですか?」
「もう大丈夫です。お姉さんの治癒魔法が効いたんですね」
夕食後、共にお風呂に入りベットインの時間。
わたしの自室にて、夜着のティオさまとイチャつく。
お互いに抱きしめ合い、体温と匂いを感じあう。
……ヨハナちゃんとファフさんからは、『最終行為』、『合体』以外はOKと許可を得たの。今晩は、ゆっくりティオさまと抱き合いたいわ。
「ボク、思わず動いてしまいました。本来なら魔法で障壁を作るのが先だったのに、お姉さんを庇ってしまいました。お姉さんがお話している昔の事、笑えないです」
「前世で子どもを庇って亡くなった事ですよね。今のティオさまみたいには防弾具も無し。肉の壁にしかなりませんでしたわ」
ほっぺをくっつけ合い、ぎゅっと抱きしめ合ってのピロトーク。
二人でゆっくり語り合う。
……おほん。性的な『行為』はしていないから、厳密にはピロトークじゃないけどね。
大分、筋肉質になり、昔よりも抱き心地が硬くなったティオさま。
でも、ほっぺはまだまだ柔らかく、わたしを見る翠の眼は昔と全く変わらない。
「ボク、お姉さんとずっと一緒でいたいです。もうすぐボクは成人を向かえます。アミータさま、ボクのお嫁さんに。公爵夫人になってくださいませんか?」
「はい、喜んで! わたくし、ずっとティオさまからのプロポーズを待ってました。ああ、嬉しい。このままティオさまを食べちゃおうかしら!?」
そしてティオさまから正式にプロポーズが成される。
わたしは、もちろん喜んで受け入れた。
……まあ、公爵家に嫁入りするには、伯爵家の娘じゃ家柄が足らんのよね。わたし自身、女男爵の爵位をもらっているけどね。
「ちょ! それは冗談でも困ります。ボクもお姉さんを……抱きたいという気持ちは正直あります。しかし、お姉さんの身分を大公家の養女になさるまでに清き乙女で無くなれば、周囲の声が厳しくなります。なので、それまでは我慢してくださいませ」
「ぶー! 冗談でも無いですが、まあいいです。わたくし。ううん、わたしに欲情してくれているのは分かりましたから。うふふ」
「は、恥ずかしいですぅ」
わたしは、押し付けてくれるティオさまの身体の「一部」が硬くなっているのを感じる。
性的魅力がそこまでないわたしに対し、愛欲をみせてくれるのは嬉しいから。
……王家の血を濃く継ぐ公爵家との結婚の場合、妾とか第二婦人ならいざ知らず、伯爵家でも身分が足らないのよ。なので、近日中に王陛下の紹介でタルセリア大公リガルドさまの養女になる予定なの。
以前、法王国に伺う際に接触してきた大公さま。
わたしのビジネストークと技術にほれ込み、ティオさまとの結婚前に養女にならんかと、向こうから誘ってきた。
元より王家とも力関係を保ちたい大公様、わたしの存在を味方にしたいらしい。
……わたしも条件を出して、大公領地内での農奴。獣族の人たちの生活環境を改善するから機械を導入させることにしたの。お互いにWin-Winの関係に持ち込めば、収益が増える大公さまも喜ぶしね。
「ねえ、ティオさま。わたし、子どもはいっぱい欲しいです。一緒に幸せになりましょうね」
「はい、お姉さん!」
そのままキスをする二人。
わたしは幸せを感じながら、眠りについた。
◆ ◇ ◆ ◇
「アミちゃん姫さま。破廉恥なお姿をお晒しでは、我慢するイグナティオさまがあまりに可哀そうです。お気をつけてくださいませ」
翌朝、わたしは夜着を知らぬまに脱いでしまい、ほぼ裸の下着姿。
あまり豊満でない胸にティオさまを抱きしめていた。
「お姉さん、お早く御衣裳を着てくださいませぇぇ!」
耳どころか、全身真っ赤にしてわたしから目を背けるティオさま。
その様子が実に可愛いくて良い。
「はぁ。わたし、どうして最後まできちんと出来ないのかしら?」
わたしは天井を見上げつつ、呟く。
シリアスが続かず、わたしの周囲にはいつも笑みが浮かぶ。
「まあ、細かい事は良いわ。ヨハナちゃん、騎馬服をお願い! 朝食後は新たな工事に取り掛かりますの! めざせ、重力ダム! わたくし、今日も爆走しますわ」
わたしは今日も走る。
皆の幸せを作るため。
そして、ダムをもう一度この手でつくるために。
「はいですわ、アミちゃん。イグナティオさま、困った姫さまですが、今後とも宜しくお願いします」
「ええ、ヨハナさん、さあ、アミお姉さん。ボクも一緒に参ります!」
わたしは、着替え終わったティオさまと手をつなぎ、前に進む。
泥や血に汚れようとも止まらない。
それがダムガールであり、『泥かぶり姫』なのだから。
「さあ、参りますわ。ダムガール、今日も邁進ですわぁぁぁ!」
(完結)




