第57話(累計 第230話) ダムガール、魔王と本音で語り合う。
「一時休戦というのは如何でしょうか?」
わたしは、病床の魔王陛下に休戦を提案する。
お互いに共通の敵が出来た。
そして傷つけあっても、共に何も得るものが無いから。
「オレを、オレたちを舐めているのか!? オレたちは差別され、王国や他の只人の国との闘いで貧しい土地と厳しい気候の地に追いやられて、その地獄で殺し合いをしてきた。その上、魔族の中で只人は何の力もなく、気まぐれに殺される存在。せっかく成り上がって王になったら、今度は何も自由にできなかった」
「……魔族国内が生きていくのに大変な環境なのは、わたくしも見ました。夏には耐えがたき乾き、冬には凍てつく大地。岩と砂ばかりの砂漠。時折起きる豪雨時には暴れ川になる枯れ谷」
魔族国家内で戦闘をしていた頃。
その大地があまりに『死んで』いて、生きていくのに過酷な土地であるのを、わたしは実感した。
……臨時飛行場をつくるのに、岩と砂ばかりで整地するのが大変だったわ。
「そこまで分かっていて、どうしてオレがオマエらに従うとでも思うんだよ! オレたちはな、オマエらが幸せそうにしているのが羨ましいんだよ。妬ましいのよ! だから、全部奪い取ってやりたい!」
絶望し、何も信じられない。
呪いのような妬み、不幸を他人に押し付けてやらないと我慢できない。
そんな叫びを怪獣の姿の時にも吠えていた魔王。
今も、ベットのシーツを破れそうな勢いで握りしめ、言い放つ。
「魔王陛下。前もお話しましたが、ゼロと百。奪い合うしかないのは悲しいですわよ。わたくし、言いましたよね。魔族国へ援助をすると。貴方がたの国が大変なのは承知。その大変さを、少しでも改善できればと思っていますの。そのテストケースに、国境の砦付近においてインフラ構築を始めています。また、魔族の方も王国内でインフラ工事をしたり、子どもたちは教育を受けています」
「そんな! そんな綺麗ごとを。何も知らぬ小娘がいくら騒いでも、世界は変わらぬ!」
わたしの言葉、綺麗ごと、少女の甘い夢物語。
それが信じられぬと叫ぶ魔王。
見た目はわたしよりも少し年上にしか見えない風貌。
しかし、伝え聞くだけでも数百年も魔族国内で苦しんできたらしい。
……じゃあ、証拠を見せつけましょうか。
「あら? それはおかしいですわね。わたくし、五年もしないうちに世界を変えてしまいましたわ。その威力を魔王陛下は御身で感じませんでしたか? 地を走る戦車、空を飛ぶ飛行機、見えない距離から当たる大砲、巨大な騎士が銃を撃つさまを」
「う! そ、それは……」
「その上に、魔族が作り上げた街。ゴルグラスを見ましたでしょ。素晴らしいインフラ、快適な住居。そして只人も魔族も共に語り合う酒場。あ、魔王陛下、貴方さまが街を直々に破壊してしまいましたね。賠償金は……。まあ、その話は後日にしましょうか」
わたしは、魔王に証拠。
わたしが世界を変え、本来未来にならないと作れない技術で世界を変えていった事を告げる。
「同じ街を、魔族国内にも作ろうと思っていますの。また、その街々や工場、鉱山に農場を繋ぐ道路や鉄道もですわ。何処にでも食品や資源。更には軍隊を素早く確実に送り付ける手法ですの」
更にトドメ。
高度なインフラと輸送能力を作り上げられると、わたしは魔王に告げる。
それは、古代から軍隊が望んできたもの。
何処にでも必要な物資と軍隊を輸送できれば、負けは無い。
……他だと、偵察を空から出来るのも、わたしが魔王軍に対し有利な原因よね。あと、魔王軍が現地から搾取しているのは知っているけれど、それでも軍の維持が難しいのは、流石に魔王さまなら理解しているよね。
軍を率いてきた者なら、ロジスティック。
兵站がどれだけ大変かは、理解できるだろう。
ましては、賢い魔王陛下なら。
「……。オレに一体どうしろというのだ。あの商社という奴らには、手も足も出ないのだぞ」
……よし! 『餌』に食いついた。ここからが勝負! 部屋の外で今にもティオさまが飛んできそうな気配もするけどね。
ティオさまやグリシュさま、お父さまに王陛下。
更には他の人々は、わたしの行動を止めようとした。
しかし商社へは、他に手が無いのも事実。
なので、皆はわたしの『罠』に掛けてくれた。
しかし酷く心配してくれて、何かあったら飛び出す算段をしつつも、護衛に最強の守護者。
ファフさんを貸してくれたのだ。
「そこは今から考えますが、こちらの世界にある敵の拠点を見つけ、衛星兵器の制御を奪い、更にこれ以上のロケット打ち上げを止めましょう。そうすれば、かなり時間を稼げます。わたくしには科学が、魔王陛下には魔法があります。お互いに手を組んで、『運命』に復讐しませんか?」
「……運命に復讐か。そういえば、オマエも滅びの運命に足掻いてきた存在だったな」
わたしのさし伸ばした手に、魔王は反応する。
たぶん、「運命」に復讐するという言葉が響いたのだろう。
「はい。もう悲しい事は嫌です。なので、共に手を取りましょう、魔王陛下。そうですねぇ。まずは、一緒に食事をしましょうか」
「ん、飯だと!? 早くしろ! ここの飯は偉く旨い。次は、粥ではなく、ちゃんとしたものを食わせろ!」
まさか、最後の一押し。
美味しい食事が、魔王を味方に引き入れる最大のキーだとは、食事後まで気が付かなかったのだ。




