第49話(累計 第222話) ダムガール、今後の方針に悩む。
「アミお姉さん……。これからの事を決めたいと思うのですが……」
「は、はい」
魔王との戦闘が終了した翌日。
わたし達は一旦コンビットスに集結し、今後の対応を話し合うことになった。
「敵の正体ですが、異世界。わたし達が住むココとは全く違う場所から、世界を渉り歩いて商売を行う組織。この世界には魔法技術を求めてきた様です」
わたしはティオさまに促されて、敵。
多次元商社について、集まってくれた仲間たちに、分かるように話し出した。
……しばらくは、敵も大きくは動かないだろうけれど、今後どうしましょう?
わたしは、戦場で敵「デミウルゴス」のエージェント。
ナイト798がドローン越しに語った事を思い出しながら、話しだした。
◆ ◇ ◆ ◇
「モノポールですってぇぇ! そんなものをどうやって運んで来たんですか? あれって無茶苦茶重い素粒子……だったっけ?」
「わははは! そこまでご存じとは、前世では理系。それも大学院クラスの知識と教養が無ければ知らない事ですよ、アミータさま。ああ、実に楽しい。今まで、私は多くの世界を担当してきましたが、モノポール・エンジンで驚いてくれた顧客は初めてです」
わたしの驚きに、上機嫌で反応してくれる死の商人。
中世風の世界、文字すら読めない人の方が多い野蛮な場所でSFを語れる相手に出会えてうれしいのだろう。
まだ、水蒸気爆発後の雨が降りしきる中、ドローンから嬉しそうな声が聞こえる。
……わたしも、前世で時々読んでたSFとかアニメで知らなきゃ、反応出来ないよ。確か、木星みたいな高重力下で捕まえる事が出来るかもって話だったっけ?
「アミちゃん姫さま、アタシには何をお話しているんだか、分かりませんですぅ」
「ヨハナちゃん。今は会話内容をCICに送って記録しておいてね。後で、聞き直した方がいいかもだから」
わたしの横、コクピット内のサブシートに座るヨハナちゃん。
わたしと敵の会話が意味不明と混乱状態。
でも、ここで会話を止める訳にもいかないので、外部拡声魔道具をいったんオフにして、小声で命令。
いや、お願いをする。
「はいですぅ。姫さま」
「ありがとね」
もう付き合いが十年近くになるヨハナちゃん。
ツーカーで話が通じるのが良い。
親友としても、配下としても実に頼りになる仲間だ。
「お、おほん。話が途中で途切れてごめんなさい。そちらさまが高度な科学技術をお持ちなのは理解しました。ですが、それこそ世界を作り変えられる程のエネルギーを得られるのに、どうして他所の世界に手を伸ばすのですか?」
「いえいえ。そちらも外部との通信をしなくてはならんでしょうし。あ、魔術通信までは流石に傍受は難しいです。レーザー盗聴で機体内の会話くらいは盗めますけどね。ご質問ですが、あくまで私論で良ければお話しできますけど、それで良いでしょうか?」
律儀に魔法通信を自由にと言ってくれるエージェント。
レーザー盗聴しているってワザと言ってくれるのは、明らかにこちらを舐めている気がする。
……窓ガラスとか装甲の振動をレーザーで読み取るのがレーザー盗聴だったっけ? 前世で初めて聞いた時に、びっくりした覚えがあるの。
「ええ。お願いします。今後の判断材料にしたいので。あ、こちらは救護活動もしなくてはならないので、出来れば手短にお願い致しますわ」
「分かりました。詳細な商談は後日、そちら様。コンビットスと呼ばれる街に直接お伺いしてご説明しますね。私どもが他の世界に手を出す理由。技術を求めるというのもありますが、エンタメ。娯楽を求めてなんですよ。今回、アミータさまの冒険は、実に面白いエンタメでした。我らも最初は、業務の邪魔になると思い、数々の妨害策を駆使しましたが、貴女は全て踏み越えてきました」
なんと、わたしや魔王、法王は異世界の人の娯楽対象。
エンタメ、リアリティショーの登場人物扱いらしい。
「うら若く可愛らしい少女が異世界知識を駆使し、幾多の苦難を踏破していく。エンタメとしても最上級の扱い。我が社の配信を見てくださっているオーディエンス。観客にも受けが非常にいいんです」
「……わたくしの苦労が。魔王陛下の苦悩を覗き見るのがエンタメですか……。あえて言わせて頂きますが、悪趣味と思いませんですの?」
自分や他の人々、魔王の苦悩や生き死にをエンタメと見られる。
流石にわたしもプチンと切れそうになって、苦言を言ってしまう。
「まあ、悪趣味なのは私も否定しませんです。全てのモノが簡単に手に入り、寿命すら超越した我らにとって、他の世界の生命力あふれた生き方は眩しいんです」
「寿命すら超越した? 貴方がたは、一体何になってしまったんですか?」
スピーカー越しの苦笑気味。
自虐に聞こえるエージェントの声。
不老不死を得たと聞こえたので、わたしは怒りをふっとばして尋ねてしてしまう。
「おっと。長話して余計な事まで話してしまいました。では、続きは……。そうですね、七日後のお昼過ぎにでもコンビットスの公館にお伺いしますね。では、途中ではありますが、失礼します。アミータさま、実に楽しいお話ありがとうございました。次回もこのように楽しくお話出来ればと思います。それでは!」
「ちょ、ちょっと待ってください! あ!?」
しかし、話し過ぎた事に気が付いた死の商人のエージェントは、わたしの制止も効かずに、光学迷彩を起動。
雨が止んで太陽が昇った空の中。
四枚羽ヘリコプタードローンは、あっという間にわたしの目の前から消えていった。
「……アミお姉さん。一体、彼は何を話していたのですか? お姉さんの様子から、かなり危険な内容に見えましたが?」
「ティオさま。しばしお時間を頂けますか? わたくしの中で整理してからお話します。この話は、多くの仲間と共有したいので、コンビットスに帰ってから会談しましょう」
強大な敵を前にし、わたしはどうすればいいのか。
考え込んでしまった。
……次元を渉り、超科学技術を持つ不老不死の敵。どう相手したら良いの!?




