第47話(累計 第220話) ダムガール、死の商人に怒りを覚える!!
「どうして、オレだけが酷い目にあわんといかんのだぁぁ!」
天空の彼方、宇宙から降り注ぐ光の柱。
人工衛星からのレーザー攻撃を受け、苦しみながら怨嗟を叫ぶ魔王。
身長、数十メートルはある怪獣じみた異形の姿も、さしものレーザー相手になすすべがない。
強烈な一撃を受け、巨大な身体の表面が焼き尽くされ、爆発しながら粘液ごと蒸発していく。
体表に浮かんだ沢山の眼球もパンパンと破裂していくのが、実に痛々しい。
「皆さん! 宇宙からの第二射以降が考えられます。射線上になると思われる魔王の上空、および魔王近隣から一旦距離を取りつつも絶えず移動していてくださいませ。ヨハナちゃん、CICにも詳細の連絡を!」
「わ、わかりました。アミお姉さん。各自、アミータ姫の指示に従い、回避運動を取ってください」
「はいです、アミちゃん姫さま」
わたしは、魔王から急ぎ距離を取りつつ、周囲への警告を大声で行う。
ティオさまやヨハナちゃんが早急に動いてくれたおかげで、我らの軍隊はパニックにもならず被害範囲から避難をしてくれるのは、助かる。
……このあたり、兵の練度が高くて助かるわ。練度が低いバカどもだと、戦場で命令を無視するわ、勝手な行動をするわ、最悪は略奪に婦女暴行までやらかすからね。
「こっちに矛先が向かなきゃいいけど」
「ですね、アミちゃん姫さま。もう受け止めるのは怖くて、こりごりですぅ」
わたしのつぶやきに、ヨハナちゃんも心配そうな声をだす。
あまりに想定外の戦闘に、パニックにならないだけ、マシという状態だ。
……しかし、どうしましょうかしら? このまま魔王が倒されても、今度は対処不能の敵が相手になっちゃうの。
先ほどの一撃は、ほとんど真上からの狙撃。
地上からの相対移動速度が速い低軌道の人工衛星なら、あと一撃くらいは地平線に消えるまで撃つことが可能だろう。
……先ほど、わたしたちを狙った攻撃も三発撃ってきたからね。多分、しばらくターゲットは魔王だと思うけれど、いつ何時こちらを撃ってくるかわからないから、怖いわ。
既に、敵衛星からの攻撃を跳ね返して、衛星を破壊した攻撃反射魔法は種切れ。
一旦、再装填をしないと使用不可能。
今、わたしたちが狙われると非常に困るのだ。
……反射魔方陣を作るのには、空間に散布するために魔法銀の粉末が沢山必要なんだけど、もう売り切れ。ただでさえ、弾頭に魔法銀を沢山使っちゃって、今後の経済復興が大変なことになりそう。魔法銀は、鉄やアルミと違って輸入に頼るしかないからねぇ。
「ウォォォ! どうしてオレを裏切ったぁ! 『天の光』は、小娘を撃つためのものではなかったのかぁ!?」
「最初は、そのつもりでしたよ、魔王陛下。ですが、貴方があまりに愚かなので、切り捨てる。この度、損切りすることに致しました」
魔王の悲しげな咆哮。
それに被らせるように、どこからか軽薄な若い男の声が戦場に響く。
「ナイト! 今になってどうして、オレを裏切ったぁぁ!?」
「もう貴方さまからは得るものが何もないですし、この戦闘を見ていますオーディエンスさま達からも、貴方さまを処分すべきという意見が大半なのですよ、魔王陛下。やはり若くて綺麗な女性の方が華がありますからね」
若い男は、なおも続けさまに空から放たれるレーザーに穿たれる魔王を嘲笑するように嘲る。
「魔王陛下にお話している貴方さまは何者ですか? お話をお聞きする限り、異世界の死の商人の様ですか? 魔王さまを虐めて何がしたいんですか!?」
「これはこれは、ヴァデリア伯爵令嬢アミータさま。ご機嫌は如何でしょうか? 貴女さまを邪魔する魔王は、とっとと処分しますので、しばしお待ちくださいませ」
あまりに魔王が可哀そうになり、思わず謎の存在に問いかけてしまったわたし。
謎の声、死の商人は慇懃無礼な様子で、魔王を早急に殺すと冷たく言い放つ。
……こんな奴に姫さま扱いされても嫌なだけ。あ! もう逢いたくないアイツに似ているんだ!
わたしの脳裏、前世でわたしを裏切った男の顔がぼんやりと浮かぶ。
アイツも、ぺらぺらと軽薄そうな言葉で人を騙す奴だった。
「ぐわぁぁ。この裏切者めぇ、許さん」
「裏切ったのは、貴方さまの方が先ではないですか? 我らを利用してた後に、切りすてるおつもり。世界ごと自殺なさるつもりだったのでしょ? だったら、早く死んでくださいな、魔王陛下。アミータさま。今から最大級の攻撃を致しますので、早急にご避難を」
魔王が叫び散らす中、冷酷に魔王への死刑宣告を告げる死の商人。
わたしが周囲に避難指示を飛ばす前に、魔王の上に数本の死の光。
複数の戦闘衛星からのレーザー光が同時に撃ち下ろされた。
「きゃ!。みんな、逃げてぇぇ!!」
わたしの叫び声をかき消すように爆散する魔王。
おそらくはレーザーによる水蒸気爆発。
魔王は跡形もなく吹き飛び、わたしの駆る機体も巻き起こった爆風で吹き飛ばされた。
「あら、思ったよりも酷い爆発でしたね。ごめんなさいね、アミータさま」
一切、悪意のない風に謝る死の商人。
その軽薄な様子に、わたしは怒りを覚えた。




