第22話:ダム・ガール、襲撃事件の犯人を推理する。
「ティオさまとわたくしが魔族軍に襲われた事件は、明らかに計画的犯行。軍事作戦だったと思うのです」
わたしは襲撃事件について、誰かによって計画されていたとティオさまに告げる
「確かにアミお姉さんのお話の通り、王国では開発前の最新兵器を使用してまでボクらを襲ったのは、普通じゃないよね。でも、これだけじゃ、どこまで計画されていたかなんてわからないんだけど」
「では、ティオさま。魔族が多数領内に入って長期間隠れ通せると思いですか? また、正確にファフさんの飛行経路に砲台を多数設置して、長期間バレないとでも?」
わたしは、ずっと考えていた事をティオさまに告げる。
「あ!? そんな筈は無いよ。ウチの騎士団にしろ、兵士達にしろ。そこまでバカじゃない……」
「私やティオ坊ちゃまでは思いつかない事を見抜く。異界の知識と教育があるとはいえ、素晴らしいですね、アミータさまは」
「えっへん! ウチのアミちゃん姫さまは優秀なの!」
わたしのヒントで皆が気が付く。
……エッヘンは余計だと思うよ、ヨハナちゃん。ヨハナちゃんってば、私を過剰に崇拝している気もするのよね。でも、ツッコミは厳しいし。
「ええ。彼らが公爵領に進行してきたのは、襲撃の直前。こと、砲台を設置したのは、あの日の早朝くらいじゃないかしら? ここまで正確に襲撃方法と襲撃時間を決められる。その理由にティオさまなら、お気づきになられるかと」
そして、わたしは次のヒントを与える。
襲撃方法と襲撃時間を指定した計画だと。
「……。お姉さん、それはボクの行動が敵にバレていたという事だね。なら、ボクの周囲に『草』が……」
「おそらくは違うでしょう。こちらに『草』。それも作戦立案に関与できるレベルの方がいらっしゃるなら、手術中のティオさまを襲うなり、医師の転移を妨害すれば失態にならなかったでしょうから」
ティオさまは、身近にスパイがいる事を恐怖したが、わたしの予想では公爵領には上位スパイは存在しない。
簡単にティオさまの命を狙えるチャンスがいくらでもあるのに、実行されていないのが証拠。
……情報を一部流すくらいのスパイはいるかもしれないけどね。
「アミちゃん。もしかして伯爵領に……」
「ええ。たぶんそうね、ヨハナちゃん。だから、今回は秘密会談にしたの。ウチの誰かなら、ティオさまの出発日時が分かるし、概ねのルートも分かる。けれども襲撃の結果を直ぐに知る事も出来ず、公爵領での更なる追撃は不可能ですわ」
先にヨハナちゃんが答えを言ってくれた。
そう、計画に深く関わる「草」は伯爵領にいると。
「お姉さんの推理どおりだとすれば、伯爵家内、もしくは雇人に魔族国家に通じている人がいるんだね。でも、今までお姉さんが一切被害を受けていないのは?」
「公爵閣下、ティオさまとわたしが接触したことで起きる動きを魔族側が警戒したのかもですわ。わたくし、少々帝都の洪水で活躍しすぎましたし。まあ、おそらく何処の貴族にも『草』は潜んでいます。情報戦を行わない方が不自然ですの。こちらでも、わたくしの情報を得ますのに『草』を使いましたよね?」
「……ティオ坊ちゃま。アミータさまをお手元に置かれたのは正解でした。この方は、何処まで英知なのでしょうか?」
「ああ。本当にすごいよ、お姉さん。敵の考えまで読めるんだからね!」
わたしがサラっと話した事で驚くティオさま、ファフさん。
おそらく「前世」でのフィクションや歴史を沢山知っているわたしと、まだ本格的な貴族教育を受ける前のティオさまでは元からの情報量が違い過ぎるからだろう。
……諜報戦は、貴族の間でも常識とは思うけれどね。
「皆さま、そんなに褒めないでくださいませ。わたくし、たまたま異世界の知識があるだけの普通の女の子なのですから」
「アミちゃん姫さまが普通ですって? ぜーったい違うもん。何処の伯爵令嬢さまが屋敷抜け出して、堤防治すんですか?。アミータ姫さまは、ご自分の常識外れさと存在価値をご理解くださいませ!」
あまりに皆に褒められるので、普通の女の子と言い張るがヨハナちゃんからツッコミを受ける。
何処に平民メイドからツッコミされる伯爵令嬢が居ようか?
「……そーだね、ヨハナちゃん。わたくし、今後は自重しますぅ」
ぐうの音も出ないわたしだった。
まる。
◆ ◇ ◆ ◇
「今日はアミお姉さんに紹介したい人がいるんだ。お姉さんは建物を作りたいんだよね。だったら当家お抱えの技術者と話をするのが一番だと思ったんだ」
「はい。宜しくお願い致しますわ」
秘密会談から数日後。
ようやく片手杖で歩けるようになったティオさま。
わたしに、お抱えの技術者を紹介してくれることになった。
……襲撃事件の裏事情。情報漏れに関しては、まだ確定情報じゃないから陛下にも内密にしてもらったの。まあ、賢い陛下なら誰が裏に居るかくらいはご存じかもね。
いくら、わたしが頑張ろうとも理論や設計までがやっと。
実際に建物や技術を形にしていくのは、技術者たち。
「前世」で失敗した独りよがりは二度としない。
……現場のおっちゃんや機械オペレーターの人、大工さんがいないと、わたしだけじゃ何も出来ないもん。仕事に貴賤なんてないわ!
「お姉さんなら、只人族じゃなきゃダメとかは言わないよね?」
「どうされましたか、ティオさま。わたくし、一番嫌いなのは差別ですの! 何も知らずに姿かたちが違う、風習が違うからと蔑んだりイジメるのは間違いと思っております。そういう意味では貴族など、威張るだけのダメな存在ですわ!」
「実に手厳しいお言葉ですね、アミータさまは……」
「姫さま。ご自分の立場を考えずに口に出されますから、いつも困っていますの、ファフさま」
ティオさまが突然尋ねた事に、わたしの中の「常識」を語ってみたが、ファフさんには呆れられ、ヨハナちゃんにはまた突っ込まれる。
どうも、わたしの中の「普通」や「常識」は貴族令嬢平均から大きくずれているらしい。
……貴族学校でも浮いていたのは、こういう訳だったのね。お義母さまがお怒りだったの、半分くらいはわたしが悪かったのかもぉ。あ、もしかしてティオさまが聞いてきたのは……。
「ま、まあ。そんな威張るだけの存在にならないように、ボクも気を付けようかな。さて、この部屋に彼らを待たせてあるんだ
「はい、ティオさま」
わたしは扉の向こうに待つ、新たな出会いに期待した。
……技術者系の只人族以外なら、ドワーフ族とか小人族さん、獣族の人かな? エルフ族は魔法系になるし、王都でもまず見ないわね。




