第46話(累計 第219話) ダムガール、魔王を論破したい。
「世界と共に破滅を迎えよう。そう思ったのだ!」
激高している魔王は叫ぶ。
世界に絶望して、自分と共に滅ぼうと。
「魔王陛下、貴方は世界に絶望なされたのですか? ですが、積極的に自殺を世界と共になさるのは、わたくし困ります! わたくしには、やりたいことも守りたい人たちもいるんですから」
……拡張自殺をされても、こっちは困るのよ。まだやりたいことが多いんだもん!
「では、オマエは創造主や異世界からの介入者に対し、どう対処するのだ? 何もわからぬオレたちには、どうにも出来ぬぞ。オレはオマエを襲った『天空の光』を見て、絶望したのだよ」
「そこは……。なんとかしたいとは思っていますが、即時出来る対応策が思いつかないで困っているのは事実です」
魔王に痛いところを突かれたわたし。
正直に対処する策が無い事を魔王に話してしまう。
……だって、わたしのところに敵からの直接接触はないんだもん。暗殺者や攻撃だけされても、対応に困るよ。
創造主……は、取り合えず今は関係ない。
どうせ、何処かの同人ゲームの作者。
今更、ゲームを元に作られた世界に介入など出来はしないだろう。
……というか、どうやったらゲームが世界構築になるかなんて、わたしにも理解不能だわ。
しかし、異世界からの介入者。
人工衛星からのビーム攻撃などを繰り出してくる敵に対しては、対処療法しか今のところない。
敵本拠に殴りこむことも出来ないので、いつ天空から襲ってくるか分からない攻撃におびえていないといけない。
「ふん。『英知の女神』と呼ばれるオマエでもその程度か……」
「宇宙兵器への対抗策は、時間をかければ何とかはなります。原理は分かりますし、こちらも宇宙へのアクセス手段を開発すればいいだけ。ですが、異世界への転移ともなれば、原理すら不明。魔法でも、そのようなモノは只人の間には知られておらず、お手上げ状態です」
魔王から残念だなと言われてしまうのだが、正直世界を越えるなんてのは不可能。
宇宙になら、ロケットさえ作れれば到達する事は可能。
敵が人工衛星を打ち上げたのなら、同じような事が出来るはずだ。
「そうか。ではしょうがない。オマエを喰らい、死の商人を喰らい、全てを我が物にしようぞ。流石に死の商人なら世界渡りの秘密くらい知っていよう」
わたしが異世界の住人に対し、対抗策を知らないと言った途端。
魔王は、わたしや異世界のエージェントを共に喰らい、全てを自分のものにすると言い放つ。
ここまで頑張って交渉した事を全部おじゃんにする魔王の発言に、流石にわたしもキレた。
「まだ、そんな事をおっしゃるんですか、魔王陛下!? 貴方には共存共栄とか中庸とか妥協とかいう言葉は無いんですか?」
「そんなものはオレには無い。オレにとって全てはゼロか百。オレのモノにならん世界などいらぬし、オレのいう事を聞かぬ者など不必要。世界のすべてを喰らいつくそうぞぉ!」
魔王は、止めていた動きを再開。
わたしが駆る機体に向けて、触手を伸ばした。
「交渉決裂と判断! 各個、攻撃を再開。魔王をここで倒します」
わたしは拡声器ごしに大声を上げながら回避行動を取る。
そして、しばし距離をとってバインダー内の対魔王ロケット弾の発射準備をしようとする。
「小娘、逃げるなぁ! 黙ってオレに喰われろー!」
「嫌ですぅぅ。ヨハナちゃん、発射準備をお願い」
「御意ですぅ」
今まで止んでいた砲撃や爆撃が再開され、巨大な魔王の表面でいくつもの爆炎の華が咲く。
ティオさまや他のゴーレム、多脚戦車が戦場を疾走。
絶え間なく砲撃を繰り返す。
また、遠くから飛来するロケット弾や砲弾。
上空から自由落下にて音速近くまで加速した大型爆弾。
それらが、全て魔王に突き刺さり爆発する。
「このぉぉ! 小虫風情がぁ、ジャマだぁぁ!」
……魔王、もう魔力シールドも上手く張れないようね。あれだけ、念入りに魔法銀弾頭をぶち込めば、魔力干渉も起きるに違いないの。
上手く距離を取ったわたし。
機体をしゃがませ、両肩のバインダーを展開。
その中身、多連装ロケットランチャーを魔王に向けた。
「魔王陛下、御覚悟を……」
わたしが引き金を引こうとした瞬間。
目前に何か。
細い銀の糸が上空から魔王に向けて降りていたのを見た。
「あ! 各自、魔王から離れて! もう一度、衛星からの攻撃。『光の矢』が落ちてきますわ!」
発射体制から急ぎバックダッシュをしたわたし。
その直後に銀の糸は太い光の束となり、魔王を一気に焼き払う。
……まだ攻撃衛星が残っていたのね。低軌道衛星だから、何個かはあるとは思ってたけど。でも、予備照射があるのを見えたから、これからは対応が出来そうなの。
「グワァァ! う、裏切ったのか、死の商人。『ナイト798』。そして、『デミウルゴス』めぇぇ!」
光の柱に焼き払われながら、敵の名を叫ぶ魔王。
しかし、怪獣王クラスの巨体を持つ魔王は、一撃程度では焼き尽くせない。
「誰も彼もがオレを虐めるのかぁぁ!」
魔王の叫びが、むなしく戦場に広がった。




