第44話(累計 第217話) ダムガール、魔王と問答を開始する!!
「やっぱり、貴方も異世界転生者だったのね。魔王!」
わたしは魔王の咆哮。
異世界を制覇する存在だという叫びに、ついぞ反応してしまった。
「ち、違う! 余、いや、オレの親友がぁ。アイツがそうだった。オレがアイツを喰って……。冷たくなっていくアイツを泣きながら喰らって、この世界がツクリモノ! オレが悪役として滅ぼされる物語の中だと知ったのだぁ!!」
しかし、真実はわたしの予想と話は違う方向に流れた。
「え!? ち、ちょっと待って。魔王陛下、貴方は自分が悪役になるのを知ってて、それでも悪役、魔王になったの!?」
「それが悪い事かぁぁ! 虐げられてきたオレには、成り上がってこんなバカな世界に復讐をするしかなかった。覇道こそ、オレに残された唯一の道。小娘よ、オマエも悪役に追い込まれたはずなのに、どうしてそんなに甘ちゃんなのだぁぁぁ! ああ、あのような死の商人。異世界の腹黒いヤツらの言うことなど聞かなければ、こんなことにはぁぁぁ!」
わたしの一言が「地雷」だったのか、でたらめに生えた手足や触手を振り回しながら、過去に対する怨嗟を叫ぶ魔王。
その様子を見、どうやら魔王とじっくり話す必要が出てきたと、わたしは思った。
……元から魔王も役割を無理やり与えられた被害者だと思ってたけど、いろんな事情があるのね。それに第三の敵の情報もかなり知っているみたい!
「ティオさま。魔王への攻撃をいったん止めて良いですか? わたくし、魔王陛下と直接お話をしたいと思うのです!」
「こんな時に、いきなり何を言い出すんですか、アミお姉さん? あともう少しで魔王を討伐できるのに!?」
「またまた斜め上のご発言。アタシもびっくりですけど、理由がちゃんとあるんでしょうね、アミちゃん姫さま?」
まだ砲撃が続く中、わたしの発言にびっくりしているティオさま。
……近距離会話は拡声魔術具経由なの。敵にも聞かれちゃうし、爆音で聞こえない時もあるのは難点だけど、簡単だしね。
ヨハナちゃんがニヤニヤ顔で、今度は何をしてくれるのかなぁって雰囲気なのは、まあ今更な気はする。
「今更何を言う!? 小娘めぇ、オレを侮辱。バカにするのかぁ!!」
「バカになんてしませんですわ、魔王陛下。本気でバカにするのなら、話もせずに一方的に殲滅してます。お互いの『正義』を掲げあって戦うんですから、わたくしには陛下に対し尊敬はあっても侮辱する気はないです。ねえ、お話しませんですか、魔王陛下? お互いに落としどころもあるかもです。少なくとも異世界からの死の商人は共通の敵ですもの」
拡声器経由なので、ティオさまに向けた話は魔王にも筒抜け。
自分を侮辱したと怒る魔王に、わたしは説得を続ける。
「落としどころだとぉぉ! さては、我が配下であったグリシュやダイロンを、その小憎らしい舌先で丸め込んだに違いない!」
「魔王陛下。あなた様のご発言は、ある意味では間違ってはいませんですけれど、話し合いもせずに殺しあうのは不毛です。零か百かはなく、お互いに半々で損しない方が良いのではないですか?」
魔王の強酸性粘液や触手攻撃をひらりひらりとかわしながら問答を続けるわたし。
いつの間にか他の人は攻撃の手を止めて、わたしと魔王の言葉に耳を傾けてくれだした。
「小娘の都合なぞ、知るか!! オレが全部奪えば済む話よ」
しかし、魔王はわたしの話に耳を傾ける様子を見せず、執拗にわたしの駆るタロス号を執拗に狙い、攻撃を繰り出す。
「もー、魔王のばかぁぁ! 人の話は黙って聞けぇぇ!」
お人よしと言われがちなわたしでも、流石に馬耳東風な魔王に怒りを覚える。
バカと叫びながら、ゴーレムの背中に数本ほど背負わせていた擲弾発射器を引き抜き、魔王へ目掛けて連続発射した。
「ぐ、魔力シールドを撃ち抜くかぁ!」
「最初から魔王対策をしていたんだもん。攻撃が通るのは当り前よ!」
バズーカーよりも大型の擲弾が着弾。
それは、炸裂後に内部に仕込んでおいた魔法銀の破片をブチ巻き、魔王の魔力シールドをモノともしない。
「まだ、話を無視するというのなら、問答無用に殲滅します。これ以上、爆撃や砲撃を喰らいたいですか?」
わたしは機体の両肩バインダーを開かせ、多数のロケット弾が並ぶランチャーを魔王に向ける。
……まだしばらくは時間稼ぎをしなきゃ。聞かなきゃならない話も多いし、最後の切り札。聖剣とエリーザは、まだこっちに向かって移動中なの。
「ぐ! ……しょうがあるまい。オレとて王を名乗る者。小娘の話くらいは聞いてやろうぞ。だがな、オレにとって益無き物であれば、容赦なく国ごと滅ぼしてやろうぞ!!」
「ようやくお話をお聞きいただけるようで幸いです。わたくしとて、一方的虐殺は嫌いですから」
ようやく魔王が動きを止めたので、わたしもランチャーを閉じ、バズーカーを地面に向ける。
何時でも回避行動に移れるよう、警戒しつつも会話の準備をした。
……話をするにも力が必要。悲しいけど、バカ相手には武力を見せ札にしなきゃならん時はあるのよね。だから、『一方的虐殺』って嫌味の一言くらいはいいでしょ!
「ヨハナちゃん。エリーザは後どのくらいで到着しそう?」
「確認します。……。数分前に、コンビットス郊外の空港から自動車に乗り換え。残り三十分程度で到着との事です」
わたしは、拡声器をOFFにし、ヨハナちゃんに妹エリーザの現在位置を聞く。
最悪の場合として、魔王を討伐する決め手。
聖女たるエリーザと星の聖剣「極光」を使う段取りは事前にしていた。
魔王襲来の一報をエリーザに入れ、彼女は法王国から借り受けた聖剣と共に伯爵領の飛行場から一路コンビットスまで飛行。
後は、輸送部隊と共にこちらに向かってくれている。
「アミお姉さん。心配ではありますが、全部お任せします。どうぞ、存分に魔王陛下と会談をなさってくださいませ」
「ありがとう存じます、ティオさま。ふぅぅ。では、魔王陛下にお尋ねします。どうして貴方は魔王となる道を選んでしまったのでしょうか?」
機体の拡声器をONにしたわたし。
ティオさまの声援を受け、深呼吸をしたのちに魔王との問答を開始した。




