第39話(累計 第213話) ダムガール、天空への逆転の一撃!!
「本当にこんな場所から空中投棄をして宜しいんですか、姫さま」
「ええ、遠慮なく落として下さいませ。その代わり、投棄しだい、急いで戦闘空域から逃げてくださいね。貴方がたも、わたくしの大事な仲間なのですから」
今、わたしたちは輸送機での限界高度まで上昇している。
一応、酸素マスクを各員が装備しているが、空気が薄くなればプロペラの効率も下がってくる。
……内燃エンジンじゃないから、過給機無しでも不具合が無いのは、魔導エンジンの利点だよね。大体、一万メートルくらいかな? 高い方が落下時間を稼げるからね。
「では、姫さま。ご武運をお祈りいたします。投棄!」
「はい、離脱します」
輸送機の後部搬入口から機体を乗せたパレットごと、ガタンと空中に投下される。
ふわりと浮遊感を感じるも、急ぎパレットから離脱。
スラスターを吹かしつつも両肩につけた羽型バインダーを展開して、激しく減速。
機体をくるり回転させ、お腹側を上に向けて天空を見上げる。
「アミちゃん。CICから連絡。推定、後一分程度で次弾が発射されるとの事です」
「了解です。バインダーより魔法銀砂散布ロケット弾、発射します」
……CICで衛星からの攻撃時間差をカウントしてくれていたの。おかげで、大体の発射タイミングが分かったわ。地上落下までは三分ちょい。ちょうど良い時間ね。
展開していた羽型バインダー裏に仕込んでいた多連装ロケットランチャー。
そこから一気にロケット弾を天空に向けて沢山撃ち出す。
「たまやー!」
「アミちゃん、それ何ですかぁ??」
「気合入れの掛け声よー!」
酸素マスクごしに、気合入れの為と叫ぶわたし。
蒼穹の空中でロケット弾が次々と炸裂。
空に、魔法銀製の粉末が広範囲にまき散らされる。
「アミちゃん。推定される敵の位置で熱反応が上昇。発射体制に入っていると思われます」
「ヨハナちゃん。遮光眼鏡を準備して。出来たら片目だけで見る様にしたらいいわ」
……片目づつ見ていたら、急に暗くなっても視界が完全に失われないからね。暗順応の逆。
メインモニターに空の上。
やや高度がさがりつつある場所で熱映像が白く輝く星。
レーザー攻撃衛星から、大量の赤外線が出ているのが映る。
またコクピット前の防弾ガラスごしにも、急に明るくなった星が見えた。
「熱反応最大! 来ます」
「魔法陣起動、散布魔法銀と反応!! いっけー<反射鏡>!!」
わたしは、追加された機能。
アル先生が作ってくださった特殊魔法陣を起動する。
魔力がゴーレムから上空に放出され、空中に散布された魔法銀の粉末と反応。
機体の少し前。
天空に銀色の巨大な鏡が形成された。
「くぅぅぅ! ヨハナちゃん、魔力制御を」
「はいですぅぅ」
空に浮かぶ鏡が完成した次の瞬間。
すさまじい光が、角度が低く地面に近い空から降ってくる。
その熱量は凄まじく、鏡越しにわたしのゴーレムを焼こうとした。
「きゃ! 熱い!」
「眩しいですぅぅ」
鏡が壊れそうになるのを、わたしは必死に魔力を注ぎ込んで維持。
宇宙空間から降り注ぐ激光を受け流す。
「ま、まだぁ、まだぁぁぁ!!」
「反射角が、敵と軸がずれているみたいですぅ」
半透明な状態の鏡越しに天空の彼方へとレーザー光を跳ね返しているが、敵の攻撃が一向に止まらない。
おそらく、ちゃんと敵衛星に向かってレーザーが反射しきれていない様だ。
「どっこいしょぉぉ!」
わたしは、魔力を制御し空中の鏡を少し傾ける。
人工衛星が移動しているだろう地平線に向かう方角へ反射角をずらして、レーザー光を撃ち返す。
「吹っ飛べぇぇ!」
「残留魔力、もう切れますぅぅ!」
乙女らしからぬ声を上げ、わたしが空を薙ぎ払う様に魔法の鏡を動かした後。
鏡が大きく揺らぐが、突然光が止まった。
「やったの?」
つい、フラグが発ちそうな言葉を呟いたわたし。
今まで閉じていた片目を開き、サングラスを外して視線を空へ。
衛星が移動したであろう場所を見た。
すると、地平線近くで爆発の光。
何かがバラバラになった様子が確認できた。
「ヨハナちゃん、CICに観測依頼。敵衛星がどうなったのかを確認してくださいませ」
「りょ、了解ですぅ。アミちゃん、高度が随分と落ちてます。着地にご注意を! 魔力残量も僅かです」
「了解いたしましたわ」
なんとか、衛星からの攻撃をしのぎ切ったわたし。
とりあえず、敵衛星は破壊。
もしくは何らかの損傷をしたようだ。
更に地平線近くで爆発したのだから、直ぐに地平線の下に衛星が潜る。
攻撃される心配は、最低でも再び上空を通過するまでまず無いだろう。
……例え壊せていなくても、衛星からのレーザー攻撃をしのげると分かっただけでも収穫はあったわね。第一、攻撃衛星が一つとはかぎらないんだもん。
鏡形成魔法を解除。
スラスターとバインダーを駆使して、機体姿勢を上手くコントロール。
着地体勢に持ち込む間に、地上からの距離はもう千メートルを切っていた。
「このまま着地します。ヨハナちゃん、対ショックを」
「はいですぅ」
パラシュートを開きつつ、迫りくる地面に向けてメインスラスターを最大噴射。
後は横への移動にベクトルを変えて、我がタロス号は地面を削りながら着地した。




