第38話(累計 第212話) ダムガール、衛星兵器との対決!
空から降りる光の柱。
それが偵察機を撃墜。
燃え盛る機体と、ゆっくり舞い降りるパラシュート。
それが観測熱気球からの望遠映像経由で、私の駆るタロス号のコクピットモニターに投影される。
「そんな……。一体、空の上に何があるのでしょうか、アミちゃん!?」
各種観測機器が、空の上空を観察している。
しかし、見える範囲。
魔力感知できる範囲にあれだけの攻撃を行った存在は検知できない。
「空の上……。まさか宇宙!? 衛星兵器からの攻撃!? そんな科学技術、わたしにだってまだ出来やしない……。前世世界だって、衛星からの光学兵器なんて開発できていなかったのに??」
「アミちゃん姫さま。各部隊、パニックになってますぅ。お早くお指示をお願い致します」
わたしも怖い考え。
敵が衛星からの光学兵器攻撃を行ったとの想像から、パニックになりかけていた。
しかし、ヨハナちゃんの必死な叫びに正気を取り戻した。
「あ!? そうよね。では、各機。散開しつつ、輸送機は適度な位置で部隊を降下させてくださいませ。ティオさまや他の部隊にも連絡をです!」
「了解です、姫さま。アタシ達はどうしますか?」
ヨハナちゃんがCIC経由で各方面へと連絡をしている間。
わたしは、しばし考える。
……あれだけの光学兵器を撃てる衛星。だったら、太陽光発電程度じゃ無理。最低でも核分裂炉。核融合炉とか他のSF原理な動力炉じゃなきゃ無理よ。射程を考えれば、せいぜい高度1000キロ以下の低軌道衛星だろうけど、ちょうどこの時間に上にいるなんて、偶然とも思えないの……。
静止衛星軌道衛星であれば、地上から見てほぼ同じ位置にある。
しかし、もっと低軌道。
前世世界の国際宇宙ステーションくらいの高度が数百キロだと、惑星を二時間もしないうちに回るから、必ず狙撃に最適の位置にいるとは限らない。
「あ!? そうか。攻撃衛星がちょうど上を通る時間を逆算して魔王は襲撃してきたのね。じゃあ、衛星攻撃を行った敵と魔王は繋がっている……。そうか、異世界からの敵が衛星攻撃をしてきたんだわ!?」
「姫さま? 姫さまが何をおっしゃってるのか、アタシには理解できないんですが、いつまでも空を飛んでいて大丈夫ですか?」
わたしが敵の正体を推理していると、ヨハナちゃんからのツッコミ。
確かにいつまでも飛行していれば、次の衛星攻撃のターゲットになりかねない。
「では、わたくし達も空中発進。滞空しつつ、様子を……」
そう、わたしが命令した瞬間。
再び、空より光の柱が降ってきた。
「きゃ! ? わたしじゃない。何処を狙ったの??」
「ゴーレムを空中展開中の輸送機が狙われましたぁ!」
輸送機カメラから、羽を焼き切られた別の大型輸送機が墜落していくのが見える。
また、搬出途中のゴーレムも落ちていくのが見えた。
「あの機体は!?」
「量産型二号機ですぅ。あ、スラスターが起動し、なんとか着地できそうです。輸送機からも操縦士の脱出を確認!」
「ふぅ……。良かったですわ。どうやら相手の発射スケジュールは数分単位。まだ油断はできませんが」
無人になった大型輸送機が墜落。
落下地点の森が燃えるのが、暗視映像越しに見える。
……ゴーレムも着地には成功したみたい。でも、あの損傷じゃ戦闘は無理ね。
腕がもげ、機体の各所が焼け焦げた金属ゴーレム。
地面に着地はするも、減速しきれず脚部も損傷。
パイロットが多分生き残れただけ、マシという大破状態だ。
……こうなったら、次の斉射までに対応を考えなきゃ。相手の惑星公転速度を考えたら、後は一発だけね。
「姫さまぁぁ。アタシ、怖くてたまりません。どうして天から……。神の世界からアタシたちが襲われるんですか? 神様が本当にいらっしゃるなら、撃たれるべきは魔王でしょ?」
「神の世界というか、宇宙からの攻撃ですが、魔王の味方。『外典』をこちらに持ち込んだ奴らの兵器ですわ。ここでなんとかしないと、次は街ごと撃ちおろされますの。 ……。魔王対抗策でしたが、ここで使いましょう! ヨハナちゃん。アル先生へ通信を繋いでくださいませ」
「は、はいですぅ。CIC、アル先生と魔導通信を繋いでくださいませ」
輸送機のパイロットからは「姫さまと運命を共にしますぜ」と元気な声が聞こえてくるが、機動性の低い輸送機で飛んでいれば、衛星兵器の的にしかならない。
だが、逆に『的』になることで……。
「どうなされました、アミータ姫さま。今は、通信よりもお早く避難なさってください。天からの攻撃にオレが今更何かできることなど、無いでしょう……」
「今が『その時』なんです、アル先生。例の防御魔法機構。どんな攻撃でも跳ね返すんですよね? たとえ魔法攻撃でなくても?」
心配そうなアルビヌス先生の声が魔導通道具から聞こえてくる。
だが、わたしは時間がもったいないと本題に入る。
新たにタロス号に追加装備した防御魔法機能が、敵攻撃に対し機能するかと。
「砲弾や剣など実体のある攻撃に対しては効果は薄いですね。ですが、魔法攻撃は全て。それ以外の攻撃でも、形が無いのならおそらくは……」
「分かりましたわ。では、一世一代の大博打を撃ちます。ティオさまにも連絡をお願いします。わたくし、囮になって敵の攻撃を受け止めますの!」
防御機能が敵の光学兵器にも効果がありそうだとアル先生から聞き、わたしは博打に出る。
このまま一生、敵からの衛星攻撃におびえながら生きていくよりも、ここで勝負をつける。
……他にもニ、三個は衛星兵器が軌道上にありそうだけど、それはそれ。今回、防げるのが立証できれば対抗策にもなりますわ。
「アミお姉さん! 貴女がそんな無茶をなさらなくても良いです! ボクが代わりに……」
ティオさまから悲鳴のような声があがり、自分が身代わりの囮になると言い出すが、それは無理だ。
この防御機能は、中長距離で撃ち合うわたしの機体だからこそ、最大限生かせる機能。
なので、ティオさまのロムルス号には搭載していない。
「ティオさま。貴方さまの機体には、新型防御機能は搭載しておりませんですの。しかし、近接攻撃能力は随一です。魔王討伐はまだ終わっていません。次の戦いまで、ご辛抱をください! わたくし、こんな事で死にませんですわ」
わたしは死ぬつもりは無いし、まだ戦いは終わっていない。
先程から嫌な予感が止まらない。
天空からの攻撃が行われるということは、魔王がまだ生きている可能性が高い。
第三の敵がわたしの暗殺を狙ってにしては、狙撃が中途半端。
わたしが乗るであろう輸送機よりも偵察機の眼を一時的にでも先に潰すという事が、まだ敵作戦の継続を示すだろうから。
「イグナティオさま。こうなったら強情なアミちゃんは辞めないです。時間も無いですし、大丈夫です。アタシが命を賭けてアミちゃんをお守りしますから」
「……分かりました。二人のお姉さん、共に必ず生きて帰ってくださいね。御馳走を準備して待ってます。ご武運を!」
ヨハナちゃんの、しょうがないなぁという声での通信を聞き、ティオさまも納得してくれた。
なら、後は作戦実行だ。
「では、吉報をお待ちください。ヨハナちゃん、ありがと。一緒に帰ろうね」
「アミちゃん。お給金、倍アップをお願いしますね」
冗談気味に笑みを返してくれたヨハナちゃん。
わたしは、嬉しくなって即答した。
「二倍どころか、三倍アップを致しますわぁ!」




