第32話(累計 第206話) ダムガール、大型爆弾の投下を命令する。
「い、一体何が起きている!? ほ、報告を、誰かぁ!」
「突然、爆発が起きました。な、なお、魔導反応は無し! 魔法攻撃ではありません」
明け方の野営地。
朝食の準備も出来、今日の行動計画を小隊長と撃ち合わせようと各自行動を開始していた時。
遠征軍指揮官たる暗黒騎士団長の耳に爆音と衝撃が響いた。
急ぎ黒鎧も纏わずに、宿舎としていた村長宅を飛び出した彼。
村の中心部にある井戸近くに設置した臨時指揮所。
天幕に飛び込むが、依然として爆発が村の中や周囲でいくつも発生。
指揮官から遅れながらも、天幕内へ急ぎやってきた士官やゴーレムパイロットらも混乱していた。
「これは遠距離砲撃では無いですか、師団長どの? このまま、この村に居たら死んでしまいます。早急な移動を意見具申致します」
「そ、そうですね、パイロット殿。部隊各員に緊急命令。急ぎ村より一時離れよと」
借りもの部隊であるゴーレム部隊員から進言された師団長。
全部隊に、村からの緊急撤退命令を出した。
「師団長どの! 周囲が炎に囲まれて逃げるのが難しいです。どうしましょうか」
「ぐぅう。だが、このままでは……。ん? 爆音が聞こえなくなったか?」
村や周囲は炎に囲まれており、逃亡する事は難しい。
しかし、何故か砲撃が緩む。
「師団長! 上空から何かがゆっくりと落ちてきています。何か丸いものが上に布を広げている様に見えています。」
「なんだと!?」
天幕から出た師団長は、配下の声で上空を見上げる。
そこには、ゆらゆらと舞い降りるモノがあった。
「あれは……?」
しかし、それは彼らの多くがこの世で最後に見た風景だった。
◆ ◇ ◆ ◇
「アミータ姫さま。投下高度まで爆撃機が降下しました。いつでも爆弾投下が可能です」
「連絡、ありがとう存じます。地上砲撃の方はどうでしょうか?」
「榴弾砲及びロケット弾による面制圧は、ほぼ目的を達成。村の周囲はテルミット焼夷ロケット弾により火の海。もう逃亡も難しいでしょう……」
コボルト族の若いお姉さんから戦況を聞いたわたし。
まだ手を繋いでくれているティオさまがうなづいてくれたので、大きく深呼吸をして最後の仕上げを命令する。
……テルミット反応。アルミニウム粉と鉄粉が反応すると数千度の熱が発生して、全てを焼き尽くしちゃうわ。アルミニウムの製造に成功したから生まれた悪魔な兵器……。
「ふぅ……。では、最終攻撃。爆撃機による空爆を行います。遠距離砲撃は一時停止。大型爆弾投下後は、偵察機以外は直ちに戦域から脱出。偵察機は高度5000メートル以上に退避を」
「御意!」
「アミちゃん姫さま……」
震えるわたしの手をつなぎ、心配そうな顔のヨハナちゃん。
わたしは無理に表情をつくり、彼女に微笑む。
「もう大丈夫。これで勝敗が決する。敵は全て居なくなるわ……」
「爆撃機、大型爆弾を投下しました! 着弾まで推定二十秒」
「各員、爆音と衝撃波に注意! 偵察機には十分高度をとって安全にと通信を」
偵察機からの映像で、パラシュートを開きユラユラと落ちていく爆弾が見える。
「アミお姉さん、あの大きさの爆弾は投下が初めてですよね。確か、試験でボクが見たのはもっと小さかった覚えがあります」
「はい、ティオさま。テストより倍くらいは大きくなっています。念のために信管。爆弾を爆発させる仕掛けは魔法と火薬。両方を使っていますので、確実に作動すると思います。あ、着弾ですわ」
偵察機からの魔導通信映像が瞬間、真っ白になる。
そして閃光が終わった後に、映像は激しい揺れに襲われた。
「きゃ! アミちゃん、あれは……」
「個体名称『デイジーカッター』。肥料にも使う硝酸アンモニウムとアルミニウム粉末を水に溶いた含水爆薬主体の大型爆弾……。って言っても分からないですわよね。わたくしも、ルキウスくんから原理を聞いて作ってみただけなのです。大体、ゴーレムと同じくらいの重さの爆弾。威力は……見てのとおりですわ」
映像越しにだが、威力を目撃して驚くヨハナちゃんに軽く説明したわたし。
といっても、わたし自身は化学や爆弾にそう詳しくはない。
土木工事や鉱山でダイナマイトや含水爆薬やANFO爆薬。
硝酸アンモニウムと軽油を混ぜた爆薬を使うということ程度しか、知らない。
……石油関係がまだ未開発だからTNTとか、日露戦争で使われた下瀬火薬なんかは、今後の課題。戦争で使いたくはないんだけど。
凄まじい爆炎は、偵察機だけでなく十数キロ離れた榴弾砲陣地で偵察中に熱気球からも見える。
発生した莫大な熱量と爆炎は、通常とは違う煙雲を形成する
「まずは衝撃波による雲。空気中の水分を一気に集めるから、白くなるの。次は、キノコ雲。火山爆発などで見える事もありますが、おそらく、この世界で火薬を使ってこのような爆発を起こしたのは今回が初めてでしょう……」
白い球状の雲が発生し、衝撃波で周囲のモノを砕いたあと。
そこから赤黒い雲が立ち上がりキノコ状になったのが熱気球からの観測映像で見えた。
「……アミータどの。貴女は、こんな恐ろしいものを……」
「ええ、ダイロンさま。わたくしは、多くの命を奪う覚悟をし、大型爆弾を使用しました。これが未来の、これからの戦争の形。もう、個人で剣を振ったり、弓を撃ち合うものではなく、遠くからボタンを押すだけ。ただただ無慈悲に命を奪うためのものになるんです……」
わたしは想像以上の威力に震えながら、涙を大きくこぼした。




