第23話(累計 第197話) ダムガール、銀の騎士を駆りて、戦場の空を舞う!!
「きゃぁぁぁ!」
「リナちゃん。耳元で大声は、やめてぇぇ」
「お二人とも、お静かに。ただいま、自由落下中でございます。このまま回転したままでは危険。お早く姿勢制御して、射撃体勢に入ってくださいませ」
今、わたしが駆る愛機有人操縦型金属ゴーレム「タロス号改 四式」は、戦場の空を舞っている。
いや、正確には王国の公爵領から飛んできた大型輸送機から空中投下され、回転しながら自由落下中だ。
「はぃぃ! ヨハナちゃん、フォローお願い。リナちゃん、叫んでいたら舌を噛みますわよぉ」
わたしはサブシートのヨハナちゃんやリナちゃんに呼びかけながら、機体の両肩アーマーに付属しているバインダーを操作。
風を受け止める様に大きく開き、エアーブレーキにして減速。
バインダー内や機体腰部の機動スラスターを吹かして、機体の回転を止めた。
「はぁはぁ。テストとはずいぶんと機動が違いますわぁ」
わたしは、眼を半分回しながらも上空の乱気流に振り回される機体をなんとか安定化させる。
そして両腕に装備されたガトリングガンの照準を、砦を襲っている低級魔神やワイバーン騎兵らに向けた。
「そこはしょうがないと思いますよ、アミちゃん姫さま。何せ気象状態が山向こうとは大きく違いますし、輸送機も対空魔法砲火を避けながらの投下。更には投下高度も、今回の方が高いです」
魔族国家南部の荒れ果てた平原。
南に四千メートル級の山脈を抱え、山に風がせき止められる関係で上空の気流は非常に乱れている。
……偵察機からの気象データはあったけど、実際に空を飛ぶのは想定と大きく違うのぉ。
更には数少ないとはいえ、地上から魔法弾や火球が向かってくるので、それを避けながらの滑空。
訓練のような単純空挺降下とは違う訳だ。
「行きますわ。射撃開始!」
ブーンと連続した射撃音と振動が、鉄巨人の身体を揺らす。
射線制御のために半数の銃弾が曳光弾。
そのため、銃口からは光のシャワーが噴き出ているかのように見える。
だが、その光は鉄の雨、死のシャワー。
着弾したワイバーンは羽や胴体に大きな穴を開け、簡単に墜落していく。
赤銅色の巨人である低級魔神すらも、全てを魔力シールドで弾き切れず、紫色の血煙を出して地面へと落ちてゆく。
「あれは、イグナティオさまの機体ですわ。あ、ダイロンおじ様が危ない!?」
リナちゃんの視線の先をコクピットの強化ガラス越しに見ると、砦の城壁。
胸壁から身を乗り出し、空を舞う低級魔神へと魔法攻撃をしていたダイロンさまが居た。
そして、まもなく迫りくる魔神のカギ爪によって殺されようとしていた。
「ティオさま! すっごいですわー」
だが、魔神の爪がダイロンさまを襲う事は無かった。
わたしと同じく輸送機からの降下中なティオさまの駆るロムルス号。
全力で機動スラスターを稼働。
横殴り気味にロケットランサーを魔神に突き刺した。
弾丸のように魔神を地面深くまで縫い付けた銀色の一撃。
魔法銀のランス突撃により、魔神は紫色の血煙と肉片になって消滅した。
「あれ、ティオさまにドゥーナちゃん。大丈夫かなぁ?」
「一応、ランスを機体の着地直前に放して、減速をしていましたね。着地時にも機体各部から水を吹き出して反動軽減をしていましたし、ちゃんと戦闘行動を開始しています。ドゥーナさまは少々心配でございますが、イグナティオさまは、お元気でしょう」
白銀色の騎士型ゴーレム「ロムルス号」。
確かに着地後、すぐさまにランスを拾い上げてチャージ攻撃に移っている。
その様子を見るに、機体状態にも異常は無く戦闘続行なのだろう。
……高速機動が多いから、ティオさまの機体脚部に着地時衝撃軽減用に水噴射機能を付けておいたの。オイルダンパーと筋肉筒だけじゃ、あんな急速度の着地なんて出来ないもん。まあ、操縦席の中は凄い加速度で大変なんだろうけど。
わたしは、ドゥーナちゃんの悲鳴を想像しながらも、上空から敵への銃撃を続ける。
「地上への爆撃も開始されましたね、アミちゃん。では、アタシたちは砦周辺を中心に取り逃した敵を掃討しましょうね」
「了解です、ヨハナちゃん。もう少し滑空しつつ、射撃を続けますわ」
バインダーを飛行翼、スラスターを推進器にして、わたしは滑空をしばし続ける。
戦場を見回しつつ、砦に近づく敵に容赦なくガトリング砲を撃ち込む。
残っていたワイバーン騎兵も輸送機を護衛して飛んできたプロペラ単式戦闘機によって全部撃ち落とされている。
低級魔神も、わたしの銃撃や双発式攻撃機からのロケット弾を喰らって殲滅。
四発エンジンの大型輸送機を改修した爆撃機からは爆弾が雨の様に振り、乾いた大地を覆うゴブリン兵らをオモチャみたいに吹き飛ばす。
「ダイロン伯父さま! 遅くなりましたが、お助けにまいりましたぁ!」
リナちゃんが拡声魔術具を使い、砦の胸壁から空を見上げているダイロンさまに呼びかける。
「なんとか間に合った様ですわね。本当にギリギリでしたの。まさか、魔神まで投入されていたなんて」
「アタシも魔神相手は二回目なので、随分と慣れました。アイツら、手ごわいですが、アミちゃんの方が更に強いんですもの」
徐々に地上が近づいていく。
ガトリング砲の残弾も少ないので、地上戦に移るべく着地体勢を取った。
「まもなく着地します。着地しだい、残敵が集まる部分へロケット弾を斉射。バズーカーも使って敵を全滅させますわ」
「了解です、姫さま。リナちゃん姫さまも着地準備を!」
「お姉さま。わたくし、伯父さまを助けられて良かったですわ」
わたしはリナちゃんの嬉しそうな声を聞きながら、どすんと着地した。
「ヨハナちゃん、残敵の集まる位置は?」
「三時の方向、約1200。各自逃亡中、直接照準範囲です」
展開したバインダーから雨の様にロケット弾を撃ち込む。
逃げ惑うオークや丘巨人たちが、一瞬で血煙に変わっていく。
「ふぅ、後は戦車や歩兵に任せましょうか。ヨハナちゃん、ティオさまに通信を」
「了解です」
既に勝負あり。
強行着陸した大型輸送機から多脚式戦車が降り、空からも落下傘による降下強襲兵が降りてきている。
残る残敵も、もう僅か。
「お姉さま、完全勝利ですわね」
「ええ、そうね」
血と鉄の破片が散乱する戦場を見、わたしは悲しみを覚えた。
「でも、戦いって嫌だわ」




