第12話(累計 第186話) ダムガール、盗み聞きを謝罪する。
「いつのまに、こちらへ来ておったのか、アミータどのは? まったく、この神出鬼没な『斜め上』暴走娘には困ったものだよ。わははは!」
「ごめんなさい、グリシュ陛下。リナちゃんから、おじ様。ダークエルフの族長さまが魔王陛下の使者としてお越しになるって聞いて……」
「お父ちゃん! アミータお姉さまを責めちゃダメなの。わたしが一緒に話を聞いて欲しいって無理に頼んだんだから、悪いのはわたしなの!」
「実はわたくしも関係してますの、貴方。出来れば兄とは戦いたくはない。どうすれば戦う事を避けられるのかを、アミータさまに相談していたのです。なのでお責めにならないでくださいませ」
リナちゃんにお願いされ、メレスギルさまとともに、魔王の使者とグリシュさまの会談を隠し聞きをしていたわたし。
そんなスパイみたいな事をわたし自身がする必要はないかとも思ったが、リナちゃんに泣きつかれた上に、身重なメレスギルさまから頼まれては仕方がない。
……わたし自身も、直接顔を見たかったというのはあるの。魔王が信用して送ってくるほどに忠誠を示している武人。そしてメレスギルさまの兄、リナちゃんたちの伯父さんと聞けば興味ありありだわ。
「だから、アタシは一度は止めたんですよ。リナちゃん姫さまがアミちゃん姫さまの影響を受けすぎて、ダブル暴走娘になったのは困った事です。ですが、こうなった以上は戦いを避ける様に努力致しましょう」
口では文句を言いつつも、わたしをニンマリ顔で見守ってくれるヨハナちゃん。
苦笑状態のディネさんと共々、わたしたちに茶を給仕してくれる。
「ディネ、久方ぶりではあるが、一体これはどういう事なのだ? グリシュが苦笑いしながらも、あの只人の娘には文句ひとつで済ませておる。リナにしても、以前会った時と表情からして大きく違う。前はまるで美しい人形みたいであったのに、今や生き生きとグリシュと言い合っているぞ?」
「おじ上。全てはアミータさまのおかげですわ。かの乙女は家族間で争いあうのをひどく嫌うのです。自らの母や義母と悲しい別れをしたからなのか。他の家族関係。ケンカにも容赦なく口を突っ込んできますの」
ディネさんに給仕してもらっている超絶美形なダークエルフのおじ様。
メレスギルさまそっくりな優美なお顔と、少し濃いめなココア色な肌。
銀色の眼と美しい銀砂の長髪。
彼が、現在のダークエルフ族の族長にして魔王の使者ダイロンさま。
メレスギルさまの実兄、つまりはリナちゃんたちの伯父ともあれば、わたしも無暗に攻撃したいとは思わない。
出来れば、彼とも平和裏に会談を終え、時間稼ぎをしたいのだ。
……航空兵器の実用化には、もう少し時間が欲しいのよね。今でも砲撃戦をしたら魔王さま相手でも負けないけど、空を制圧。俗にいう航空優位を取れれば、いくら地上部隊がいても簡単に殲滅できちゃうんだから。ミサイルまで開発出来れば、ドラゴンだってイチコロね。あ、ファフさんは別格よ?
「えー。ディネリンドさん、いつになく手厳しいお言葉ではないですか? わたくし、無理やりにお節介で親子ケンカに口出しなど……。あ!? 既にやってしまっていましたわぁ」
「アミちゃん姫さまは、本当に何をしでかすか分かりませんです。仕えるものとしては毎度困りますが、今回。一応は各方面への相談した上でな行動ではございますですし、結果オーライ。お人好しな行動が事態を良き方向へ動かすのも、いつもの事ですから」
「ごめんね、ヨハナちゃん。ダイロンさま、誠に失礼を致しまして、申し訳ありませんでした」
ディネリンドさんからの微笑みながらの指摘やヨハナちゃんの苦笑気味なツッコミを受け、わたしは反省をし、頭を下げた。
好意からの行動とは言え、お節介の押し付けは迷惑でしかない。
今回はリナちゃんたちの希望で共に行動をしたとはいえ、よその家庭環境にまで口出しするのは、治外法権著しい。
……魔族国家内の問題にも口出ししちゃってるしなぁ。ゴブリン族だけじゃなく、ダークエルフ族の命運もかかってるわけだし。
「ふははは! 魔王陛下が酷く恐れる『泥かぶり』、『黒衣の魔女』が、かのような可愛らしき乙女であったとは、実に面白い。アミータどの。ディネやリナが酷く世話になっていると聞く。伯父として感謝をするぞ」
「いえいえ。お気になさらずですわ。毎回、側仕えやティオさま。公爵閣下らにお叱りを受け、軽率な行動をせぬようにと良い聞かされているのですが、つい衝動に負けて行動してしまいます。これまでは、幸いにも配下や運に恵まれただけですし」
優美なお顔を笑いで崩すダイロンさま。
わたしも外向きではない本当の笑顔で、自らの至らなさを告げる。
毎度思うのだが、上手い事フラグを回避し、わたしに都合よく物事が動いてくれている。
神の采配なのか、日頃の行いが良いからなのか?
……日頃の行い、そりゃ人助けはいっぱいしているけど、それ以上に身内や配下には無理言って迷惑や心配かけてるからなぁ。
「なに、運も実力のうち。何処にゴブリンの幼子を只人らの悪意から守る貴族令嬢がいるのやら。更に『異界』の英知を多く持つという。魔王陛下が最大限の警戒をするだけのことはある」
「お褒めになられても、正直お返しする……。え!? 今、『異界』と申されましたよね? どうして、そう思われたのでしょうか?」
わたしは、ダイロンさまのお言葉に驚く。
まさかリナちゃんやグリシュさまが、軽率にわたしの『秘密』を話すはずもない。
そうであれば、何処かからか情報漏れがあってもおかしくない。
……領内に魔王様の『草』がいるのかしら? なら、早く対応しないと……。
「ああ、その事なら魔王陛下直々にお話してくれたよ。魔王陛下に力を貸している謎の者たちがいて、彼らは魔法技術と交換で異界の技術や武器、情報を提供してくれている。アミータどのの事も、彼らが『異界の魔女』と呼んでいたよ」
「なんですってぇぇ!??」




